Skip to main content

イギリスのナシ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、イギリスのナシ生産量は1960年代から現在まで大きな変動を見せながら減少傾向にあります。1960年代には最大76,000トンという高い生産量を記録しましたが、近年の2023年では約15,515トンと大幅に減少しています。特に2000年代以降、明確な低下傾向が見られ、2020年以降はその減少がさらに顕著です。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 15,515
-13.19% ↓
2022年 17,872
-7.25% ↓
2021年 19,270
-22.96% ↓
2020年 25,011
-8.74% ↓
2019年 27,406
3.13% ↑
2018年 26,573
-0.2% ↓
2017年 26,625
10.94% ↑
2016年 24,000
-9.43% ↓
2015年 26,500
2.4% ↑
2014年 25,880
14.36% ↑
2013年 22,630
-11.64% ↓
2012年 25,610
-20.56% ↓
2011年 32,240
-1.71% ↓
2010年 32,800
60% ↑
2009年 20,500
3.54% ↑
2008年 19,800
-4.08% ↓
2007年 20,643
-27.31% ↓
2006年 28,400
21.37% ↑
2005年 23,400
3.08% ↑
2004年 22,700
-23.31% ↓
2003年 29,600
-13.45% ↓
2002年 34,200
-11.17% ↓
2001年 38,500
44.74% ↑
2000年 26,600
17.18% ↑
1999年 22,700
-13.69% ↓
1998年 26,300
-20.3% ↓
1997年 33,000
-17.71% ↓
1996年 40,100
4.43% ↑
1995年 38,400
53.6% ↑
1994年 25,000
-42.79% ↓
1993年 43,700
69.38% ↑
1992年 25,800
-32.32% ↓
1991年 38,123
3.82% ↑
1990年 36,719
-14.81% ↓
1989年 43,104
33.45% ↑
1988年 32,300
-50.99% ↓
1987年 65,900
41.23% ↑
1986年 46,663
-7.9% ↓
1985年 50,667
5.34% ↑
1984年 48,100
-10.93% ↓
1983年 54,000
33.66% ↑
1982年 40,400
-17.89% ↓
1981年 49,200
12.07% ↑
1980年 43,900
-39.61% ↓
1979年 72,700
173.31% ↑
1978年 26,600
-26.11% ↓
1977年 36,000
-41.84% ↓
1976年 61,900
125.91% ↑
1975年 27,400
-48.79% ↓
1974年 53,500
16.75% ↑
1973年 45,824
-12.43% ↓
1972年 52,327
-28.32% ↓
1971年 73,000
-3.95% ↓
1970年 76,000
26.14% ↑
1969年 60,250
-20.72% ↓
1968年 76,000
375% ↑
1967年 16,000
-58.97% ↓
1966年 39,000
-41.79% ↓
1965年 67,000
-2.9% ↓
1964年 69,000
4.55% ↑
1963年 66,000
10% ↑
1962年 60,000
13.21% ↑
1961年 53,000 -

イギリスのナシ生産量は1960年代において、最高生産量が76,000トンに達し、農業生産の安定が見られる時期がありました。しかし、その後1970年代に入ってから急激な減少と回復を繰り返しながらも、長期的には減少傾向へと転じています。この変動の背景には、気候変動、農業技術の転換、市場需要の変化など複数の要因が絡んでいます。例えば1967年の16,000トンという生産量の急落は、気候が極端に冷涼化した影響が大きかったと考えられています。また、これに続く経済状況や農業政策の影響により、生産量のばらつきが拡大したと言えるでしょう。

2000年代以降になると、生産量は20,000トン台に収まる低水準が定着しており、この期間はイギリス国内のナシ生産が長期的な縮小基調にあることを明確に示しています。この減少は、まず第一に気候変動、とりわけ温暖化と極端な気候条件が影響していると考えられます。特に2012年以降、記録的な豪雨や気温の不規則な変化により生産量はさらに減少を続けています。また、近年は競争の激しい国際市場に押される形で、輸入ナシに頼る傾向が顕著になったことも国内生産量の停滞を促している可能性があります。2023年にはわずか15,515トンまで減少し、この半世紀で最低水準となっています。

その他の地政学的な背景も、この傾向を後押ししています。たとえば、「Brexit(英国のEU離脱)」は農業分野、とりわけ果実生産においても影響を及ぼしました。EU内での貿易条件が変わったため、特に外国からの労働力不足が深刻化し、農業分野全体の生産効率低下を招いています。加えて、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱は輸入果物の価格を引き上げた一方で、国内での農業投資環境も悪化させました。

イギリスのナシ生産を持続可能な形で復興させるためには、まず国内農業の競争力を高める必要があります。一つの具体的な対策として、気候変動に適応可能な品種の導入や、気象リスクを軽減する栽培技術の開発が有効です。たとえば、ナシの栽培に適した気温や降雨条件を人工的に整えるための温室効果ガスを削減する温室農法の推進が考えられます。また、農業従事者の確保や近代的な機械の導入には、政府の補助金制度や教育プログラムの拡充が求められるでしょう。さらに、EUを含む国際市場と再び協力態勢を構築し、英国産ナシの輸出拡大を目指すことも重要です。

結論として、イギリスのナシ生産量の低下は、気候、経済、政策、地政学的な要因が複合的に影響を及ぼした結果であり、今後も放置すればさらなる縮小が見込まれます。しかしながら、適切な農業技術革新と政策支援の実行、国際的な協力の回復により、同国の果物部門全体が持続可能性を取り戻すチャンスがあります。国際的な専門家や先進農業国との連携も含め、これらの課題を包括的に解決するための行動を急ぐことが求められています。