国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、トリニダード・トバゴのキュウリ類の生産量は大きな波を描きながら推移しています。1961年には450トンと少量でしたが、1986年の3,523トンを皮切りに数か所で生産量のピークを見せました。しかし、2000年代後半から生産量は大幅に減少し始め、2023年には再び421トンと、過去最低に近い水準となっています。これらの変化には、気候、農業政策、労働力不足など複数の要因が絡んでいる可能性があります。
トリニダード・トバゴのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 421 |
-77.8% ↓
|
2022年 | 1,897 |
55.12% ↑
|
2021年 | 1,223 |
-0.34% ↓
|
2020年 | 1,227 |
26.1% ↑
|
2019年 | 973 |
26.53% ↑
|
2018年 | 769 |
-7.35% ↓
|
2017年 | 830 |
-28.26% ↓
|
2016年 | 1,157 |
-6.69% ↓
|
2015年 | 1,240 |
-1.82% ↓
|
2014年 | 1,263 |
-0.63% ↓
|
2013年 | 1,271 |
-8.69% ↓
|
2012年 | 1,392 |
16.68% ↑
|
2011年 | 1,193 |
-10.84% ↓
|
2010年 | 1,338 |
-3.88% ↓
|
2009年 | 1,392 |
-13.65% ↓
|
2008年 | 1,612 |
-36.96% ↓
|
2007年 | 2,557 |
14.01% ↑
|
2006年 | 2,243 |
12.14% ↑
|
2005年 | 2,000 |
5.88% ↑
|
2004年 | 1,889 | - |
2003年 | 1,889 |
-47.63% ↓
|
2002年 | 3,607 |
-23.37% ↓
|
2001年 | 4,707 |
34.37% ↑
|
2000年 | 3,503 |
40.46% ↑
|
1999年 | 2,494 |
-35.41% ↓
|
1998年 | 3,861 |
43.85% ↑
|
1997年 | 2,684 |
-22.25% ↓
|
1996年 | 3,452 |
-6.63% ↓
|
1995年 | 3,697 |
-5.62% ↓
|
1994年 | 3,917 |
56.06% ↑
|
1993年 | 2,510 |
-4.71% ↓
|
1992年 | 2,634 |
-11.67% ↓
|
1991年 | 2,982 |
4.3% ↑
|
1990年 | 2,859 |
79.92% ↑
|
1989年 | 1,589 |
-56.56% ↓
|
1988年 | 3,658 |
72.14% ↑
|
1987年 | 2,125 |
-39.68% ↓
|
1986年 | 3,523 |
50.94% ↑
|
1985年 | 2,334 |
11.41% ↑
|
1984年 | 2,095 |
-18.99% ↓
|
1983年 | 2,586 |
48.11% ↑
|
1982年 | 1,746 |
-3.96% ↓
|
1981年 | 1,818 |
-1.99% ↓
|
1980年 | 1,855 |
-0.8% ↓
|
1979年 | 1,870 |
-0.16% ↓
|
1978年 | 1,873 |
-6.35% ↓
|
1977年 | 2,000 | - |
1976年 | 2,000 |
-6.67% ↓
|
1975年 | 2,143 |
-2.77% ↓
|
1974年 | 2,204 |
12.45% ↑
|
1973年 | 1,960 |
3.16% ↑
|
1972年 | 1,900 |
2.7% ↑
|
1971年 | 1,850 |
0.87% ↑
|
1970年 | 1,834 |
10.95% ↑
|
1969年 | 1,653 |
1.91% ↑
|
1968年 | 1,622 |
-23.67% ↓
|
1967年 | 2,125 |
185.62% ↑
|
1966年 | 744 |
75.47% ↑
|
1965年 | 424 |
-16.54% ↓
|
1964年 | 508 |
-14.19% ↓
|
1963年 | 592 |
19.84% ↑
|
1962年 | 494 |
9.78% ↑
|
1961年 | 450 | - |
トリニダード・トバゴのキュウリ類生産量の推移を見てみると、長期的に生産量が増減を繰り返す特徴を持ちながらも、全体的には減少傾向にあります。1960年代から1970年代前半までは比較的低い生産量を記録しましたが、1980年代から2000年代にかけて数年間のピークがありました。たとえば、1986年には3,523トン、1994年には3,917トンと大幅な増加を遂げ、さらに2001年には4,707トンという過去最高値を記録しました。その後、2008年以降には下降線をたどり、特に2017年から2023年にかけての減少が顕著です。2023年の生産量は421トンと、1961年以来の最低水準近くとなっています。
この変動にはいくつかの要因が関係していると考えられます。まず、トリニダード・トバゴの地理的位置や気候要因が大きく影響しています。同国はカリブ海地域に位置し、台風や熱帯性の暴風雨が頻発する地域です。そのため、農作物の生産量は自然災害や気候変動の影響を直に受けやすいといえます。例えば、台風の被害や干ばつの影響で農地がダメージを受けると、生産量が急激に減少することが確認されています。
また、農業の労働力不足やインフラの改善遅れも課題として指摘されます。トリニダード・トバゴでは従事する農業人口が減少しており、このことが生産規模の縮小につながっている可能性があります。また、農業用設備や灌漑システムの近代化が進んでいないため、効率的な農業生産が行いにくい現状があります。他のカリブ海諸国と比べても、農業生産における効率性は相対的に低い水準にあると言えます。
さらに、世界的な地政学的リスクも影響を与えています。特に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、労働力確保や輸送チェーンに深刻な影響を及ぼしました。外部市場へのアクセスが制限されたり、輸送費が上昇したりした結果、生産意欲が低下する一因となったと考えられます。
未来を考えるうえでの課題としては、まず気候変動へのより効果的な対策を講じる必要があります。堤防や排水システムの整備を行い、洪水や台風といった自然災害から農地を守ることが重要です。また、農業労働者を確保しやすくする制度や、栽培技術を最新化するための支援も必要です。例えば、地下水の利用効率を向上させる灌漑技術の導入や、熱帯気候に適した新品種の研究開発を進めることも効果的と言えます。
さらに、地域での農業協力体制の強化も有用です。同様の課題を抱えるカリブ海諸国と連携し、農業技術、融資制度、災害支援などの共有プラットフォームを構築することで、資源の効率的活用と生産性向上が期待できます。
結論として、トリニダード・トバゴのキュウリ類生産量は、短期的には回復が難しい状況にありますが、適切な政策と技術導入によって再び成長軌道に戻る可能性を秘めています。そのためには、政府や国際機関が共同で農業の持続可能性を確保するための包括的な取り組みを進めることが求められます。具体的には、気候変動対策への投資、農業教育プログラムの実施、地域間連携の強化が鍵となるでしょう。