Skip to main content

アルジェリアの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、アルジェリアの天然蜂蜜生産量は、1970年代から安定的な低水準で始まり、1990年代以降、大きな変動を伴いつつも全体的に増加しました。特に2000年代後半から2010年代にかけて顕著な伸びを見せ、2016年には過去最高の7,132トンに達しました。しかし近年、2020年以降には再び生産量が減少傾向にあり、2022年には5,617トンを記録しました。この変動には気候変動や農業政策、地域情勢など多様な要因が絡んでいると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,010
7% ↑
2022年 5,617
8.76% ↑
2021年 5,165
-3.94% ↓
2020年 5,377
-16.15% ↓
2019年 6,413
-12.82% ↓
2018年 7,356
20.14% ↑
2017年 6,123
-14.15% ↓
2016年 7,132
10.97% ↑
2015年 6,427
12.48% ↑
2014年 5,714
-7.04% ↓
2013年 6,147
15.55% ↑
2012年 5,320
11.95% ↑
2011年 4,752
-2.62% ↓
2010年 4,880
21.94% ↑
2009年 4,002
20.83% ↑
2008年 3,312
11.93% ↑
2007年 2,959
18.36% ↑
2006年 2,500
-16.42% ↓
2005年 2,991
6.82% ↑
2004年 2,800
33.33% ↑
2003年 2,100
7.69% ↑
2002年 1,950
18.97% ↑
2001年 1,639
55.5% ↑
2000年 1,054
-10.9% ↓
1999年 1,183
-21.13% ↓
1998年 1,500
36.36% ↑
1997年 1,100
-56% ↓
1996年 2,500
38.89% ↑
1995年 1,800
-35.71% ↓
1994年 2,800
55.56% ↑
1993年 1,800
59.01% ↑
1992年 1,132
-43.4% ↓
1991年 2,000
300% ↑
1990年 500
-58.33% ↓
1989年 1,200
87.5% ↑
1988年 640
-68.29% ↓
1987年 2,018
80.18% ↑
1986年 1,120
-13.85% ↓
1985年 1,300
5.69% ↑
1984年 1,230
0.82% ↑
1983年 1,220
1.67% ↑
1982年 1,200 -
1981年 1,200 -
1980年 1,200 -
1979年 1,200 -
1978年 1,200 -
1977年 1,200
-1.64% ↓
1976年 1,220
1.67% ↑
1975年 1,200 -
1974年 1,200 -
1973年 1,200 -
1972年 1,200
7.14% ↑
1971年 1,120 -

アルジェリアの天然蜂蜜生産量のデータを振り返ると、1970年代から1980年代にかけては1,200トン前後の安定した生産が続いていました。しかし1990年代に入り、この一貫性は失われ、大幅な変動が見られるようになります。一例として、1991年の2,000トンから1995年の1,800トン、1996年には2,500トンなど急激な上下が見られます。この時期、内戦の影響による社会不安が国内の農業活動に大きく影響していた可能性が考えられます。この不安定な背景が生産効率や輸送網、さらには養蜂業への投資に影響を及ぼしたと推測されます。

2000年代後半に入ると、アルジェリアの蜂蜜生産量は大きく躍進します。2008年に3,312トンを記録し、その後2016年には7,132トンと、わずか8年で倍以上の規模に成長しました。この劇的な増加は、農業政策の強化や新たな技術の導入、および地域ごとの蜂蜜市場の需要拡大が背景にあると考えられます。国家主導での養蜂セクター支援策が功を奏し、養蜂技術や施設の改善が生産効率を向上させたとみられます。

とはいえ、2019年以降のデータを見ると、生産量は減少傾向を示しています。2020年には5,377トンまで落ち込み、2022年時点では5,617トンにとどまっています。この減少は、新型コロナウイルス感染症の世界的影響のほか、気候変動や環境破壊によるミツバチの生息環境の悪化、そして生産コストの上昇などが絡み合う複雑な要因によるものとされています。アルジェリアの厳しい気候条件に加えて、異常気象や乾燥化がミツバチの行動パターンを変化させ、植物の開花期との不一致を生むという新たな課題も存在しています。

また、この生産量の動きには地域の地政学的背景も影響を及ぼしている可能性があります。特に、アルジェリアはアフリカ北部の地中海沿いに位置し、この地域の政治的緊張や資源競争が養蜂業にも間接的な影響を与えていると考えられます。例えば、地域の安定性が輸送網や物流インフラに影響し、国内市場や輸出市場への蜂蜜の流通に制約を生じさせることがあります。

未来を見据えると、アルジェリアの蜂蜜生産量を再び増加軌道に乗せるためにはいくつかの具体策が必要です。第一に、気候変動への適応を目指した持続可能な農業技術の導入が不可欠です。特に、乾燥地向けの養蜂技術や耐気候性の高い植物の育成は重要な対策です。第二に、国内外市場に向けた蜂蜜産業のブランディングと、輸出戦略のさらなる強化も必要です。アルジェリア産蜂蜜の品質を国際市場で認めてもらうことで、養蜂家の収入向上を図れます。さらに、養蜂業への政策支援の拡充や環境保護策との連携も求められます。特に、森林保護と植樹活動によりミツバチの生息環境を整備することが、長期的な安定に寄与すると考えられます。

結論として、アルジェリアの蜂蜜生産動向は、ただの農業指標にとどまらず、地域の社会的・経済的・エコロジカルな課題を反映する重要なデータです。このデータを踏まえ、国内と国際の双方で協調した取り組みを展開することが、アルジェリアの養蜂業の持続可能な発展に繋がると言えるでしょう。