Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が2024年7月に更新したデータによると、レソトの牛乳生産量は1960年代から2022年まで様々な変動を見せています。1960年代後半から1980年代までは安定した増加傾向にあったものの、1991年以降、劇的な拡大を記録しています。その後、2000年代にかけて大きな急増が見られましたが、2010年代後半から2020年代初頭にかけて伸びは鈍化し、微細な上下動を続けています。特に1991年を境に数値が大きく跳ね上がっている点がこのデータの特徴であり、これに続く大幅な増減や減速から、ここには重要な経済的・地政学的背景があることが示唆されます。
レソトの牛乳生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 175,926 |
2021年 | 174,444 |
2020年 | 173,333 |
2019年 | 180,000 |
2018年 | 170,000 |
2017年 | 170,000 |
2016年 | 175,000 |
2015年 | 180,000 |
2014年 | 190,204 |
2013年 | 189,475 |
2012年 | 189,449 |
2011年 | 188,720 |
2010年 | 163,631 |
2009年 | 161,471 |
2008年 | 181,622 |
2007年 | 174,580 |
2006年 | 135,291 |
2005年 | 181,547 |
2004年 | 160,482 |
2003年 | 161,862 |
2002年 | 167,448 |
2001年 | 188,459 |
2000年 | 174,411 |
1999年 | 160,371 |
1998年 | 125,343 |
1997年 | 133,722 |
1996年 | 119,713 |
1995年 | 129,488 |
1994年 | 128,071 |
1993年 | 122,460 |
1992年 | 125,239 |
1991年 | 115,438 |
1990年 | 23,780 |
1989年 | 23,490 |
1988年 | 23,200 |
1987年 | 22,910 |
1986年 | 22,620 |
1985年 | 22,330 |
1984年 | 22,040 |
1983年 | 21,460 |
1982年 | 20,880 |
1981年 | 20,300 |
1980年 | 19,720 |
1979年 | 19,140 |
1978年 | 18,560 |
1977年 | 17,980 |
1976年 | 17,400 |
1975年 | 16,820 |
1974年 | 15,950 |
1973年 | 15,370 |
1972年 | 14,500 |
1971年 | 13,920 |
1970年 | 13,050 |
1969年 | 12,180 |
1968年 | 11,310 |
1967年 | 10,730 |
1966年 | 10,440 |
1965年 | 10,150 |
1964年 | 8,932 |
1963年 | 9,748 |
1962年 | 11,204 |
1961年 | 10,925 |
レソトの牛乳生産量推移データは、同国の農業生産の一端を強調し、その発展の跡を描いています。1961年に10,925トンだった牛乳の生産量は、1970年代前半には15,000トンを超え、1980年代には年平均400トン程度の増加を遂げながら20,000トン台後半にまで到達しています。これはこの時期、レソトの地域的安定や酪農業への適度な投資が成長を支えたと考えられます。
一方で、この中で最も注目に値するのは、1991年を境に生産量が突如として数倍に跳ね上がった点です。1990年の23,780トンから1991年には115,438トンと5倍近い上昇を示しており、さらに1999年には160,371トン、2000年には174,411トンと増加傾向を辿りました。この急増の背景には、外資による酪農支援、公的なインフラ整備、または統計方法の大幅な変更が影響している可能性が強く示唆されます。ただし、2000年代後半以降のデータを見ると、これ以上の大規模な成長は見られず、むしろ大きく増減を繰り返している傾向が読めます。
また、2010年代以降は生産量の成長が停滞し、むしろ縮小感が見られます。2015年には18万トンに到達したものの、ここから減少が顕著となり、2017年と2018年には17万トンにとどまりました。2020年以降、再びやや持ち直す動きもあるものの、データ全体を俯瞰すれば、レソトの酪農業の停滞および生産効率の低下が議論されるべき時期に来ているといえます。
レソトは地理的に南部アフリカの高地に位置しており、農業に不利な自然条件を抱えています。降水量の変動や気候変化の影響を強く受けやすい環境であり、また主食作物栽培との競合も優れた酪農発展を阻む要因となっています。1990年代初頭の急激な生産向上を一つの例とすると、その背景には地政学的な変化も影響していた可能性があります。周辺国での政策変更や市場開放、そして移民労働者による影響などが間接的にレソトの酪農生産の急増につながったのかもしれません。
次に考慮すべきは牛乳生産の未来像です。データは、ここ10年間、伸び悩む傾向を示しており、その原因は生産設備の老朽化、農場の集中化不足、気候変動への適応の遅れ、または資本および技術不足に起因している可能性があります。他国との比較では、例えば中国やアメリカのような大規模産出国は、農業技術の高度化と食料安全保障政策に大規模な投資を行うことで、牛乳生産の増加を維持しています。韓国や日本も異なる規模ながら効率的な技術利用と品質に焦点を当てた政策が特徴であり、これらの例を参考に、レソトが目指すべき方向性が見えてきます。
具体的には、現地の酪農業者に技術支援を行い、効率的かつ気候変動に強い生産手法を導入することが必要です。また、公的支援や国際機関からの協力を活用し、インフラや流通ネットワークを近代化することも重要です。このような取り組みは、レソトが持続可能な農業経済を構築するうえで助けとなるでしょう。
結論として、レソトの牛乳生産は1960年代からの成長を背景に、依然として国内経済および農業の重要分野を担っていることが確認できます。しかし、最近の伸び悩みや環境課題を考慮すると、さらなる投資と政策支援が緊急課題となっています。持続可能性を意識した発展への動きが、レソトの未来を築く一歩となるでしょう。