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レソトの大麦生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表したデータによると、レソトの大麦生産量は1961年の3,271トンをピークに、2023年には299トンに減少しています。特に1960年代から1970年代前半にかけて急激な減少が見られ、その後は長期間にわたり低水準での停滞を続けています。近年では、2013年以降約300トン前後でほぼ横ばい状態に推移しており、顕著な増加傾向は確認されていません。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 299
-2.03% ↓
2022年 305
0.01% ↑
2021年 305 -
2020年 305
-0.04% ↓
2019年 305
0.07% ↑
2018年 305
-0.04% ↓
2017年 305
-0.13% ↓
2016年 305
0.39% ↑
2015年 304
-4.45% ↓
2014年 318
13.72% ↑
2013年 280
-30.6% ↓
2012年 403
-14.89% ↓
2011年 474
-29.35% ↓
2010年 671
-6.81% ↓
2009年 720
75.61% ↑
2008年 410
-8.89% ↓
2007年 450
36.36% ↑
2006年 330
-8.21% ↓
2005年 360
11.04% ↑
2004年 324
-5.78% ↓
2003年 344
2.06% ↑
2002年 337
5.84% ↑
2001年 318
43.4% ↑
2000年 222
10.92% ↑
1999年 200
-33.33% ↓
1998年 300
-25.74% ↓
1997年 404
-19.2% ↓
1996年 500
25% ↑
1995年 400
-2.88% ↓
1994年 412
-15.63% ↓
1993年 488
-3.24% ↓
1992年 505
0.9% ↑
1991年 500
400% ↑
1990年 100
-66.67% ↓
1989年 300
-40% ↓
1988年 500 -
1987年 500 -
1986年 500 -
1985年 500
25% ↑
1984年 400 -
1983年 400 -
1982年 400 -
1981年 400 -
1980年 400 -
1979年 400 -
1978年 400 -
1977年 400
14.29% ↑
1976年 350 -
1975年 350 -
1974年 350 -
1973年 350 -
1972年 350
-0.28% ↓
1971年 351
-38.74% ↓
1970年 573
-30.71% ↓
1969年 827
-17.3% ↓
1968年 1,000
-23.08% ↓
1967年 1,300
-18.75% ↓
1966年 1,600
-11.11% ↓
1965年 1,800
-10% ↓
1964年 2,000
-16.67% ↓
1963年 2,400
-14.29% ↓
1962年 2,800
-14.4% ↓
1961年 3,271 -

レソトの大麦生産量推移を見ると、長期的な減少傾向が明らかです。1961年には3,271トンと記録されていましたが、それ以降、急激な減少が続き、1969年には827トン、1971年には350トンと、10年間で約10分の1へと縮小しました。この急激な減少の背景には、人口増加に伴う土地利用の変化や、降水量の変動、土地の劣化の進行が影響している可能性があります。さらに1970年代に入ると、一部の年でわずかな回復が見られたものの、生産量は低迷し続けます。

1980年代後半には一時的な増加が見られたものの、依然として低い水準に留まります。1990年代以降は、年間500トンを下回ることが多くなり、気候変動や農業技術の停滞、政治的・経済的要因が生産性に悪影響を及ぼしていることが懸念されます。また、レソト国内の多くの農地が乾燥化し始めたことや、農民がより収益性の高い作物に転換している可能性も推測されます。この点は、地域的な食料確保の安定性への課題を示しています。

近年、2013年以降の推移を見ると、年間約300トン前後と安定的な横ばい状態が続いています。ただし、この安定は持続可能な成長を意味するわけではなく、長期的には課題を含んでいると見るべきです。2023年の生産量は299トンと、前年度からわずかに減少しており、この変化は気候による一時的なものか、あるいは新たな下落傾向の始まりである可能性も示唆しています。

地域ごとの問題を深掘りすると、レソトは南部アフリカの山岳地帯という特異な地形に位置し、農業は主に降水量に依存しています。しかし、地球温暖化による雨量の減少や気候の不確実性が、特に小規模農業の現場において、生産量の増加を阻んでいると考えられます。また、大麦は高温や乾燥に強いという特徴を持つ穀物ですが、そのポテンシャルを活用するには、灌漑設備の整備や品種改良が欠かせません。

現在の状況を改善し、より持続可能な農業モデルを構築するためには、いくつかの具体的な対策が考えられます。一つは灌漑技術の導入や農業インフラの整備で、技術支援を受けながら農地の効率的な利用を図ることです。また、品種改良により、降水量の変動に強い大麦の開発も推進すべきと考えられます。さらに、国際的な支援枠組みの中で、他国の成功事例を参考にしたスマート農業の導入や、地域協力を通じた知識共有が有効です。隣国の南アフリカやジンバブエでは一部の農地で灌漑設備が成功を収めており、レソトもこの取り組みを採用することが期待されます。

一方で、地政学的なリスクも無視できません。レソトは囲まれた内陸国であり、これにより輸送コストが高く、外部支援を受けづらいという地理的な制約があります。このため、自給自足型農業の効率化が一層求められます。また、近隣地域の政治的な不安定さや気候関連の災害が、緊急時の食料供給に影響を及ぼす可能性も懸念されます。特にここ数年、新型コロナの影響で資源や労働力の確保が難しくなる状況があり、レソトの大麦生産も影響を受けたと考えられます。

結論として、レソトの大麦生産は長期的に減少傾向にあり、持続可能性の観点から重要な課題を抱えています。今後は、農業技術の向上や制度改革、地域間協力の強化などが不可欠です。また、レソト政府だけでなく国際機関が積極的な支援を行い、食料安全保障の向上を目指す必要があります。これにより、生産量の安定に繋がり、地域経済や食糧供給全体にポジティブな影響を与えることが期待されます。