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トリニダード・トバゴのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)のデータによると、トリニダード・トバゴにおけるヤギの飼養頭数は、1961年には29,000頭でしたが、その後、1980年代半ばまで順調に増加し、1984年に55,000頭を記録しました。しかし、2000年以降は一貫して頭数が減少し、特に2006年以降の急激な大幅減少が顕著です。2022年時点では12,205頭にとどまり、ピーク時の約55,000頭と比較して大幅に縮小しています。この変遷はトリニダード・トバゴの農業産業や社会経済の変化を映し出しており、地域および国家レベルでの課題と未来対策が求められる状況となっています。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 13,496
10.58% ↑
2022年 12,205
-12.63% ↓
2021年 13,970
-5.45% ↓
2020年 14,776
80.5% ↑
2019年 8,186
7.13% ↑
2018年 7,641
-3.6% ↓
2017年 7,926
-6.08% ↓
2016年 8,439
-15.53% ↓
2015年 9,990
45.75% ↑
2014年 6,854
-62.79% ↓
2013年 18,420
165.19% ↑
2012年 6,946
39.17% ↑
2011年 4,991
-29.7% ↓
2010年 7,100
-52.93% ↓
2009年 15,085
-50.38% ↓
2008年 30,400
-24.4% ↓
2007年 40,213
-28.02% ↓
2006年 55,864
-5.79% ↓
2005年 59,300
0.51% ↑
2004年 59,000
0.77% ↑
2003年 58,550
0.09% ↑
2002年 58,500
0.6% ↑
2001年 58,150
-0.02% ↓
2000年 58,160
0.02% ↑
1999年 58,150 -
1998年 58,150
-0.17% ↓
1997年 58,250
0.09% ↑
1996年 58,200 -
1995年 58,200 -
1994年 58,200
0.17% ↑
1993年 58,100 -
1992年 58,100
0.17% ↑
1991年 58,000
1.31% ↑
1990年 57,250
0.44% ↑
1989年 57,000
-1.72% ↓
1988年 58,000 -
1987年 58,000
1.75% ↑
1986年 57,000
3.64% ↑
1985年 55,000 -
1984年 55,000
3.77% ↑
1983年 53,000
1.92% ↑
1982年 52,000
1.96% ↑
1981年 51,000
2% ↑
1980年 50,000
2.04% ↑
1979年 49,000
4.26% ↑
1978年 47,000
2.17% ↑
1977年 46,000
2.22% ↑
1976年 45,000
4.65% ↑
1975年 43,000
7.5% ↑
1974年 40,000
2.56% ↑
1973年 39,000
2.63% ↑
1972年 38,000
2.7% ↑
1971年 37,000
2.78% ↑
1970年 36,000
9.09% ↑
1969年 33,000 -
1968年 33,000
3.13% ↑
1967年 32,000
4.92% ↑
1966年 30,500
0.99% ↑
1965年 30,200
0.67% ↑
1964年 30,000
1.35% ↑
1963年 29,600
1.02% ↑
1962年 29,300
1.03% ↑
1961年 29,000 -

トリニダード・トバゴのヤギ飼養頭数の推移は、同国の畜産業および農業全体の動向、社会経済的変化、さらには地政学的な背景を反映しています。1961年の29,000頭という規模は、その後1980年代半ばまで継続的な増加を見せ、成長は地元での肉や乳製品の需要増に対応していたと考えられます。特に1984年の55,000頭の記録は、飼養活動が比較的安定していた時期を象徴しています。この当時の増加は、農業分野におけるヤギの経済的重要性が高まりつつあったことを示しているでしょう。

一方で、2000年代に入ると状況は一変し、飼養頭数は下降の一途をたどります。特に2006年以降の変化は極めて急激です。2005年の59,300頭から2006年の55,864頭、さらに2007年には40,213頭と劇的な減少が見られ、2009年にはわずか15,085頭となっています。この急落は、いくつかの要因が絡んだ複合的な現象であると考えられます。

一つ目の要因として、地域的な疫病の発生が挙げられます。動物の健康問題や感染症管理の不足が広範な飼養崩壊を引き起こした可能性があります。二つ目として、農業環境の変化が影響したと推測されます。農地の縮小や気候変動の影響による餌資源の減少がヤギ飼養を困難にした可能性があります。また、2008年以降の世界金融危機がトリニダード・トバゴにも間接的な影響を与え、農業分野への投資不足や飼養コストの上昇を招いたことも考えられます。さらに、農業や畜産から都市部への労働力移動が加速したことも、飼養頭数減少の要因となったことは想像に難くありません。

2020年に一時的に14,776頭まで回復したものの、これはおそらくコロナ禍による農業回帰や地元での自給自足需要の増加が一因と考えられます。それでも、その後の回復が限定的だったことは、構造的な課題が依然として解決されていないことを示唆しています。

これらの事実は、トリニダード・トバゴにおける持続可能な農業・畜産業への戦略的見直しの必要性を浮き彫りにしています。課題解決のためには、以下の包括的な対策が考えられます。

まず、ヤギ飼養の基盤となるインフラと技術支援の拡充が必要です。例えば、ヤギの健康管理を強化するための獣医サービスの拡大や、感染症予防のための定期的な検診制度を導入するべきです。同時に、より効果的な飼料供給システムの構築が求められ、これには持続可能な地元資源の活用が含まれます。さらに、ヤギの肉や乳製品への需要を喚起するための、地元市場向けのプロモーション活動を強化することも重要でしょう。

加えて、農業労働力の不足に対処するためには、若年層をターゲットにした教育キャンペーンや奨励プログラムを通じて畜産業への参入を促進することが効果的です。このために、政府が補助金や資金提供プログラムを実施するのも現実的な選択肢です。

地政学的なリスクにも目を向ける必要があります。トリニダード・トバゴは地域的な輸入依存率が高いため、国際的な物流の混乱や貿易制限が食糧安全保障に与える影響は深刻です。地域内での協力と貿易の強化により、隣国との相互依存を深めることは、中長期的な安定を実現するための鍵となるでしょう。

今後の成功に向けて、トリニダード・トバゴはヤギ飼養を単なる伝統的な農業活動として捉えるのではなく、地域経済の再活性化と食糧安全保障を目指す戦略的な要素と位置付けるべきです。これにより、持続可能な食糧供給網を構築しつつ、地域コミュニティの経済的復興に寄与する道を見出すことができるでしょう。