Skip to main content

アルジェリアのブドウ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年最新にまとめたデータによると、アルジェリアのブドウ生産量は1960年代初頭から2023年にかけて顕著な変動が見られます。1961年には1,845,000トンと高水準の生産量でしたが、それ以降、1970年代後半から2000年初頭にかけて顕著に低迷しました。その後徐々に回復し、特に2021年以降、約630,000トン前後の安定した生産量を維持しています。このデータは地政学的、気候的、そして経済的な諸要因がブドウの生産に大きな影響を及ぼしていることを示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 619,740
-1.21% ↓
2022年 627,325
-0.43% ↓
2021年 630,022
13.68% ↑
2020年 554,201
0.79% ↑
2019年 549,833
9.32% ↑
2018年 502,978
-11.23% ↓
2017年 566,579
-0.84% ↓
2016年 571,351
0.58% ↑
2015年 568,069
9.66% ↑
2014年 518,035
-9.25% ↓
2013年 570,840
5.09% ↑
2012年 543,169
34.92% ↑
2011年 402,592
-28.18% ↓
2010年 560,562
13.81% ↑
2009年 492,525
22.52% ↑
2008年 401,992
64.08% ↑
2007年 244,999
-38.45% ↓
2006年 398,018
19.16% ↑
2005年 334,021
17.65% ↑
2004年 283,900
2.13% ↑
2003年 277,968
18.59% ↑
2002年 234,397
19.49% ↑
2001年 196,159
-3.66% ↓
2000年 203,617
14.45% ↑
1999年 177,905
21.3% ↑
1998年 146,670
-23.68% ↓
1997年 192,190
-1.64% ↓
1996年 195,400
-0.48% ↓
1995年 196,351
38.97% ↑
1994年 141,294
-33.56% ↓
1993年 212,652
-7.17% ↓
1992年 229,073
-8.87% ↓
1991年 251,370
-4.35% ↓
1990年 262,794
-2.82% ↓
1989年 270,426
-10.16% ↓
1988年 301,000
6.74% ↑
1987年 282,000
-39.35% ↓
1986年 465,000
-0.85% ↓
1985年 469,000
13.01% ↑
1984年 415,000
31.75% ↑
1983年 315,000
23.53% ↑
1982年 255,000
-36.25% ↓
1981年 400,000
-1.72% ↓
1980年 407,000
5.44% ↑
1979年 386,000
46.77% ↑
1978年 263,000
-28.92% ↓
1977年 370,000
-28.57% ↓
1976年 518,000
-11.75% ↓
1975年 587,000
-29.87% ↓
1974年 837,000
5.42% ↑
1973年 794,000
4.34% ↑
1972年 761,000
-41.24% ↓
1971年 1,295,000
1.57% ↑
1970年 1,275,000
3.07% ↑
1969年 1,237,000
-11.58% ↓
1968年 1,399,000
57.37% ↑
1967年 889,000
-4.54% ↓
1966年 931,300
-51.04% ↓
1965年 1,902,000
34.32% ↑
1964年 1,416,000
-16.51% ↓
1963年 1,696,000
1.68% ↑
1962年 1,668,000
-9.59% ↓
1961年 1,845,000 -

アルジェリアはその地中海性気候と農業の伝統により、ワイン用および食用ブドウの生産国として広い潜在力を持っています。しかし、この潜在力が必ずしも一貫して発揮されていないことが、この数十年にわたる生産量の推移データから明らかです。

1961年の1,845,000トンという生産量はアルジェリアのブドウ生産が全盛期を迎えていたことを示しています。しかし、その後急激な減少が見られ、特に1970年代後半から1980年代にかけては20万トン台という低生産期が続きました。この低迷の背景には、独立後の政治的不安定や政策の大きな方向転換、そして産業基盤の再編成が関係していると考えられます。ブドウの栽培に必要なインフラの整備や市場の統制が十分でなかったことが、生産の質と量に直接的な打撃を与えたのでしょう。

また、1980年代から1990年代にかけての生産量低下の一因として、地中海気候に特有の干ばつの頻発と、それに伴う灌漑インフラの不足が挙げられます。これに加え、アルジェリア内戦(1991年~2002年)が農村部のインフラ破壊、労働者不足、農業活動の停滞を招き、長期間にわたって産業全体、特に生育に条件を必要とするブドウ産業に悪影響を及ぼしました。

2000年代になると少しずつ回復基調に入りましたが、これは国家主導の灌漑施設の整備や農業生産における市場開放と投資の成果が反映されたものと考えられます。2009年以降、ブドウ生産量は安定的な増加傾向を示し、2021年には特筆すべき回復を果たし、その生産量は約630,000トンとなりました。その背景には、政府が輸出を含む農産物の市場拡大を重視した農業政策を積極的に推進してきたことが関係しています。また、耐乾燥性に優れた品種の導入や栽培技術の向上も、ブドウ生産の増加を可能にしました。

なお、パンデミックや気候危機が世界の農業に重大な影響を与える中、アルジェリアが比較的安定した水準を維持できた点は注目に値します。他国との比較では、例えばフランスやイタリアといった伝統的なブドウ・ワイン生産国は極端な気候変動(高温や豪雨など)の影響を受ける一方で、アルジェリアは気候対策や品種改良の導入によりその影響をある程度抑制している可能性があります。

しかしながら、課題も多く残されています。まず、今後気候変動の影響がさらに深刻化すれば、ブドウの発芽や果実形成に必要な微妙な気象条件が損なわれる懸念があります。この点に関して、アルジェリアは精密農業技術を活用して効率的な給水や土壌管理を行う施策を進化させる必要があります。また、国際市場への輸出拡大のためには、品質管理システムの国際基準への適合が求められるでしょう。同時に、地元農家への教育プログラムの拡充や投資促進も重要です。

さらに、アルジェリアの地政学的背景を考慮すると、近隣諸国での資源や貿易路を巡る争いが農業生産に波及するリスクがあります。これを予防するためには、地域協力を強化し、災害や衝突にも対応可能な農業基盤を築くことが不可欠です。

結論として、アルジェリアのブドウ産業は近年安定化の兆しを見せていますが、将来を見据えた持続可能な発展のためには、気候変動対策や国際市場への適応、生産プロセスの効率化が重要となります。国際機関や他国との協力を模索しながら、地域全体の農業安定に貢献するビジョンを持つべきです。