国際連合食糧農業機関(FAO)が2024年7月に公開した最新データによると、イギリスのキャベツ生産量は、1960年代から2020年代までの60年以上にわたり、長期的な減少傾向を示しています。1961年は約78万トンと高水準であったものの、2022年には約18万トンにまで落ち込みました。この大幅な減少は、農業政策、経済的要因、気候変動、生産コストの増加など、複合的な要因がからんだ結果と考えられます。
イギリスのキャベツ生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 183,005 |
2021年 | 200,011 |
2020年 | 211,065 |
2019年 | 192,298 |
2018年 | 214,818 |
2017年 | 275,522 |
2016年 | 283,071 |
2015年 | 332,317 |
2014年 | 283,000 |
2013年 | 271,400 |
2012年 | 267,800 |
2011年 | 281,300 |
2010年 | 291,700 |
2009年 | 277,500 |
2008年 | 279,100 |
2007年 | 258,600 |
2006年 | 305,800 |
2005年 | 309,400 |
2004年 | 267,000 |
2003年 | 285,000 |
2002年 | 286,700 |
2001年 | 336,900 |
2000年 | 321,500 |
1999年 | 347,600 |
1998年 | 356,800 |
1997年 | 387,300 |
1996年 | 434,000 |
1995年 | 419,000 |
1994年 | 508,000 |
1993年 | 479,000 |
1992年 | 517,000 |
1991年 | 485,000 |
1990年 | 493,000 |
1989年 | 584,000 |
1988年 | 611,000 |
1987年 | 615,000 |
1986年 | 605,000 |
1985年 | 682,700 |
1984年 | 839,600 |
1983年 | 672,600 |
1982年 | 832,700 |
1981年 | 743,800 |
1980年 | 814,700 |
1979年 | 830,100 |
1978年 | 804,500 |
1977年 | 1,009,400 |
1976年 | 630,100 |
1975年 | 732,800 |
1974年 | 823,500 |
1973年 | 745,273 |
1972年 | 837,530 |
1971年 | 875,022 |
1970年 | 959,050 |
1969年 | 942,996 |
1968年 | 838,952 |
1967年 | 814,872 |
1966年 | 830,113 |
1965年 | 796,583 |
1964年 | 734,604 |
1963年 | 881,931 |
1962年 | 703,107 |
1961年 | 780,326 |
イギリスのキャベツ生産量のデータを振り返ると、1960年代から1970年代には比較的安定した生産量が見られました。この期間の生産量は約70万トンから100万トンの範囲で推移し、1977年に記録された約101万トンが過去最高値でした。しかし、1980年代以降からは一貫して減少が見られ、1990年代から2000年代にさらに顕著になりました。2022年の生産量は約18万トンとなり、ピーク時の1977年と比較して約82%もの減少となっています。
この長期的な減少の背景としては、いくつかの要因が挙げられます。まず、イギリス国内で農地面積の縮小が進行している点が大きなポイントです。都市化の加速と、それに伴う農業から他の産業への転換が進む中で、キャベツのような伝統的な野菜の栽培面積が減少しています。さらに、労働コストの高騰や、農業の自動化が進む中でも管理の難しい作物である点が、キャベツ栽培を減少させた一因と考えられます。
加えて、近年では気候変動の影響も重要な要素となっています。特に、2010年以降の頻発する極端な気象条件、例えば熱波や降水量の変化は、露地栽培のキャベツの生育に大きな影響を及ぼしました。また、EU離脱以降の政策転換や貿易条件の変化も、農家の収益性確保に負担をかけている点が指摘されています。キャベツは伝統的にイギリス国内需要を満たす主要な作物の一つでしたが、近年では需要が輸入農産物で補われるケースが増えています。
現状を踏まえると、今後もキャベツ生産量が回復する可能性は低いと予測されます。これは国内消費行動の変化や、農業労働者不足の問題、ならびに生産時の需給調整が困難であることなどが理由として挙げられます。ただし、この状況に対して解決策を講じることは可能です。たとえば、地域農家への補助金や技術支援を強化することで、生産コストを下げ、農業の持続可能性を高めることが期待されます。また、現代の農業には、デジタル農業技術や精密農業の導入が効果的です。天候予測技術を活用し、地元の作物スケジュールを最適化することにより、気候リスクに対応する柔軟性が得られるでしょう。
さらに、市場においてキャベツを含む地場産野菜の需要を高めるキャンペーンも有効です。国内産野菜の健康効果や、地元支援につながる消費行動を促進することで、安定的な生産サイクルを構築できる可能性があります。
国際的な視点では、イギリスだけでなく、他の欧州諸国も、野菜生産量の変動が気候変動や政策影響を受けている共通の課題を抱えています。たとえば、フランスやドイツも似たような環境問題に直面しており、地域間での協力体制が必要です。特に、地域内での種苗改良や、気候変動適応作物の開発について共同研究を進めるべきでしょう。
結論として、イギリスのキャベツ生産量の減少は短期的な現象ではなく、長期的かつ構造的な問題であることがデータから明らかです。これに対応するためには、農業政策の見直し、地元農業支援の強化、技術的革新、そして地域市場での競争力向上といった具体的な方策が不可欠です。国際連携を通じた知識共有と協力も今後の重要な鍵となるでしょう。