Skip to main content

イギリスのヤギ飼養頭数推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによれば、イギリスのヤギ飼養頭数は1990年代から全体的に減少傾向を示していましたが、2000年代中頃以降から徐々に持ち直し、2018年以降は10万頭を超える水準で安定しています。2022年には11万1,000頭と、近年のピーク時の水準を維持しています。

年度 飼養頭数(頭) 増減率
2023年 111,000 -
2022年 111,000 -
2021年 111,000
-0.89% ↓
2020年 112,000
0.9% ↑
2019年 111,000
6.73% ↑
2018年 104,000 -
2017年 104,000 -
2016年 104,000
2.97% ↑
2015年 101,000
1% ↑
2014年 100,000
2.04% ↑
2013年 98,000 -
2012年 98,000
4.26% ↑
2011年 94,000
1.08% ↑
2010年 93,000
5.68% ↑
2009年 88,000
-4.35% ↓
2008年 92,000
-3.16% ↓
2007年 95,000
-3.06% ↓
2006年 98,000
6.52% ↑
2005年 92,000
3.37% ↑
2004年 89,000
-4.69% ↓
2003年 93,380
24.87% ↑
2002年 74,784
-1.88% ↓
2001年 76,218
-1.23% ↓
2000年 77,164
-3.94% ↓
1999年 80,329
5.01% ↑
1998年 76,500
-5.03% ↓
1997年 80,550
-10.1% ↓
1996年 89,600 -
1995年 89,600
-7.62% ↓
1994年 96,990
-6.74% ↓
1993年 104,000
-0.95% ↓
1992年 105,000
-7.08% ↓
1991年 113,000
-0.88% ↓
1990年 114,000 -

FAOのデータによると、イギリスのヤギ飼養頭数は、1990年代初頭の約11万4,000頭から一貫して減少し、1998年には7万6,500頭まで落ち込みました。この急激な減少には、農業経済の構造変化や、イギリスの畜産業全体での効率化が大きく関与していると考えられます。特に、1990年代半ばから後半にかけてのマースク病(狂牛病)や口蹄疫の影響が、ヤギを含む家畜全般に対する需要や飼養条件に影響を与えた可能性があります。

2000年代に入ると、ヤギ飼養頭数は一旦停滞し、数量の変動が年ごとに見られました。しかし、2003年には9万3,380頭まで急増しており、これはおそらく市場需要の回復や飼育環境の改善による一時的な増加と解釈できます。その後も波のある推移が続きましたが、2012年以降は増加傾向が見られ、2018年以降は10万頭を安定して超える状況が続いています。

イギリス国内でのヤギの利用は、乳製品や肉用の需要が中心です。特に、ヤギ乳から作られる製品は健康志向の高まりとともに、特定の消費者層での人気が高まっています。また、文化的背景の異なる移民の増加により、羊肉やヤギ肉の需要が一定の水準を保っていることも、この安定した飼養頭数を支える背景と考えられます。

一方で、地政学的リスクや環境変化が、産業全体に大きな影響を与える可能性も考慮する必要があります。例えば、イギリスのEU離脱(ブレグジット)は、農業補助金や貿易条件などに影響を与え、ヤギを含む畜産農家の経済的安定に脅威を与える構造的リスクとなり得ます。また、気候変動による天候の変化や、餌料価格の変動が飼育コストに大きく影響するため、持続可能な生産体制の構築が課題となります。

今後、イギリス国内で安定した飼養を続けるためには、いくつかの具体的な施策が必要です。例えば、国内外市場における乳製品やヤギ肉の需要を詳しく分析し、それに即した生産と流通体制を構築することが重要です。また、餌料の効率的な利用や飼育過程での環境負荷低減を重視した技術革新を支援する政策が求められます。さらに、移民社会の影響を活用し、多様な需要を吸収し得る柔軟な市場戦略と生産方法を取り入れることも効果的でしょう。

結論として、イギリスのヤギ飼養頭数は1990年代の減少から回復を見せ、安定的な水準に達していますが、長期的な視点では多様なリスクと課題への対応が求められる状況です。これに対しては、国レベルでの市場分析と農業補助の充実、そして持続可能性を考慮した技術的支援による基盤強化が鍵となります。国際機関や諸外国との協力も見据えた包括的な政策が必要です。