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イギリスの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イギリスの羊肉生産量は1961年の268,190トンから一貫して増減を繰り返しており、1990年代に最も高い数値に達しました。その後、2001年の大きな減少を経て、2005年以降はおおむね安定した水準を保ちながら推移しています。2023年の生産量は286,000トンで、近年はやや減少傾向を示しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 286,000
-1.72% ↓
2022年 291,000
2.83% ↑
2021年 283,000
-4.39% ↓
2020年 296,000
-3.58% ↓
2019年 307,000
6.23% ↑
2018年 289,000
-3.34% ↓
2017年 299,000
2.75% ↑
2016年 291,000
-3.64% ↓
2015年 302,000
1.34% ↑
2014年 298,000
3.11% ↑
2013年 289,000
5.09% ↑
2012年 275,000
-8.55% ↓
2011年 300,700
4.85% ↑
2010年 286,800
-8.4% ↓
2009年 313,100
-5.58% ↓
2008年 331,600
0.64% ↑
2007年 329,500
-1.2% ↓
2006年 333,500
0.76% ↑
2005年 331,000
6.09% ↑
2004年 312,000
2.97% ↑
2003年 303,000
-1.3% ↓
2002年 307,000
14.98% ↑
2001年 267,000
-30.29% ↓
2000年 383,000
-2.3% ↓
1999年 392,000
4.53% ↑
1998年 375,000
9.65% ↑
1997年 342,000
-8.31% ↓
1996年 373,000
-5.33% ↓
1995年 394,000
-0.25% ↓
1994年 395,000
-1.74% ↓
1993年 402,000
0.25% ↑
1992年 401,000
4.03% ↑
1991年 385,461
4.12% ↑
1990年 370,226
1.12% ↑
1989年 366,109
13.72% ↑
1988年 321,940
8.88% ↑
1987年 295,694
2.12% ↑
1986年 289,544
-4.76% ↓
1985年 304,000
5.56% ↑
1984年 288,000
0.35% ↑
1983年 287,000
8.71% ↑
1982年 264,000
1.93% ↑
1981年 259,000
-6.5% ↓
1980年 277,000
19.91% ↑
1979年 231,000
1.54% ↑
1978年 227,500
2.02% ↑
1977年 223,000
-9.02% ↓
1976年 245,100
-5.37% ↓
1975年 259,020
2.63% ↑
1974年 252,381
8.27% ↑
1973年 233,101
5.48% ↑
1972年 220,990
-2.43% ↓
1971年 226,490
-0.71% ↓
1970年 228,100
9.73% ↑
1969年 207,881
-15.98% ↓
1968年 247,427
-5.79% ↓
1967年 262,641
-3.08% ↓
1966年 270,987
10.22% ↑
1965年 245,864
-4.35% ↓
1964年 257,042
4.52% ↑
1963年 245,921
-3.54% ↓
1962年 254,952
-4.94% ↓
1961年 268,190 -

イギリスの羊肉生産は長期的なデータを見ると、時代ごとの政策、経済変動、環境要因に大きく影響を受けながら推移しています。1961年から1970年までは生産量が概ね200,000~270,000トンの範囲で変動しており、1970年代も緩やかな変化に留まりました。しかし、1980年代に入ると多くの技術革新や農業支援政策が導入され、生産量が大幅に増加し始めます。1989年には366,109トン、1992年には401,000トンと、データの中でピークを迎えました。

1990年代後半以降、生産量は減少傾向を示すようになります。この時期に影響を与えた要因の一つは、1996年に発生したいわゆる「狂牛病(BSE)およびそれに関連する感染リスク」による食肉産業全体への信頼低下です。さらに2001年の口蹄疫(こうていえき)流行により、生産量は急激に低下し267,000トンとなりました。この出来事は、イギリスの羊肉産業に深刻な影響を及ぼし、労働力不足や輸出量制限が追い打ちをかけました。

その後、2005年から2010年までは300,000トン台に回復したものの、再び平行線や微減が続いています。2023年の286,000トンという数字は、1990年代後半のピーク時と比較すると顕著な減少傾向にあります。一方で、この水準は1950~60年代の数値と比較すると安定した生産を維持しているとも解釈できます。

イギリスの羊肉産業を語るには、国としての地政学的要素や農業政策、気候変動が重要な背景として挙げられます。地政学的には、イギリスがEUを離脱(ブレグジット)したことによる輸出規制や関税の課題があります。特に羊肉はイギリスからEUへの重要な輸出品であったため、BREXIT以降、ヨーロッパの市場へのアクセスが制限されています。また、地域ごとの降雨量の減少や気温上昇といった気候変動も、牧草地の維持や家畜の飼育コストに影響を及ぼしています。

さらに、新型コロナウイルス感染症の流行(COVID-19)は肉加工企業の運営に大きな打撃を与え、労働者不足や物流の停滞を引き起こしました。この影響により2021年には283,000トンまで落ち込みましたが、2022年には291,000トンと若干の回復が見られました。

将来の課題としては、環境に優しい畜産方法の導入と、持続可能な形での産業の活性化が求められます。たとえば、放牧の効率化や農地の持続可能性を向上させるための技術革新、気候変動に対応した飼料管理の確立が挙げられます。また地政学的な視点からは、EU以外の視点に目を向けた新たな輸出先の開拓が重要となります。特にアジア諸国や中東市場への輸出戦略は、今後のイギリス羊肉産業の成長において鍵を握るでしょう。

結論として、イギリスの羊肉生産は歴史的に見ると安定性を保っている一方で、環境問題や輸出政策の変化といった新たな課題に直面しています。FAOや国連などの国際機関が推奨する、持続可能な農業技術や国際協力の枠組みを活用することが、安定かつ効率的な産業基盤の構築に大きく寄与することが期待されています。