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レソトの牛飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、レソトの牛飼養数は1961年の約37万頭から1990年代にかけて増減を繰り返しながらも全体として増加しましたが、1999年に約75万頭とピークに達した後、徐々に減少傾向が明確となっています。直近の2022年には約35.8万頭となり、近年の数値と比較してもやや停滞しています。これは、気候変動、土地利用の変化、農業構造の変化など、複数の要因が影響していると考えられます。

年度 飼養数(頭)
2022年 357,623
2021年 357,156
2020年 330,726
2019年 360,602
2018年 453,297
2017年 461,573
2016年 494,007
2015年 508,344
2014年 540,133
2013年 548,042
2012年 650,000
2011年 635,000
2010年 626,343
2009年 616,562
2008年 616,159
2007年 687,588
2006年 687,588
2005年 729,327
2004年 677,215
2003年 682,488
2002年 644,550
2001年 732,191
2000年 709,884
1999年 755,134
1998年 495,614
1997年 601,410
1996年 539,000
1995年 580,230
1994年 577,975
1993年 658,305
1992年 699,000
1991年 542,399
1990年 523,244
1989年 583,260
1988年 627,195
1987年 625,270
1986年 524,675
1985年 522,125
1984年 529,125
1983年 537,517
1982年 562,372
1981年 589,976
1980年 593,929
1979年 560,327
1978年 526,151
1977年 485,500
1976年 505,400
1975年 512,400
1974年 465,500
1973年 441,700
1972年 440,000
1971年 470,000
1970年 551,522
1969年 474,356
1968年 442,582
1967年 375,709
1966年 278,940
1965年 418,951
1964年 308,000
1963年 336,146
1962年 386,342
1961年 376,740

レソトは、主に農牧業が経済の基盤であり、牛の飼養は同国の農村部住民にとって重要な生活手段でもあります。そのため、牛の飼養数の推移は、同国の食料安定や生活基盤、さらには経済の一部を占める重要な指標といえます。データを1961年から追うと、初期の段階では飼養数が約37万頭から約55万頭へ安定的な増加を見せました。しかしその後、1970年代を通じて一部の年で増減が見られたものの、1980年代から1990年代にかけて全体的な増加へと転じました。特に1999年の75万頭という記録的な数字を達成した一方、その後徐々に下降線をたどり、2022年には35.8万頭と大幅な減少になっています。

直近の減少傾向は、いくつかの要因に起因すると考えられます。まず、主な要因として考えられるものは気候変動や降水量の減少です。レソトは高地に位置しており、干ばつや降水量の変動が増え、牧草地および水資源への影響は非常に大きいです。これらは牛の飼養に直結する大きなリスク要因となっており、飼養頭数の減少に貢献している可能性があります。また、土地利用の変化も一因で、都市化や農地の減少が一部で進む一方、農村開発が十分に進んでいないため、牧草地の利用効率が悪化する問題も指摘されています。

さらに、経済的・社会的背景も見逃せません。同国では貧困率が高く、小規模農業が主流であるため、飼養管理にかける資金や技術支援も不十分な状況です。また、近隣諸国との貿易や移民問題もレソトの畜産業に影響を与えており、南アフリカを中心に市場依存度が高いため、価格変動や競争圧力が継続的な課題となっています。

このような状況に対する具体的な提案としてはいくつかのポイントが挙げられます。まず第一に、国家レベルでの気候変動への適応策を強化し、引き続き牧草地の保全や水資源管理の改善に取り組むことが重要です。干ばつ対策として、灌漑設備や牧草の供給を安定化するための制度を整える必要があります。また、畜産業における持続可能な生産方法を導入し、飼養管理の技術支援を拡大することも効果的でしょう。地域共同体の協力や技術研修を活用することで、農牧業技術の底上げが期待されます。

さらに、地政学的背景として、南アフリカを含む周辺諸国との市場連携の強化が鍵となります。例えば、牛肉の品質向上を目的とした規格の統一や、輸出向けの付加価値産品の生産を推進する政策が検討されるべきです。また、コロナ禍からの経済回復において、国際援助や資金調達の枠組みを利用することも重要です。

結論として、レソトの牛飼養産業は減少傾向にあるものの、適切な政策を通じてその持続可能性を高める余地があります。政府や国際機関が協力し、気候変動への適応策や近隣諸国との市場連携を進めることで、牛飼養数の安定化と食品安全保障を目指すべきです。こうした取り組みは、結果として同国の全体的な社会経済発展にも寄与するでしょう。