イギリスのオート麦生産量推移（1961年～2023年）

出典： Food and Agriculture Organization「国際連合食糧農業機関」

国際連合食糧農業機関（FAO）が発表した最新データによると、イギリスのオート麦生産量は、1961年の1,861,506トンから2023年の830,000トンまで推移しています。この期間で生産量は大きな減少を経験しましたが、近年ではある程度の回復傾向を示しています。一方で、年によって生産量が変動しており、不安定さが特徴と言えます。特に1970年代から1980年代にかけて顕著な減少を経験し、その後の生産量は50万～100万トン台で推移してきました。2019年以降は一時的に増加しましたが、2023年は再び減少に転じました。

年度	生産量(トン)	増減率
2023年	830,000	-25.02% ↓
2022年	1,107,000	-1.42% ↓
2021年	1,123,000	8.92% ↑
2020年	1,031,000	-4.18% ↓
2019年	1,076,000	26.59% ↑
2018年	850,000	-2.86% ↓
2017年	875,000	7.23% ↑
2016年	816,000	2.13% ↑
2015年	799,000	-2.56% ↓
2014年	819,985	-14.9% ↓
2013年	963,563	53.67% ↑
2012年	627,045	2.23% ↑
2011年	613,369	-10.5% ↓
2010年	685,310	-7.94% ↓
2009年	744,417	-5% ↓
2008年	783,574	10.1% ↑
2007年	711,696	-2.21% ↓
2006年	727,763	37.7% ↑
2005年	528,500	-15.57% ↓
2004年	625,971	-16.38% ↓
2003年	748,590	-0.63% ↓
2002年	753,344	21.34% ↑
2001年	620,839	-2.98% ↓
2000年	639,915	18.32% ↑
1999年	540,830	-7.71% ↓
1998年	586,000	1.56% ↑
1997年	577,000	-2.2% ↓
1996年	590,000	-4.34% ↓
1995年	616,764	3.27% ↑
1994年	597,242	24.55% ↑
1993年	479,519	-4.49% ↓
1992年	502,075	-3.59% ↓
1991年	520,780	-1.74% ↓
1990年	530,000	0.18% ↑
1989年	529,065	-3.46% ↓
1988年	548,000	21.78% ↑
1987年	450,000	-10.54% ↓
1986年	503,000	-18.08% ↓
1985年	614,000	18.76% ↑
1984年	517,000	10.94% ↑
1983年	466,000	-18.96% ↓
1982年	575,000	-7.26% ↓
1981年	620,000	3.33% ↑
1980年	600,000	10.7% ↑
1979年	542,000	-23.12% ↓
1978年	705,000	-10.76% ↓
1977年	790,000	3.4% ↑
1976年	764,000	-3.9% ↓
1975年	795,000	-16.75% ↓
1974年	955,000	-11.9% ↓
1973年	1,084,000	-13.56% ↓
1972年	1,254,000	-8.06% ↓
1971年	1,363,912	11.62% ↑
1970年	1,221,877	-7% ↓
1969年	1,313,893	6.79% ↑
1968年	1,230,401	-11.68% ↓
1967年	1,393,112	23.6% ↑
1966年	1,127,112	-9.13% ↓
1965年	1,240,382	-8.44% ↓
1964年	1,354,738	-7.91% ↓
1963年	1,471,160	-17.21% ↓
1962年	1,777,047	-4.54% ↓
1961年	1,861,506	-

イギリスにおけるオート麦生産量の推移は、農業政策や経済状況、さらには気候変動の影響を反映する重要なデータです。1961年には約186万トンを記録し、その時期の生産量は比較的高水準にありました。しかし、1970年代中頃から1980年代にかけて生産量は著しい減少を見せ、1983年には生産量が過去最低の46.6万トンまで低下しました。主な原因として、この時期の農業政策の変化、農作物の多様化、そして市場での需要の減少が挙げられます。また、気象条件や国際競争力の低下なども影響したと考えられます。

1990年代以降、オート麦の生産量は50万～60万トン前後で安定的に推移していましたが、一部の年には回復の兆しが見られました。例えば、2000年代初頭の頃、2002年には生産量が75.3万トンまで伸びています。この時期の回復は、健康志向の高まりに伴う穀物需要の増加と、それに合わせた政策上の支援によるものと考えられます。

2010年代以降には、特定年の生産量が顕著に増加する傾向が見られました。2013年には約96.4万トンを記録し、その後の2019年には107.6万トンと大幅な増産を遂げました。しかし、これは長期的な成長ではなく、一部の年における天候条件や市場の状況に大きく左右された一時的な結果と考えられます。2023年の生産量は再び減少し、83万トンに留まりました。この減少は、気候変動に伴う異常気象や、農地利用の変化、ならびに生産コストや市場競争の影響を受けた可能性があります。

イギリスのオート麦生産は他国とも比較可能です。例えば、オート麦は北ヨーロッパ諸国、特にドイツやスウェーデンで競争力が高い穀物です。これらの国々では広大な農地や高い効率の農業技術が生産量の維持に貢献しています。一方で、イギリスにおいては農地や資金の利用が必ずしも効率的とは言えないことが、国際的な競争力に影響を及ぼしていると考えられます。

地政学的リスクや気候変動も無視できない要因です。異常気象や土壌の品質低下、さらにはエネルギー価格や物流問題などが、今後のオート麦生産を阻む要因となるでしょう。また、ロシア・ウクライナ紛争が国際的な農作物市場に与える影響も軽視できません。これらの状況は、農家の利潤構造や政策的インセンティブにも影響を与えています。

今後の課題として、まず1つは持続可能で競争力のある農業構造への転換です。具体的には、気候条件に適応した作物の品種改良や、生産効率を高める技術の導入が必要です。また、消費者の健康志向が高まっていることを踏まえ、オート麦を含む穀物の高付加価値化も促進すべきです。さらに、農家が安定した利益を得られるよう、政府の支援や補助金政策の改善が重要となります。他国との競争にも対応するため、輸出促進や生産者同士の協力体制を強化することも一案です。

結論として、イギリスのオート麦生産は長年にわたり減少と回復を繰り返してきたものの、国際的な競争力や持続可能性の課題を抱えています。これを克服するためには、農業技術の革新や政策的な支援が欠かせません。同時に、地政学的な影響や市場の変化に柔軟に対応できる基盤づくりが求められています。このような努力が、イギリスのオート麦生産を再び安定的かつ高い水準に導いていく可能性を秘めています。