国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、アルジェリアの馬飼養数は、1961年の137,000頭から2022年の49,430頭まで長期的な減少傾向が見られます。特に1980年代半ばから1990年代にかけての激減が顕著で、その後は比較的安定したものの、近年の増加は緩やかなものにとどまっています。背景には社会経済の変化、地域の紛争、農村地帯の衰退などがあると考えられます。
アルジェリアの馬飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 49,430 |
2021年 | 50,231 |
2020年 | 48,147 |
2019年 | 49,911 |
2018年 | 46,356 |
2017年 | 46,841 |
2016年 | 44,991 |
2015年 | 42,366 |
2014年 | 42,010 |
2013年 | 45,035 |
2012年 | 46,235 |
2011年 | 44,200 |
2010年 | 43,650 |
2009年 | 44,803 |
2008年 | 45,285 |
2007年 | 47,040 |
2006年 | 43,570 |
2005年 | 42,642 |
2004年 | 44,590 |
2003年 | 47,530 |
2002年 | 46,430 |
2001年 | 43,570 |
2000年 | 43,828 |
1999年 | 45,980 |
1998年 | 45,990 |
1997年 | 52,370 |
1996年 | 60,000 |
1995年 | 62,160 |
1994年 | 66,510 |
1993年 | 72,800 |
1992年 | 76,940 |
1991年 | 82,260 |
1990年 | 81,020 |
1989年 | 86,000 |
1988年 | 85,030 |
1987年 | 84,000 |
1986年 | 79,830 |
1985年 | 91,000 |
1984年 | 91,980 |
1983年 | 165,000 |
1982年 | 168,000 |
1981年 | 172,000 |
1980年 | 175,000 |
1979年 | 171,600 |
1978年 | 148,990 |
1977年 | 145,240 |
1976年 | 139,130 |
1975年 | 154,140 |
1974年 | 152,410 |
1973年 | 144,410 |
1972年 | 141,670 |
1971年 | 142,950 |
1970年 | 143,400 |
1969年 | 139,080 |
1968年 | 128,660 |
1967年 | 132,100 |
1966年 | 115,000 |
1965年 | 114,000 |
1964年 | 117,000 |
1963年 | 100,000 |
1962年 | 136,000 |
1961年 | 137,000 |
アルジェリアの馬飼養数の推移を振り返ると、大きな変化の経過が明らかになります。1961年から1970年まではおおむね安定していましたが、1970年代後半には顕著な増加が見られました。この時期は、農村部での畜産活動が活発であったことや、馬が農業や運搬の重要な役割を果たしていたことが背景にあると考えられます。しかし1984年以降、飼養数は急激に減少し、1990年代中頃には60,000頭以下にまで低下しました。この急激な減少は、社会的および地政学的側面と関連していると考えられます。
1980年代から1990年代にかけての減少の背後には、アルジェリアの内部的な混乱が影響している可能性があります。この時期はアルジェリア内戦が勃発し、治安の悪化や経済基盤の崩壊により、多くの馬の飼養が困難になったと推測されます。また、都市化の進展や機械化の普及によって、伝統的な馬の役割が減少したことも要因と考えられます。さらに、農村地帯の人口減少や農業の衰退も馬飼養に逆風となりました。
2000年代以降、飼養数は一時的に微増したものの、40,000~50,000頭の範囲で推移しています。ここ数年では、2021年に50,231頭という比較的高い数値を記録しましたが、その後、2022年には若干減少して49,430頭となっています。この増減は、アルジェリア政府や国際組織の支援政策、馬を活用した観光事業の増加、または農村復興プログラムの影響によるものと考えられます。ただし、増加のペースが緩やかなことから、これらの施策が十分にスケール化されていない可能性も示唆されます。
未来を見据えると、アルジェリアは伝統文化の保護という観点から馬の飼養を持続的に支える仕組みを構築することが重要です。たとえば、持続可能な畜産政策の導入、馬を活用した農村観光やレクリエーションの促進、高品質な馬用飼料の確保、そして地域間協力による技術提供などが挙げられます。また、気候変動が今後の牧草地や水資源に与える影響を考慮し、より適応的な畜産技術を採用すべきです。さらに、内戦のような地政学的リスクが馬飼養に与えた甚大な影響を踏まえ、今後の政策では安定した治安維持が不可欠です。
結論として、アルジェリアの馬飼養数は歴史的背景と地政学的な要因が複雑に影響しあいながら、減少を続けてきました。特に1980年代以降の急激な減少は、農村社会の変化や治安の不安定さによるものです。今後は国の政策と国際協調が鍵となり、馬飼養活動を持続可能で価値あるものへと転換する取り組みが求められます。馬と共生する文化を守りながら、経済的にも環境的にも効率の良い体制を整えることで、アルジェリアの馬飼養が次世代へと引き継がれることが期待されます。