国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、タンザニア連合共和国のカシューナッツ生産量は、1961年以降大きな波を描いて推移してきました。特に1970年代から1980年代半ばにかけては生産量が急激に減少しましたが、その後回復を見せ、2018年にはピークの313,826トンを記録しました。その後、2023年には189,114トンに減少したものの、長期的には安定した生産水準が見られます。
タンザニア連合共和国のカシューナッツ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 189,114 |
-12.81% ↓
|
2022年 | 216,907 |
2.9% ↑
|
2021年 | 210,786 |
-9.41% ↓
|
2020年 | 232,681 |
3.37% ↑
|
2019年 | 225,106 |
-28.27% ↓
|
2018年 | 313,826 |
18.32% ↑
|
2017年 | 265,238 |
70.66% ↑
|
2016年 | 155,416 |
-21.48% ↓
|
2015年 | 197,933 |
52.11% ↑
|
2014年 | 130,124 |
1.7% ↑
|
2013年 | 127,947 |
-20.03% ↓
|
2012年 | 160,000 |
32.15% ↑
|
2011年 | 121,070 |
63.23% ↑
|
2010年 | 74,170 |
-6.23% ↓
|
2009年 | 79,100 |
-41.41% ↓
|
2008年 | 134,998 |
45.79% ↑
|
2007年 | 92,600 |
2.45% ↑
|
2006年 | 90,382 |
0.45% ↑
|
2005年 | 89,980 |
-3.05% ↓
|
2004年 | 92,810 |
1.61% ↑
|
2003年 | 91,340 |
35.56% ↑
|
2002年 | 67,380 |
-44.91% ↓
|
2001年 | 122,300 |
0.58% ↑
|
2000年 | 121,600 |
14.18% ↑
|
1999年 | 106,500 |
14.27% ↑
|
1998年 | 93,200 |
42.51% ↑
|
1997年 | 65,400 |
-20.05% ↓
|
1996年 | 81,800 |
29.02% ↑
|
1995年 | 63,400 |
35.76% ↑
|
1994年 | 46,700 |
18.83% ↑
|
1993年 | 39,300 |
-4.84% ↓
|
1992年 | 41,300 |
38.36% ↑
|
1991年 | 29,850 |
74.97% ↑
|
1990年 | 17,060 |
-11.42% ↓
|
1989年 | 19,260 |
-14.29% ↓
|
1988年 | 22,470 |
21.53% ↑
|
1987年 | 18,490 |
-3.7% ↓
|
1986年 | 19,200 |
-41.37% ↓
|
1985年 | 32,750 |
-14.04% ↓
|
1984年 | 38,100 |
15.21% ↑
|
1983年 | 33,070 |
-23.45% ↓
|
1982年 | 43,200 |
-32.5% ↓
|
1981年 | 64,000 |
54.53% ↑
|
1980年 | 41,416 |
-27.5% ↓
|
1979年 | 57,128 |
-16.57% ↓
|
1978年 | 68,478 |
-26.59% ↓
|
1977年 | 93,285 |
11.54% ↑
|
1976年 | 83,637 |
-27.8% ↓
|
1975年 | 115,840 |
-4.82% ↓
|
1974年 | 121,704 |
-16.11% ↓
|
1973年 | 145,080 |
15.55% ↑
|
1972年 | 125,559 |
-0.67% ↓
|
1971年 | 126,409 |
17.65% ↑
|
1970年 | 107,445 |
12.27% ↑
|
1969年 | 95,700 |
3.46% ↑
|
1968年 | 92,500 |
10.38% ↑
|
1967年 | 83,800 |
0.72% ↑
|
1966年 | 83,200 |
9.47% ↑
|
1965年 | 76,000 |
7.04% ↑
|
1964年 | 71,000 |
42% ↑
|
1963年 | 50,000 |
-28.57% ↓
|
1962年 | 70,000 |
40% ↑
|
1961年 | 50,000 | - |
タンザニアのカシューナッツ生産は、同国の主要な農業輸出品目のひとつであり、経済的に重要な役割を果たしています。1960年代から1970年代初頭にかけて生産量は緩やかに上昇し、1971年には過去最高の126,409トンを記録しました。その後、1980年代にかけて生産が著しく低迷し、1986年には19,200トンと最低値を記録しました。この期間の低迷は、インフラ未整備や市場価格の低迷、農業技術の不足などが主な原因とされています。当時、農業従事者への支援不足も指摘され、農村経済が大きなダメージを受けました。
1990年代以降、政府による農業改革や市場の自由化が行われたことにより、生産量が再び増加傾向を見せ、特に2000年代後半からは比較的安定した生産量が観察されました。2018年の記録的な313,826トンの生産量は、天候条件の好転と栽培技術の進展、輸出需要の増加に起因しています。しかし、その後の数年間では下降傾向が見られ、2023年には189,114トンに減少しました。この減少は、気候変動の影響とインフラ問題、世界市場での競争激化などが関連しています。
タンザニアのカシューナッツ産業の発展には、いくつかの課題があります。まず、国内の加工能力が限られていることが挙げられます。多くの原料が加工されないまま輸出されており、これが付加価値向上の妨げとなっています。また、農業従事者の多くが依然として原始的な農業手法に依存しており、近代的な技術へのアクセスが限定的です。気候変動による干ばつや豪雨などの自然災害も、大きなリスク要因として挙げられます。
さらには、地政学的な背景もこの産業に影響を与えています。特にアフリカ地域における貧困や紛争が、農業従事者の労働力確保や交通網の整備を妨げている状況にあります。これにより、一部の農村地域ではカシューナッツ生産が経済的な安定に十分寄与できていないのが現状です。
今後の対策として、まず国内加工能力の向上が重要となります。加工施設の整備や技術トレーニングを推進することで、輸出価格の上昇や雇用の増加を図ることができます。また、農業従事者に対する金融支援や技術支援プログラムを強化することで、生産効率を高めることが期待されます。これに加えて、温暖化への適応能力を高めるために、干ばつ耐性のある品種や適切な灌漑技術の導入が求められます。気候変動の影響を緩和するためには、地域間協力を強め、周辺国や国際機関との連携を進めるべきでしょう。
また、世界的な需要と競争を見越し、市場多様化を図りつつ、消費地に直接輸出を行う貿易ルートの最適化が重要です。日本や中国、インドといった主要消費国への輸出戦略を強化することは、収益向上につながる可能性を秘めています。適切な政策と持続可能な農業モデルの導入により、タンザニアのカシューナッツ産業はアフリカ地域ならびに世界市場での競争力をさらに高めることが期待されます。