国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、レソトのヤギ飼養頭数は、1961年から2022年までの長期的な推移の中で大きな変動を記録しています。1960年代には増加傾向が見られる一方で、1977年から1978年にかけて約60万頭台まで減少しました。その後、1987年には112万頭を超え、ピークを迎えましたが、1990年代以降は再び減少と増加を繰り返しながら変動を続けています。2022年現在、ヤギ飼養頭数は713,463頭となり、長期的にみれば減少傾向が見受けられます。
レソトのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 713,463 |
2021年 | 762,486 |
2020年 | 628,561 |
2019年 | 749,343 |
2018年 | 909,554 |
2017年 | 972,701 |
2016年 | 700,509 |
2015年 | 813,850 |
2014年 | 824,698 |
2013年 | 838,650 |
2012年 | 835,000 |
2011年 | 845,000 |
2010年 | 875,184 |
2009年 | 953,337 |
2008年 | 916,673 |
2007年 | 879,278 |
2006年 | 879,278 |
2005年 | 821,171 |
2004年 | 613,235 |
2003年 | 775,632 |
2002年 | 789,623 |
2001年 | 826,598 |
2000年 | 830,258 |
1999年 | 937,600 |
1998年 | 546,351 |
1997年 | 811,250 |
1996年 | 732,000 |
1995年 | 749,135 |
1994年 | 875,695 |
1993年 | 811,325 |
1992年 | 649,065 |
1991年 | 729,255 |
1990年 | 844,111 |
1989年 | 1,067,540 |
1988年 | 1,123,710 |
1987年 | 1,125,074 |
1986年 | 978,013 |
1985年 | 1,028,625 |
1984年 | 856,900 |
1983年 | 872,145 |
1982年 | 930,413 |
1981年 | 766,535 |
1980年 | 784,346 |
1979年 | 618,314 |
1978年 | 582,499 |
1977年 | 617,500 |
1976年 | 834,600 |
1975年 | 886,400 |
1974年 | 961,900 |
1973年 | 942,600 |
1972年 | 930,000 |
1971年 | 920,000 |
1970年 | 897,149 |
1969年 | 823,895 |
1968年 | 679,324 |
1967年 | 890,628 |
1966年 | 817,225 |
1965年 | 848,392 |
1964年 | 716,000 |
1963年 | 791,726 |
1962年 | 749,454 |
1961年 | 632,032 |
レソトは山岳地帯が国土の大部分を占める内陸国であり、その地形と気候条件は農業と牧畜に大きな影響を及ぼしています。特にヤギの飼養は、国内経済において重要な役割を果たすと同時に、小規模農家に貴重な生計手段を提供してきました。データを見ると、1961年から1987年の間で総じて飼養頭数が増加傾向にありました。この時期に見られる増加は、地域住民のニーズや輸出拡大の動きによるものと考えられます。一方、1977年から1978年や1998年など、特定の年に著しい減少が見られますが、これらの変動の背景には干ばつや地域特有の土地利用の問題が関連している可能性があります。
特に1987年には112万頭を超える記録的な数字を示しており、これはレソトの牧畜業が年間を通じて好調であったことを示唆しています。その後、1990年代からは90万頭台に留まる年があれば60万頭台に減少する年もあり、減少と増加を繰り返しています。これらの動きの背景には、気候変動による降水量の不安定性や土地の過剰利用、放牧地の劣化が挙げられるかもしれません。また、健康管理や飼料確保の不十分さが原因となり、飼養頭数の安定を妨げている可能性も考えられます。
2010年以降のデータも変動が続いており、特に、2016年の70万頭台や2020年の62万頭台のように、急激な減少が観測されています。この時期の減少は、主に気候変動の影響や、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済活動の停滞の影響があると推測できます。特にパンデミックの際には、移動の制限や市場流通の停滞により、放牧や取引が大きく制限された可能性があります。
さらに地政学的な観点では、周囲の南アフリカや近隣諸国からの影響も見逃せません。地域の経済連携や貿易政策などは、国内の牧畜業への影響を及ぼします。特にヤギ飼養のような中小規模で展開される牧畜は、隣国の輸出競争や国際市場の変化の影響を受けやすいです。
未来への展望としては、いくつかの課題に対応する必要があります。まず、持続可能な牧草地の管理と飼料供給の確保が重要となります。これには、放牧圧の軽減や土地回復を目的とした地域協力が求められます。また、ヤギの健康管理が改善すれば、全体の飼養頭数の安定にも寄与するでしょう。加えて、気候変動による影響を軽減するための防災計画や灌漑設備の導入なども検討すべきです。
具体的な対策として、国内外の研究機関や農業専門機関の協力を得て、新しい飼養技術を普及させることが挙げられます。また、近隣諸国との協力によって飼養環境の改善計画を共同で進める枠組みを構築することも効果的です。輸出戦略の多様化についても検討し、自国のヤギ産業を支える収益モデルを確立すれば、将来的な安定が見込まれるでしょう。
結論として、レソトにおけるヤギ飼養頭数の推移は、地理的条件や気候変動、経済状況など多くの要因と密接に関連しており、長期的な視点で継続的な管理と政策が必要です。国際機関や地域パートナーと共有の取り組みを進めることで、この重要な産業を将来にわたり維持することが可能になるでしょう。