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トリニダード・トバゴのバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、トリニダード・トバゴのバナナ生産量は、1961年以降一貫して変動を見せています。1960年代には急激な増加がありましたが、1970年代以降は5,000トンから7,000トン程度の安定した水準で推移しました。しかし2008年以降は減少傾向を示し、2022年には3,286トンという、過去最低水準に近い値となっています。この長期的な生産量の低下は、気候の変化や生産コストの増加、競争の激化などの複数の要因が影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,370
2.57% ↑
2022年 3,286
1.41% ↑
2021年 3,240
-1.27% ↓
2020年 3,282
-1.63% ↓
2019年 3,336
1.26% ↑
2018年 3,295
-3.36% ↓
2017年 3,409
-3.39% ↓
2016年 3,529
10.13% ↑
2015年 3,204
-10.83% ↓
2014年 3,593
-5.16% ↓
2013年 3,789
5.24% ↑
2012年 3,600
2.86% ↑
2011年 3,500 -
2010年 3,500
-39.66% ↓
2009年 5,800
28.89% ↑
2008年 4,500
-17.47% ↓
2007年 5,453
-7.98% ↓
2006年 5,926
-15.35% ↓
2005年 7,000
2.94% ↑
2004年 6,800
1.49% ↑
2003年 6,700
3.08% ↑
2002年 6,500
4.84% ↑
2001年 6,200
0.81% ↑
2000年 6,150
0.4% ↑
1999年 6,125
-0.1% ↓
1998年 6,132
-0.29% ↓
1997年 6,149
-0.12% ↓
1996年 6,157
-0.21% ↓
1995年 6,170
-0.04% ↓
1994年 6,173
2.88% ↑
1993年 6,000
1.69% ↑
1992年 5,900
1.72% ↑
1991年 5,800
-1.21% ↓
1990年 5,871
3% ↑
1989年 5,700
1.79% ↑
1988年 5,600 -
1987年 5,600
1.82% ↑
1986年 5,500
1.85% ↑
1985年 5,400 -
1984年 5,400 -
1983年 5,400
1.89% ↑
1982年 5,300
1.92% ↑
1981年 5,200
1.96% ↑
1980年 5,100
2% ↑
1979年 5,000 -
1978年 5,000
2.04% ↑
1977年 4,900
2.08% ↑
1976年 4,800
0.06% ↑
1975年 4,797
-3.87% ↓
1974年 4,990
3.81% ↑
1973年 4,807
-12.6% ↓
1972年 5,500
-21.43% ↓
1971年 7,000
-10.79% ↓
1970年 7,847
0.58% ↑
1969年 7,802
-14.42% ↓
1968年 9,117
12.29% ↑
1967年 8,119
35.61% ↑
1966年 5,987
-14.29% ↓
1965年 6,985
-3.15% ↓
1964年 7,212
47.21% ↑
1963年 4,899
8.87% ↑
1962年 4,500
12.5% ↑
1961年 4,000 -

トリニダード・トバゴにおけるバナナ生産量の推移を詳しく見ると、1961年から1968年にかけては一貫して増加が見られ、最高で9,117トンに達しました(1968年)。この期間の増加は、国内農業への投資や地方市場の発展が後押しした可能性があります。しかしその後、1969年から1975年の間に安定した水準に達したものの、、多くの年で減少傾向が始まりました。

1980年代から1990年代半ばまでは5,000トンから6,000トンと比較的安定した生産量を維持しています。これはトリニダード・トバゴの農業政策が安定的に機能していたこと、また国内外への供給先が確保されていたことを意味していると考えられます。しかし2000年代に入ると、減少傾向が再び表れました。2008年には4,500トンへの急低下が見られ、その後持ち直す時期もあったものの、長期的には減衰しており、2022年には3,286トンと推移しています。この減少の背景には、労働力の減少、気候変動による降水量不足や台風などの影響があると推測されます。

また、国際市場における競争激化も重要な要因です。バナナの生産に特化した他地域、例えば中南米やアフリカの一部諸国(コスタリカやエクアドルなど)が低コストで大規模な生産を続けており、これがトリニダード・トバゴの生産者に価格プレッシャーを与えた可能性があります。この価格競争に加え、同国が小規模農家を中心とした生産体制を保っていることも、生産力の伸び悩みに影響しているといえます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響も無視できません。パンデミック中の2020年から2022年の間は生産量が3,200トン台に留まりました。この時期には物流の停滞や労働力の確保が難航し、バナナ生産の維持が困難であったことが原因の一部だと考えられています。

この現状を受けて、トリニダード・トバゴがバナナ生産を改善するためには、複数の方策を検討すべきです。まず、国際価格のプレッシャーに対抗するための高付加価値製品への転換が求められます。例えば、オーガニックバナナの生産や加工食品としての展開が挙げられます。また、効率的な栽培技術の導入や、研究開発を通じて病害虫耐性を向上させる品種改良が現場の生産性向上につながるでしょう。さらに、適応型農業を促進するための気候変動対策も不可欠となります。

地域間協力も重要な解決策の一つです。同国はカリブ地域の他国と連携し、輸送効率の向上や市場拡大を進める取り組みが可能です。さらに、近隣諸国や国際機関の支援を受けて、持続可能な農業モデルの構築を目指すべきです。

結論として、トリニダード・トバゴのバナナ生産量の減少は、国内外の複数要因が絡み合った複雑な問題です。今後、技術革新や貿易政策の見直し、そして気候変動への適応を進めることで、この長期的な減少傾向を逆転させる可能性があります。そして、カリブ諸国全体での農業振興戦略を構築することが、トリニダード・トバゴのみならず、地域全体の持続可能な発展につながると考えられます。