Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が提供した最新データによると、1961年から2022年にかけてイギリスの天然蜂蜜生産量は大きな変動を見せています。特に2000年代以降は生産量が大幅に増加し、2022年には過去最高値である9,923トンを記録しました。長期的に見ると、生産量は徐々に増加基調にありますが、1970年代や1980年代には一時的な減少が見られました。
イギリスの天然蜂蜜生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 9,923 |
2021年 | 9,668 |
2020年 | 9,430 |
2019年 | 9,296 |
2018年 | 9,065 |
2017年 | 8,977 |
2016年 | 8,861 |
2015年 | 9,181 |
2014年 | 8,827 |
2013年 | 8,575 |
2012年 | 8,288 |
2011年 | 8,002 |
2010年 | 7,715 |
2009年 | 7,362 |
2008年 | 7,194 |
2007年 | 7,200 |
2006年 | 7,000 |
2005年 | 5,857 |
2004年 | 5,000 |
2003年 | 7,000 |
2002年 | 5,000 |
2001年 | 3,000 |
2000年 | 2,870 |
1999年 | 4,100 |
1998年 | 4,100 |
1997年 | 4,100 |
1996年 | 3,700 |
1995年 | 3,509 |
1994年 | 3,311 |
1993年 | 3,290 |
1992年 | 3,175 |
1991年 | 3,063 |
1990年 | 3,000 |
1989年 | 3,000 |
1988年 | 3,000 |
1987年 | 3,000 |
1986年 | 3,000 |
1985年 | 3,000 |
1984年 | 3,000 |
1983年 | 3,000 |
1982年 | 3,000 |
1981年 | 3,000 |
1980年 | 2,000 |
1979年 | 3,000 |
1978年 | 2,000 |
1977年 | 2,340 |
1976年 | 1,760 |
1975年 | 2,875 |
1974年 | 2,060 |
1973年 | 2,540 |
1972年 | 1,524 |
1971年 | 3,050 |
1970年 | 3,050 |
1969年 | 3,050 |
1968年 | 3,050 |
1967年 | 3,048 |
1966年 | 3,087 |
1965年 | 3,050 |
1964年 | 3,050 |
1963年 | 3,050 |
1962年 | 3,050 |
1961年 | 3,050 |
イギリスの天然蜂蜜生産量の推移を確認すると、1961年からほぼ一定水準の生産量が維持されていましたが、1972年から1980年代には大きな変動を伴いながら、一般的には減少傾向が見られました。この時期の変動には、イギリス国内の気象条件の変化や農業政策、養蜂業の管理体制の変化が影響を及ぼした可能性があります。例えば、1976年の生産量が1,760トンと急落したのは、気候異常である「1976年の干ばつ」が大きな影響を与えたと考えられます。このような自然要因により、蜜蜂の生息環境や蜜源植物の減少が生産量低下の要因となっている可能性があります。
1990年代に入ると、生産量は年間平均3,000トンをやや超える水準で安定していました。しかし、2000年代には状況が一変します。2002年に5,000トン、さらに2007年には7,200トンを記録し、生産量が急増しています。そして2011年以降、イギリスの蜂蜜生産量は8,000トンを超える水準に達し、安定的な成長を見せています。この継続的な増加のおもな背景として、養蜂技術の進歩、養蜂産業への政策的支援、また環境保全活動が相対的に進んだことなどが考えられます。
2020年から2022年の最新データでは、さらなる増加が見られ、2022年には9,923トンと過去最高を記録しました。この時期、世界的に新型コロナウイルスの影響がありましたが、外出制限などが緑地環境を取り戻す結果となり、蜜源植物の影響で生産が促進された可能性があります。一方で、農薬や病害虫、気候変動の影響は依然として課題となっています。
イギリス国内の蜂蜜生産量の増加を成功と見なす一方で、一部の地域では蜜蜂を取り巻く生態系への脅威が深刻化しています。温暖化による気候変動のほか、病原菌や寄生虫(例:バロアダニ)への対策が重要となります。また、農業用の化学薬品の利用や都市化により花粉源となる植物が減少することも、生産量全体のバランスを崩しかねません。
他国の状況と比較すると、例えば中国やインドのように生産量が膨大な国々とは異なり、イギリスの生産量は依然として自国消費を中心に据えた規模にとどまっています。また、フランスやドイツといったヨーロッパの主要国と比較しても、イギリスの増加傾向はまた興味深い例と言えるでしょう。これは、国内外双方で持続可能な養蜂が発展しつつあることを示しているかもしれません。
今後の課題としては、気候変動に適応した蜜蜂の飼育方法を確立することが挙げられます。また、多様な蜜源植物の育成や都市部での養蜂活動の推進も重要となります。EU離脱後の農業政策再編の中で養蜂業への支援を拡大すること、そして新型病害への研究投資の強化が必要です。国際的な養蜂業者との連携を進めることも、政策的には有効です。
結論として、イギリスの天然蜂蜜生産量は近年順調に成長を遂げており、2022年には過去最高の生産量に達しました。ただし、これを単なる上昇傾向と捉えるのではなく、気象条件や環境政策が生産量に与える影響を精査することが、今後の持続可能な蜂蜜生産に向けて重要不可欠です。国や国際機関は、養蜂業の発展に向け、科学技術の導入や政策的支援をさらに進めていくべきです。