国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に更新した最新データによると、タンザニア連合共和国の豚飼育数は着実に増加しており、2022年には531,080頭に達しました。1961年には93,000頭だった飼育数が、60年以上の間に約5.7倍に増加しており、とりわけ1980年代後半以降の増加が顕著です。特に1984年には顕著な上昇が観察され、275,239頭を記録しています。近年においても持続的な増加傾向が続いていますが、その伸び幅はやや緩やかになっています。
タンザニア連合共和国の豚飼育数推移(1961-2022)
年度 | 飼育数(頭) |
---|---|
2022年 | 531,080 |
2021年 | 528,993 |
2020年 | 526,787 |
2019年 | 525,142 |
2018年 | 520,626 |
2017年 | 516,849 |
2016年 | 512,936 |
2015年 | 508,961 |
2014年 | 505,000 |
2013年 | 500,000 |
2012年 | 500,000 |
2011年 | 500,000 |
2010年 | 495,000 |
2009年 | 490,000 |
2008年 | 485,000 |
2007年 | 480,000 |
2006年 | 470,000 |
2005年 | 465,000 |
2004年 | 460,000 |
2003年 | 455,000 |
2002年 | 458,000 |
2001年 | 455,000 |
2000年 | 450,000 |
1999年 | 446,338 |
1998年 | 410,000 |
1997年 | 390,000 |
1996年 | 370,000 |
1995年 | 350,000 |
1994年 | 335,000 |
1993年 | 335,000 |
1992年 | 330,000 |
1991年 | 330,000 |
1990年 | 320,000 |
1989年 | 310,000 |
1988年 | 300,000 |
1987年 | 290,000 |
1986年 | 285,000 |
1985年 | 280,000 |
1984年 | 275,239 |
1983年 | 174,800 |
1982年 | 85,037 |
1981年 | 164,500 |
1980年 | 159,600 |
1979年 | 154,800 |
1978年 | 150,200 |
1977年 | 145,700 |
1976年 | 141,400 |
1975年 | 137,200 |
1974年 | 133,100 |
1973年 | 129,100 |
1972年 | 125,200 |
1971年 | 121,450 |
1970年 | 117,800 |
1969年 | 114,300 |
1968年 | 110,900 |
1967年 | 107,600 |
1966年 | 104,400 |
1965年 | 100,000 |
1964年 | 100,000 |
1963年 | 97,000 |
1962年 | 95,000 |
1961年 | 93,000 |
タンザニアの豚飼育数は1960年代から比較的安定した増加を記録しており、当初の年間1%から2%の緩やかな成長が、1980年代に急激な増加に転じました。この期間の中で特に注目すべきは、1982年から1984年にかけて飼育数が約2倍に増加した現象です。この急激な増加は農業技術の普及、農村部の所得向上、ならびに政府主導型の家畜育成促進政策の影響によるものと考えられます。このような背景の中で、豚の飼育が地域経済における重要な収入源となり、特に小規模農家や農村コミュニティの生活を支える基盤となっています。
しかし、1990年代以降のデータを見ると、増加のペースは幾分穏やかになっており、2000年以降では年率1%以下の緩慢な上昇にとどまる年が多くなっています。この要因のひとつとして、市場需要の拡大が追いつかないことや、飼育環境の持続可能性が強く影響している可能性が挙げられます。この地域では豚肉の消費需要はまだそれほど高くなく、国際輸出も限定的です。そのため、飼育業者は市場拡大のための戦略的な努力を必要としています。
また、タンザニアでは疫病が豚の健康に影響を与えるリスクがあることが知られています。過去にはアフリカ豚熱(ASF)などの流行が一部地域で発生しており、これが一時的に飼育数の増加を制限する要因になっています。特に、飼育技術の改善が遅れた地域では、衛生管理の不足やワクチン供給の制限が問題となっています。
一方で、地政学的背景を考慮すると、周辺諸国との食糧市場の連携強化、豚肉製品の輸出促進が経済発展に寄与する可能性があります。現在のところ、地域間での食料供給は自己完結型であることが多く、国際市場に参加している食品供給システムは脆弱です。この状況を改善するためには、効率的な輸送インフラの整備、共同市場制度の確立、および家畜飼育における統一的な規制基準の策定が必要です。
未来に向けた具体的な提言としては、第一に農家へ高品質な飼料を供給する体制の整備が挙げられます。これは豚の成育を促し、病気に対する耐性を強化することができます。第二に、疫病対策を強化するために予防接種および検疫インフラの拡張が重要です。また、技術革新の一環として、デジタル農業技術(IoT対応の豚飼育モニタリング)などを導入し、生産効率を向上させることも検討すべきです。
これらの対策と並行して、豚肉産業の付加価値を高めるための加工品製造やブランド化も重要です。日本のような高度に発展した畜産国では、豚肉の付加価値製品(例えばハムやソーセージなど)で市場の競争力を高めています。タンザニアにおいても同様の取り組みを行うことで、豚飼育業の収益をさらに向上させることができるでしょう。
以上のことから、タンザニアの豚飼育数の持続的増加傾向を維持するためには、地域の特性に適した持続可能な経営モデルを構築することが鍵となります。また、国家戦略としてこの分野を強化することは、農村の貧困削減や食料安全保障の向上に直接的に寄与する可能性があります。その一環として、民間企業、政府、国際機関が共同で取り組む長期的なイニシアチブが必要不可欠です。