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イギリスのリンゴ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イギリスのリンゴ生産量は1960年代から長期的な変動を繰り返しながら、21世紀に入って一時的な下降傾向が見られる一方、2010年代以降には回復基調が見られます。2020年には63万トンを記録するなど、過去50年以上の記録でも比較的高い水準に達しました。ただし、直近では再び減少傾向が見られ、2021年には46万トンにまで低下しましたが、2022年には55万トンと若干の増加を見せています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 407,770
-26.66% ↓
2022年 555,998
19.93% ↑
2021年 463,593
-26.6% ↓
2020年 631,597
3.47% ↑
2019年 610,444
11.25% ↑
2018年 548,721
2.51% ↑
2017年 535,300
11.27% ↑
2016年 481,100
4.68% ↑
2015年 459,600
1.82% ↑
2014年 451,400
13.27% ↑
2013年 398,500
95.77% ↑
2012年 203,550
-15.15% ↓
2011年 239,890
1.89% ↑
2010年 235,450
2.82% ↑
2009年 229,000
-5.72% ↓
2008年 242,900
-0.08% ↓
2007年 243,100
-9.71% ↓
2006年 269,239
23.45% ↑
2005年 218,100
27.99% ↑
2004年 170,400
18.42% ↑
2003年 143,900
-19.79% ↓
2002年 179,400
-15.3% ↓
2001年 211,800
1.44% ↑
2000年 208,800
-15.26% ↓
1999年 246,400
34.13% ↑
1998年 183,700
-1.76% ↓
1997年 187,000
-16.37% ↓
1996年 223,600
-14.3% ↓
1995年 260,900
-25.41% ↓
1994年 349,800
-1.55% ↓
1993年 355,300
-8.76% ↓
1992年 389,400
20.48% ↑
1991年 323,220
4.58% ↑
1990年 309,059
-30.96% ↓
1989年 447,673
66.79% ↑
1988年 268,400
-5.72% ↓
1987年 284,672
-5.92% ↓
1986年 302,600
-0.92% ↓
1985年 305,400
-11.89% ↓
1984年 346,600
11.27% ↑
1983年 311,500
-14.21% ↓
1982年 363,100
56.64% ↑
1981年 231,800
-35.11% ↓
1980年 357,200
-1.6% ↓
1979年 363,000
-7.21% ↓
1978年 391,200
44.89% ↑
1977年 270,000
-25.72% ↓
1976年 363,500
-2.96% ↓
1975年 374,600
-5.59% ↓
1974年 396,800
-19.03% ↓
1973年 490,041
30.6% ↑
1972年 375,227
-29.24% ↓
1971年 530,276
-11.03% ↓
1970年 596,015
33.34% ↑
1969年 447,000
17.02% ↑
1968年 382,000
15.06% ↑
1967年 332,000
-10.27% ↓
1966年 370,000
-30.06% ↓
1965年 529,000
-18.99% ↓
1964年 653,000
19.82% ↑
1963年 545,000
-6.52% ↓
1962年 583,000
71.98% ↑
1961年 339,000 -

イギリスは歴史的にリンゴの生産が盛んな国でした。1960年代から1970年代前半にかけて、年間50万~60万トンを超える規模での生産が頻繁に観測されていました。この時期の生産量増加は、国内市場需要の高まりや、農業技術の向上、生産者による集中栽培地域の開発が要因と考えられます。しかし、その後の数十年間にわたり全体的な生産量は停滞または減少傾向を示しました。特に1990年代以降は年間20万トン台に落ち込む年もあり、1970年代の水準に遠く及ばない年が続きました。

このような減少の背景にはいくつかの理由が考えられます。まず、国際市場における競争力が大きく影響を及ぼしました。オランダ、フランスといった近隣諸国は、生産コストが比較的低い地域において、大規模な商業リンゴ栽培が発展したため、イギリス国内の生産者はコスト面、品質面での競争に苦しむ状況に陥りました。また都市化の加速により、農地や栽培可能地域が制限されてきたことも重要な要因です。

21世紀に入ると、生産量は低水準から徐々に回復し、2010年代後半には再び50万トンを超える年が見られるようになりました。2020年には63万トンを記録しており、1964年以来の高水準まで増加しました。この増加は、市民の健康志向の高まりや、地産地消を重視する消費者の増加、イギリス農業への投資拡大などが影響していると考えられます。しかし、一方で2021年には再び46万トンに減少しており、この下落は主に異常気象の影響や、パンデミックによる労働確保の困難さが要因と考えられます。また、2022年には55万トンに若干回復しましたが、依然として安定した増加基調には至っていません。

将来的には、イギリスのリンゴ生産には複数の課題が残されています。まず、気候変動の影響があります。特に気温の上昇や異常気象は、果物の品質や収量に直接的な影響を与えるため、対応が急務です。また農業従事者の高齢化や担い手不足も深刻であり、これを解決するためには移民政策の見直しや、自動化技術の普及が求められます。さらに、国際市場における競争力を高めるためには、環境負荷を抑えつつ生産効率を向上させる農業イノベーションがカギとなるでしょう。

国としては、国内市場におけるリンゴ消費の促進も重要です。例えば、学校や地域での食育プログラムを充実させることで、地元産リンゴの重要性を啓発することが考えられます。また、EU離脱後の新たな貿易協定などを活用し、国際市場での販売機会を増やすことも収益性改善に寄与する可能性があります。

このように、イギリスのリンゴ生産は歴史的な変動を経て現在に至りますが、その未来は地政学的背景や環境、技術革新の存否に大きく依存しています。ステークホルダー全体が協力し、持続可能な農業構築に向けた取り組みを進めることが鍵となるでしょう。