国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、トリニダード・トバゴのパイナップル生産量は、1960年代から徐々に増加傾向にあったものの、1990年代以降減少を示しています。2023年には950トンと、過去60年以上で最低の記録を観測しました。ピーク時である2007年の5,000トンと比較すると、生産量は約81%も減少しており、農業生産および経済面での課題が浮き彫りとなっています。
トリニダード・トバゴのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 950 |
-37.55% ↓
|
2022年 | 1,521 |
-8.79% ↓
|
2021年 | 1,668 |
-22.92% ↓
|
2020年 | 2,164 |
0.28% ↑
|
2019年 | 2,158 |
-12.38% ↓
|
2018年 | 2,463 |
24.39% ↑
|
2017年 | 1,980 |
55.42% ↑
|
2016年 | 1,274 |
-7.14% ↓
|
2015年 | 1,372 |
-3.92% ↓
|
2014年 | 1,428 |
35.48% ↑
|
2013年 | 1,054 |
45.42% ↑
|
2012年 | 725 |
-43.51% ↓
|
2011年 | 1,283 |
-35.85% ↓
|
2010年 | 2,000 |
-37.5% ↓
|
2009年 | 3,200 |
-20% ↓
|
2008年 | 4,000 |
-20% ↓
|
2007年 | 5,000 |
2.6% ↑
|
2006年 | 4,873 |
8.3% ↑
|
2005年 | 4,500 |
7.14% ↑
|
2004年 | 4,200 |
10.53% ↑
|
2003年 | 3,800 |
5.56% ↑
|
2002年 | 3,600 |
2.86% ↑
|
2001年 | 3,500 |
1.45% ↑
|
2000年 | 3,450 |
1.15% ↑
|
1999年 | 3,411 |
-9.23% ↓
|
1998年 | 3,758 |
-0.74% ↓
|
1997年 | 3,786 |
-2.55% ↓
|
1996年 | 3,885 |
-2.54% ↓
|
1995年 | 3,986 |
-2.46% ↓
|
1994年 | 4,086 |
-2.31% ↓
|
1993年 | 4,183 |
-2.07% ↓
|
1992年 | 4,271 |
-1.72% ↓
|
1991年 | 4,346 |
23.39% ↑
|
1990年 | 3,522 |
3.59% ↑
|
1989年 | 3,400 |
3.03% ↑
|
1988年 | 3,300 |
3.13% ↑
|
1987年 | 3,200 |
3.23% ↑
|
1986年 | 3,100 |
3.33% ↑
|
1985年 | 3,000 | - |
1984年 | 3,000 |
3.45% ↑
|
1983年 | 2,900 |
3.57% ↑
|
1982年 | 2,800 |
3.7% ↑
|
1981年 | 2,700 |
3.85% ↑
|
1980年 | 2,600 |
4% ↑
|
1979年 | 2,500 |
4.17% ↑
|
1978年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1977年 | 2,300 |
4.55% ↑
|
1976年 | 2,200 |
1.06% ↑
|
1975年 | 2,177 |
-12.75% ↓
|
1974年 | 2,495 | - |
1973年 | 2,495 |
3.96% ↑
|
1972年 | 2,400 |
4.35% ↑
|
1971年 | 2,300 |
2.22% ↑
|
1970年 | 2,250 |
2.27% ↑
|
1969年 | 2,200 |
2.33% ↑
|
1968年 | 2,150 |
2.38% ↑
|
1967年 | 2,100 | - |
1966年 | 2,100 |
5% ↑
|
1965年 | 2,000 |
2.56% ↑
|
1964年 | 1,950 |
2.63% ↑
|
1963年 | 1,900 |
2.7% ↑
|
1962年 | 1,850 |
2.78% ↑
|
1961年 | 1,800 | - |
トリニダード・トバゴのパイナップル生産は、長期的な観点から見ると、1960年代から2000年代初頭にかけて緩やかな増加を見せていました。特に2007年には5,000トンを記録し、過去最高に達しました。しかしこれ以降、生産量は急激に減少し、2023年には950トンとピーク時の20%未満まで減退しています。この急落は、農業生産全般における地域的な課題や経済的な影響を浮き彫りにしています。
1990年代には一時的に4,000トン台を維持していましたが、その後、特に2008年以降の急激な減少が顕著です。これには、いくつかの地政学的および環境的要因が影響していると考えられます。まず、気候変動による干ばつや洪水などの異常気象が作物の成長に悪影響を与えた可能性が挙げられます。また、2008年から2009年にかけての世界的な経済危機により、農業分野への投資資金が減少し、現地の農業インフラや生産技術の改善に遅れが生じたことも影響を及ぼしたと考えられます。
2020年代に入り、新型コロナウイルスのパンデミックも生産量の低迷に関連しています。パンデミックは、農業労働者の不足やサプライチェーンの混乱を引き起こし、農産物の市場への流通や生産計画に大きな障害をもたらしました。特に2021年以降、回復の兆しが見られず、2023年には生産量が1,000トン以下に低下しました。
この減少傾向に対して、課題はいくつか存在しています。一つは、パイナップル産業向けの技術革新の遅れです。国内の農業技術やインフラが更新されていないため、収穫率の効率が他国と比較して低い可能性があります。また、農家の収入減少により新たな作付投資が難しくなっていることも問題です。さらに、気候変動への適応策として、特定の耐性品種の開発や土壌改良、効率的な水管理手法の導入が求められます。
他国との比較では、例えばアメリカやブラジルなどの主要なパイナップル生産国は、生産量増加に向けて最新技術を導入しつつ、国内需要と輸出市場の両方を維持しています。これらの国々では、スマート農業技術や灌漑管理を積極的に活用することで、生産効率を大幅に向上させています。トリニダード・トバゴが同じように効率化を果たすためには、まず政府主導での農業支援プログラムの敷設や、中小規模農家への技術指導が不可欠です。
また、地政学的リスクも見逃せません。世界的な紛争や貿易制限により、他国からの農業資材や装備の輸入に制約が生じる可能性があります。これに対応するためには、地域的な農業協力体制を構築し、近隣諸国との共同プロジェクトを通じて人材育成や資源共有を進めることが重要です。
結論として、トリニダード・トバゴのパイナップル生産を復活させるためには、短期的には農業基盤の強化と技術導入、長期的には気候変動への適応策や輸出市場の開拓が鍵となります。これを実現するために、国際機関からの資金援助や指導も大いに活用すべきです。また、生産拠点の近代化に合わせ、農業分野における若者の参加を促進することで、持続可能な生産モデルを構築することが急務です。このような多面的なアプローチを推進することで、パイナップル生産の復活と農業全体の活性化を目指すべきです。