国際連合食糧農業機関が発表した最新のデータによると、トリニダード・トバゴにおける天然蜂蜜の生産量は、1960年代には年間平均約180〜200トンを達成していました。しかし、1980年代以降、生産量は著しい減少を見せ、1990年代中盤には39トンという低生産期に達しました。その後、2000年代には50トン前後で推移し、近年(2020年代)では50~88トンと多少持ち直しているものの、大変な変動が続いています。このデータは、同地域の蜂蜜生産が環境・経済的要因に大きく左右される状況を示唆しています。
トリニダード・トバゴの天然蜂蜜生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 107 |
113.15% ↑
|
2022年 | 50 |
43.43% ↑
|
2021年 | 35 |
-60.23% ↓
|
2020年 | 88 |
4.76% ↑
|
2019年 | 84 |
20% ↑
|
2018年 | 70 |
18.64% ↑
|
2017年 | 59 |
13.46% ↑
|
2016年 | 52 |
-7.14% ↓
|
2015年 | 56 |
27.27% ↑
|
2014年 | 44 |
-14.18% ↓
|
2013年 | 51 |
0.95% ↑
|
2012年 | 51 |
153.95% ↑
|
2011年 | 20 |
-80.72% ↓
|
2010年 | 104 |
57.4% ↑
|
2009年 | 66 |
64.73% ↑
|
2008年 | 40 |
-28.62% ↓
|
2007年 | 56 |
0.88% ↑
|
2006年 | 56 |
0.31% ↑
|
2005年 | 55 |
0.02% ↑
|
2004年 | 55 |
-0.32% ↓
|
2003年 | 56 |
-2.22% ↓
|
2002年 | 57 |
-0.86% ↓
|
2001年 | 57 |
-0.85% ↓
|
2000年 | 58 |
-0.93% ↓
|
1999年 | 58 |
-1.05% ↓
|
1998年 | 59 |
-2.04% ↓
|
1997年 | 60 |
-2.46% ↓
|
1996年 | 62 |
58.21% ↑
|
1995年 | 39 |
-41.19% ↓
|
1994年 | 66 |
-4.38% ↓
|
1993年 | 69 |
-4.34% ↓
|
1992年 | 73 |
-4.25% ↓
|
1991年 | 76 |
-38.94% ↓
|
1990年 | 124 |
6.9% ↑
|
1989年 | 116 |
38.1% ↑
|
1988年 | 84 |
31.25% ↑
|
1987年 | 64 |
6.67% ↑
|
1986年 | 60 |
-20% ↓
|
1985年 | 75 |
-2.6% ↓
|
1984年 | 77 |
-3.75% ↓
|
1983年 | 80 |
-11.11% ↓
|
1982年 | 90 |
-10% ↓
|
1981年 | 100 |
-9.09% ↓
|
1980年 | 110 |
-15.38% ↓
|
1979年 | 130 |
2.36% ↑
|
1978年 | 127 |
-9.29% ↓
|
1977年 | 140 |
-12.5% ↓
|
1976年 | 160 | - |
1975年 | 160 |
-15.79% ↓
|
1974年 | 190 | - |
1973年 | 190 |
-5% ↓
|
1972年 | 200 | - |
1971年 | 200 |
11.11% ↑
|
1970年 | 180 |
-10% ↓
|
1969年 | 200 |
5.26% ↑
|
1968年 | 190 |
-5% ↓
|
1967年 | 200 | - |
1966年 | 200 |
17.65% ↑
|
1965年 | 170 |
13.33% ↑
|
1964年 | 150 |
15.38% ↑
|
1963年 | 130 |
-18.75% ↓
|
1962年 | 160 |
-11.11% ↓
|
1961年 | 180 | - |
トリニダード・トバゴの蜂蜜生産量のデータは、過去60年以上にわたる大きな変動を反映しています。1960年代には、生産量は比較的安定しており、200トン前後の年も多く見受けられます。これは、当時のトリニダード・トバゴがまだ自然環境の恩恵を十分に活用し、大量の蜂蜜を生産できる基盤を持っていたことを示しています。しかし、1975年以降、急激に減少が始まり、1980年代には年間100トンを下回る低生産期を迎えます。最も顕著なのは1985年から1995年までで、最も少ない年には39トンに落ち込みました。
この減少の背後には、複雑な原因が絡んでいます。まず、森林伐採や都市化の進展により、蜜を採るための植物資源が減少したことが挙げられます。さらに、この地域では気候変動による異常気象が蜂の生息環境に悪影響を及ぼしている可能性もあります。また、トリニダード・トバゴは小国であるため、アフリカ化ミツバチなどの侵略的外来種がミツバチの群れに与える影響や、農薬使用が蜂の健康状態を悪化させたことも見逃せません。
2000年代以降のデータを見ると、生産量は年間50トン前後と低水準で推移していますが、2010年には104トンに到達し、その後2020年には88トンに達するなど、一時的な改善が見られます。特に気になるのは、2021年に35トンへ急激に減少した後、2022年には再び50トンに回復していることです。この不安定な傾向は、ここ数年での蜂蜜生産に影響を与えた複数の要因を示唆しています。新型コロナウイルスの流行は、養蜂に必要な資材の輸入やマーケット活動に影響を与え、地元の蜂蜜業者の運営を一時的に圧迫しました。これが生産量の変動にも表れている可能性があります。
トリニダード・トバゴが抱える問題を解決するためには、一連の対策が必要です。まず、蜜源となる植物を守り増やすため、森林保護と植林活動に注力することが不可欠です。また、持続可能な養蜂技術の導入と、蜂の健康を懸念する農薬使用の削減努力も求められます。さらに、地元生産者には生産支援や技術トレーニングを提供し、世界市場への流通を拡大することで産業を強化する手段があります。加えて、地域の地政学的特徴を考慮し、外来種管理のための国際協力も重要です。
トリニダード・トバゴの天然蜂蜜産業の復活と安定を目指すには、環境保全と経済的支援をバランスよく組み合わせた包括的な対策が求められます。これにより、生産量の増加だけでなく、同国が持つ豊かな自然資源を活用した持続可能な産業の構築にもつながるでしょう。将来的には、他国との輸出競争力も高め、この小国の貴重な産品としての蜂蜜の評価をさらに広げていくことが期待されます。