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イギリスのリンゴ生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、イギリスのリンゴ生産量は1960年代から長期的な変動を繰り返しながら、21世紀に入って一時的な下降傾向が見られる一方、2010年代以降には回復基調が見られます。2020年には63万トンを記録するなど、過去50年以上の記録でも比較的高い水準に達しました。ただし、直近では再び減少傾向が見られ、2021年には46万トンにまで低下しましたが、2022年には55万トンと若干の増加を見せています。

年度 生産量(トン)
2022年 555,998
2021年 463,593
2020年 631,597
2019年 610,444
2018年 548,721
2017年 535,300
2016年 481,100
2015年 459,600
2014年 451,400
2013年 398,500
2012年 203,550
2011年 239,890
2010年 235,450
2009年 229,000
2008年 242,900
2007年 243,100
2006年 269,239
2005年 218,100
2004年 170,400
2003年 143,900
2002年 179,400
2001年 211,800
2000年 208,800
1999年 246,400
1998年 183,700
1997年 187,000
1996年 223,600
1995年 260,900
1994年 349,800
1993年 355,300
1992年 389,400
1991年 323,220
1990年 309,059
1989年 447,673
1988年 268,400
1987年 284,672
1986年 302,600
1985年 305,400
1984年 346,600
1983年 311,500
1982年 363,100
1981年 231,800
1980年 357,200
1979年 363,000
1978年 391,200
1977年 270,000
1976年 363,500
1975年 374,600
1974年 396,800
1973年 490,041
1972年 375,227
1971年 530,276
1970年 596,015
1969年 447,000
1968年 382,000
1967年 332,000
1966年 370,000
1965年 529,000
1964年 653,000
1963年 545,000
1962年 583,000
1961年 339,000

イギリスは歴史的にリンゴの生産が盛んな国でした。1960年代から1970年代前半にかけて、年間50万~60万トンを超える規模での生産が頻繁に観測されていました。この時期の生産量増加は、国内市場需要の高まりや、農業技術の向上、生産者による集中栽培地域の開発が要因と考えられます。しかし、その後の数十年間にわたり全体的な生産量は停滞または減少傾向を示しました。特に1990年代以降は年間20万トン台に落ち込む年もあり、1970年代の水準に遠く及ばない年が続きました。

このような減少の背景にはいくつかの理由が考えられます。まず、国際市場における競争力が大きく影響を及ぼしました。オランダ、フランスといった近隣諸国は、生産コストが比較的低い地域において、大規模な商業リンゴ栽培が発展したため、イギリス国内の生産者はコスト面、品質面での競争に苦しむ状況に陥りました。また都市化の加速により、農地や栽培可能地域が制限されてきたことも重要な要因です。

21世紀に入ると、生産量は低水準から徐々に回復し、2010年代後半には再び50万トンを超える年が見られるようになりました。2020年には63万トンを記録しており、1964年以来の高水準まで増加しました。この増加は、市民の健康志向の高まりや、地産地消を重視する消費者の増加、イギリス農業への投資拡大などが影響していると考えられます。しかし、一方で2021年には再び46万トンに減少しており、この下落は主に異常気象の影響や、パンデミックによる労働確保の困難さが要因と考えられます。また、2022年には55万トンに若干回復しましたが、依然として安定した増加基調には至っていません。

将来的には、イギリスのリンゴ生産には複数の課題が残されています。まず、気候変動の影響があります。特に気温の上昇や異常気象は、果物の品質や収量に直接的な影響を与えるため、対応が急務です。また農業従事者の高齢化や担い手不足も深刻であり、これを解決するためには移民政策の見直しや、自動化技術の普及が求められます。さらに、国際市場における競争力を高めるためには、環境負荷を抑えつつ生産効率を向上させる農業イノベーションがカギとなるでしょう。

国としては、国内市場におけるリンゴ消費の促進も重要です。例えば、学校や地域での食育プログラムを充実させることで、地元産リンゴの重要性を啓発することが考えられます。また、EU離脱後の新たな貿易協定などを活用し、国際市場での販売機会を増やすことも収益性改善に寄与する可能性があります。

このように、イギリスのリンゴ生産は歴史的な変動を経て現在に至りますが、その未来は地政学的背景や環境、技術革新の存否に大きく依存しています。ステークホルダー全体が協力し、持続可能な農業構築に向けた取り組みを進めることが鍵となるでしょう。