国連食糧農業機関(FAO)が発表した2024年最新データによると、エリトリアのジャガイモ生産量は、1990年代に41,000トン程度だったものの、2000年代以降急激に減少し、2022年には59トンという極めて低い水準にとどまっています。この生産量の減少は、一時的な気候変動や地政学的リスクに加えて、農業インフラ不足や技術的な課題も影響を与えていると考えられます。
エリトリアのジャガイモ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 59 |
2021年 | 59 |
2020年 | 62 |
2019年 | 55 |
2018年 | 59 |
2017年 | 70 |
2016年 | 37 |
2015年 | 69 |
2014年 | 105 |
2013年 | 139 |
2012年 | 139 |
2011年 | 139 |
2010年 | 40 |
2009年 | 102 |
2008年 | 232 |
2007年 | 1,022 |
2006年 | 11,978 |
2005年 | 17,488 |
2004年 | 16,000 |
2003年 | 10,850 |
2002年 | 15,280 |
2001年 | 17,415 |
2000年 | 28,156 |
1999年 | 40,000 |
1998年 | 45,000 |
1997年 | 42,000 |
1996年 | 39,000 |
1995年 | 40,000 |
1994年 | 40,973 |
1993年 | 41,000 |
エリトリアのジャガイモ生産量推移を振り返ると、1993年から1998年にかけて年平均約41,000トンで比較的安定していました。しかし、1999年以降、生産量の急減が顕著となり、2000年には28,156トン、2007年にはわずか1,022トン、2010年には40トンと大幅な低下が見られます。この劇的な減少には、主に以下の要因が関係していると考えられます。
まず、エリトリアの気候変動が直接的な影響を与えています。エリトリアは乾燥地帯が多く、降水量が少ない地域です。そのような中で、1990年代後半以降の干ばつが作物の育成に深刻な影響を及ぼしました。ジャガイモは比較的適応力の高い作物ですが、育成には適切な水分と気候条件が要求されるため、この影響を免れることはできませんでした。
さらに、エリトリアの地政学的背景も生産減少の重要な要因です。同国は1998年から2000年にかけてエチオピアとの国境紛争を経験し、その間農業インフラの破壊や資源不足が進行しました。この紛争の影響は戦後も長期的に農業部門に影響を与え、農作業に投入可能な資金や技術が限られる結果となりました。また、この地域では農業に従事する労働力が徐々に減少し、伝統的な農法に依存した生産が低効率な状態にとどまっています。
ここで強調すべき点は、ジャガイモ生産量が2007年以降ほぼ壊滅的な水準に落ち込んだことです。例えば、2009年から2022年までの間、生産量はほとんど100トンを超えた年がなく、2013年以降は平均60トン前後で推移しています。この水準は国内の食料安全保障を担うには極めて不足しており、エリトリアを含むアフリカ地域では他国との貿易への依存度も高まっています。
エリトリアの現在のジャガイモ生産は、食料供給や経済的利益を考慮して再構築されるべき分野です。具体的な対策としては、まず灌漑設備の近代化が急務となっています。井戸や貯水池を設置し、農業用水を確保することで、安定した生産条件を整える必要があります。また、国際社会と協力し、エリトリアに適した種苗の供給や技術支援を推進することが重要です。隣国エチオピアをはじめとしたアフリカ地域の成功事例を参考に、農業従事者を対象とした教育やトレーニングプログラムを導入することも生産性向上に寄与するでしょう。
また、地政学的リスクを軽減するため、地域間協力の強化や安定したエネルギー供給ラインの確保が必要です。特に、国際的な農業開発プログラムへの参加を促進し、設備投資や融資の拡充を図ることが求められます。新技術を導入する際には高コストが伴いますが、国際機関の支援を受けることで、長期的な収益改善が期待されます。
結論として、エリトリアのジャガイモ生産量の低下は気候変動や地政学的要因が絡み合った複雑な課題であり、短期間での改善は容易ではありません。しかし、適切な政策や国際的な支援により、エリトリアの農業部門が再興する可能性は十分にあります。中長期的なビジョンを持ち、地域特有の課題に対応した具体的な施策を実施することが、この国の食料安定化と農業経済向上への鍵となるでしょう。