国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによると、イギリスのキュウリ類の生産量は1961年の32,514トンから始まり、1990年代初頭までは増加傾向が続きました。1992年にはピークの115,424トンに達しましたが、その後は下降傾向が続き、特に2000年代から生産量が著しく減少しました。2023年には46,479トンとなり、過去50年以上で最低水準に近い値を記録しました。この推移は、国内農業の持続可能性や地政学的な影響を含む複雑な要因に起因している可能性があります。
イギリスのキュウリ類生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 46,479 |
3.29% ↑
|
2022年 | 45,000 |
-18.17% ↓
|
2021年 | 54,992 |
-5.85% ↓
|
2020年 | 58,410 |
0.29% ↑
|
2019年 | 58,240 |
5.74% ↑
|
2018年 | 55,080 |
3.99% ↑
|
2017年 | 52,968 |
0.01% ↑
|
2016年 | 52,965 |
-1.18% ↓
|
2015年 | 53,600 |
-5.13% ↓
|
2014年 | 56,500 |
-2.42% ↓
|
2013年 | 57,900 |
-8.53% ↓
|
2012年 | 63,300 |
-4.81% ↓
|
2011年 | 66,500 |
2.94% ↑
|
2010年 | 64,600 |
11.96% ↑
|
2009年 | 57,700 |
17.94% ↑
|
2008年 | 48,925 |
-0.96% ↓
|
2007年 | 49,400 |
-12.57% ↓
|
2006年 | 56,500 |
-5.68% ↓
|
2005年 | 59,900 |
-2.44% ↓
|
2004年 | 61,400 |
-20.26% ↓
|
2003年 | 77,000 |
4.62% ↑
|
2002年 | 73,600 |
2.94% ↑
|
2001年 | 71,500 |
-10.4% ↓
|
2000年 | 79,800 |
-5% ↓
|
1999年 | 84,000 | - |
1998年 | 84,000 |
2.44% ↑
|
1997年 | 82,000 |
-4.21% ↓
|
1996年 | 85,600 |
-4.57% ↓
|
1995年 | 89,700 |
-19.19% ↓
|
1994年 | 111,000 |
2.16% ↑
|
1993年 | 108,655 |
-5.86% ↓
|
1992年 | 115,424 |
6.48% ↑
|
1991年 | 108,398 |
3.22% ↑
|
1990年 | 105,021 |
20.03% ↑
|
1989年 | 87,495 |
0.8% ↑
|
1988年 | 86,800 |
9.87% ↑
|
1987年 | 79,000 |
4.3% ↑
|
1986年 | 75,742 |
6.37% ↑
|
1985年 | 71,209 |
5.36% ↑
|
1984年 | 67,589 |
11.53% ↑
|
1983年 | 60,600 |
8.8% ↑
|
1982年 | 55,700 |
3.15% ↑
|
1981年 | 54,000 |
-4.93% ↓
|
1980年 | 56,800 |
8.19% ↑
|
1979年 | 52,500 |
-10.1% ↓
|
1978年 | 58,400 |
11.88% ↑
|
1977年 | 52,200 |
0.38% ↑
|
1976年 | 52,000 |
10.87% ↑
|
1975年 | 46,900 |
9.58% ↑
|
1974年 | 42,800 |
32.88% ↑
|
1973年 | 32,209 |
-12.67% ↓
|
1972年 | 36,883 |
-5.96% ↓
|
1971年 | 39,220 |
16.27% ↑
|
1970年 | 33,733 |
10.67% ↑
|
1969年 | 30,482 |
2.74% ↑
|
1968年 | 29,669 |
-5.81% ↓
|
1967年 | 31,498 |
2.99% ↑
|
1966年 | 30,583 |
-8.79% ↓
|
1965年 | 33,530 |
10% ↑
|
1964年 | 30,482 |
-6.25% ↓
|
1963年 | 32,514 | - |
1962年 | 32,514 | - |
1961年 | 32,514 | - |
イギリスのキュウリ類の生産量は、1961年から2023年までの期間で劇的な推移を示しました。その初期段階(1960年代)はおおよそ3万トン台で推移していましたが、1970年代後半以降、特に1980年代にかけて急激な増加を見せました。この背景には、農業技術の進歩や産業政策の影響が考えられます。1980年代後半から1990年代初頭にかけては8~10万トン台という安定期に達し、1992年には史上最高の115,424トンを記録しました。この高生産量は、当時の国内外市場の需要の高まりや、農業支援政策の恩恵によるものと考えられます。
しかしながら、1990年代半ば以降、キュウリ類の生産量は減少に転じていきました。この減少にはいくつかの要因が絡んでいます。まず、イギリス国内の農業従事者の減少や、高齢化にともなう生産基盤の弱体化が挙げられます。また、EU(欧州連合)の農業政策変更による補助金減少や、より安価な輸入野菜の増加も国内生産量に影響を及ぼしていると考えられます。特に、1995年以降の急激な減少は、国内市場への輸入品の流入が拍車をかけたものと推測されます。さらに地球温暖化の影響による気候変動や、自然災害の影響も農作物の収穫に負の影響を与えた可能性があります。
2000年以降は、減少傾向が顕著となり、2023年にはわずか46,479トンにとどまりました。この時点での生産量は、1992年のピーク値の約40%に過ぎません。特に直近の2022年と2023年の値を比較しても、大幅な減産が確認されます。この減少の一因として、新型コロナウイルスのパンデミックが挙げられ、これにより農業労働力の不足や供給チェーンの混乱が生じました。また、2022年にはエネルギー価格の高騰が温室栽培のコストを押し上げ、生産量に直接的な影響を与えたと考えられます。
このデータから読み取れる課題として、持続可能な食糧生産をどのように確保するかが挙げられます。国内のキュウリ類生産を安定化させるためには、まず、農業分野への若い世代の参入を促進し、労働力不足の解消を図る必要があります。そのためには、技能訓練プログラムの充実や、農業を経済的に魅力のある職業にするためのインセンティブ政策が有効でしょう。また、温室栽培技術の高度化やエネルギー効率の改善も重要な課題です。一例として、再生可能エネルギーを活用した温室の導入や、スマート農業技術を有効活用することで、効率的な生産体制の構築が見込めます。
さらに地政学的背景では、ブレグジットに伴うEUとの貿易関係の見直しが国内農業に新たな挑戦を促しました。関税や規制の変化により、輸入品と自国産品の競争環境が厳しくなったことが懸念されています。一方で、この状況をチャンスと捉え、地元消費者に自国産品の購入を促進する取り組みも必要不可欠です。具体例として、地元市場の強化やサプライチェーンの短縮が考えられます。
結論として、イギリスのキュウリ類生産量は過去数十年で増減を繰り返し、近年は国内外の経済的、地政学的要因によって一家大幅な減少期に突入しています。将来の安定した生産体制を構築するためには、多様な分野での政策策定と実行が求められています。この点において、国際機関や近隣諸国との協力も重要な鍵となるでしょう。