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トリニダード・トバゴの米生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、トリニダード・トバゴの米生産量は長期的に大きく減少しています。特に1960年代には年間10,000トン台で安定していましたが、1970年代後半から不安定な変動が見られるようになり、1980年代以降は一貫して減少しています。2022年には生産量が125トンと、最盛期の1976年の21,432トンを大きく下回る状態となっています。この傾向は同国の農業政策や地政学的な課題、気候変動などの要因と関連している可能性があります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 326
160.8% ↑
2022年 125
-64.4% ↓
2021年 351
-52.17% ↓
2020年 734
27.65% ↑
2019年 575
-1.88% ↓
2018年 586
-63.83% ↓
2017年 1,620
-11.14% ↓
2016年 1,823
-4.05% ↓
2015年 1,900
-34.75% ↓
2014年 2,912
1.85% ↑
2013年 2,859
34.74% ↑
2012年 2,122
-20.31% ↓
2011年 2,663
17.88% ↑
2010年 2,259
1.48% ↑
2009年 2,226
-16.85% ↓
2008年 2,677
10.94% ↑
2007年 2,413
55.18% ↑
2006年 1,555
-25.31% ↓
2005年 2,082
21.05% ↑
2004年 1,720
0.01% ↑
2003年 1,720
-55.7% ↓
2002年 3,882
19.01% ↑
2001年 3,262
-47.86% ↓
2000年 6,256
101.18% ↑
1999年 3,110
-55.81% ↓
1998年 7,037
3.55% ↑
1997年 6,796
-61.94% ↓
1996年 17,858
75.2% ↑
1995年 10,193
-41.8% ↓
1994年 17,514
8.08% ↑
1993年 16,204
-26.42% ↓
1992年 22,022
37.64% ↑
1991年 16,000
18.24% ↑
1990年 13,532
12.69% ↑
1989年 12,008
60.56% ↑
1988年 7,479
13.16% ↑
1987年 6,609
49.49% ↑
1986年 4,421
11.64% ↑
1985年 3,960
0.35% ↑
1984年 3,946
19.32% ↑
1983年 3,307
-2.51% ↓
1982年 3,392
13.33% ↑
1981年 2,993
-68.63% ↓
1980年 9,541
-44.04% ↓
1979年 17,050
20.03% ↑
1978年 14,205
-32.8% ↓
1977年 21,137
-1.38% ↓
1976年 21,432
5.59% ↑
1975年 20,298
13.01% ↑
1974年 17,961
46.13% ↑
1973年 12,291 -
1972年 12,291
16.55% ↑
1971年 10,546
2.38% ↑
1970年 10,301
0.75% ↑
1969年 10,224
0.44% ↑
1968年 10,179
-3.06% ↓
1967年 10,500
5% ↑
1966年 10,000
-1.96% ↓
1965年 10,200
-0.97% ↓
1964年 10,300
-0.96% ↓
1963年 10,400
-1.89% ↓
1962年 10,600
4.33% ↑
1961年 10,160 -

トリニダード・トバゴの米生産量は、1960年代に比較的安定した規模で推移していました。当時の生産量は年間約10,000トン程度で、国内需要に一定の貢献を果たしていたと見られます。しかし、1970年代に入ると生産量は変動を伴いながら増加し、1976年には21,432トンのピークを記録しました。この時期の増加は、農業技術の改良や米の需要拡大につながる政策が一定の効果を上げた一方、政府の投資や農地の拡大が進められた結果である可能性があります。

しかし、1980年代からは急激な減少が見られ、1990年代まで生産量の変動が続くものの全体として低迷が目立ちます。この低迷には複数の要因が影響していると考えられます。一つは、輸入依存度の増加に伴い国内生産への投資が減少したことです。米は輸入品としてより手頃な価格で流通し始め、国内の小規模農家は競争力を維持するのが難しくなりました。さらに、1990年代後半から2000年代にかけては生産量が一層縮小し、2000年代後半には年間2,000トン台まで落ち込みました。この間、農村部の産業構造の変化や若い世代の農業離れが進み、米農業に従事する労働力が著しく減少したことも指摘されています。

また、気候変動の進行もトリニダード・トバゴの農業全体に影響を与えています。同国はカリブ海に位置し、気候変動による異常気象の影響を受けやすい地域です。特に洪水、干ばつ、台風などが米の生産を妨げる要因になった可能性があります。データ上では2018年以降、生産量が著しく落ち込み、2022年には125トンという記録的な低水準に達しています。この減少は、おそらく農地の転用や放棄、加えて農機具や施設の老朽化なども背景にあります。

米の生産量が減少する一方で、国内需要を賄うために輸入に依存せざるを得なくなっています。この補填のための輸入品が外貨支出を圧迫し、経済的な負担を増大させるリスクも抱えています。これは、国全体の食料安全保障にも影響を与える可能性がある深刻な課題です。

課題を克服するためには、いくつかの具体的な対策が必要です。例えば、まず農業技術向上のための支援を強化し、小規模農家に効率的で持続可能な生産方法を広めることが重要です。また、若い世代への農業教育の導入によって労働力の再構築を図るべきです。さらに、地域の特性に合った稲作品種の研究を進め、気候変動に対応できる農作物を導入することが推奨されます。同時に、地元市場での米需要を促進し、国内生産の需要を増やす経済的インセンティブを提供することも肝要です。

また、地域間協力も欠かせません。同様に気候変動の影響を受けているカリブ海諸国のネットワークを活用し、知識や資源を共有して生産性を回復させる取り組みも良い例となるでしょう。国際的な食品安全保障の観点からは、FAOや関連機関との協力を進め、資金提供や持続可能な農業政策の助言を得ることも考えられます。

結論として、トリニダード・トバゴの米生産量の推移は、国内外の政策、気候要因、社会構造の変化が複合的に絡み合っていることを示しています。このままの状況を放置すると食料安全保障の不安定さが一層深まり、さらなる経済的損失を招く可能性があります。それゆえ、農業政策の見直しや国際協力の拡大、また気候変動への適応策を軸とした体系的なアプローチが必要不可欠です。