Skip to main content

イギリスの小麦生産量推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)の2024年7月に更新されたデータによると、イギリスの小麦生産量は過去数十年間に大きな変動を見せています。1961年には2,614,000トンを記録しましたが、1984年に14,970,000トンと急増し、2008年には17,227,051トンと史上最高生産量を記録しました。一方、近年では気候変動や栽培条件の変化、新型コロナウイルスの影響などにより変動が大きく、特に2020年には9,658,000トンと近年で最も低い値を記録しましたが、2022年には15,540,000トンと回復傾向を示しています。

年度 生産量(トン)
2022年 15,540,000
2021年 13,988,000
2020年 9,658,000
2019年 16,225,000
2018年 13,555,000
2017年 14,837,000
2016年 14,383,000
2015年 16,444,000
2014年 16,606,009
2013年 11,921,304
2012年 13,261,000
2011年 15,257,083
2010年 14,877,835
2009年 14,075,596
2008年 17,227,051
2007年 13,220,620
2006年 14,755,222
2005年 14,863,000
2004年 15,473,000
2003年 14,281,852
2002年 15,972,556
2001年 11,580,107
2000年 16,703,526
1999年 14,866,478
1998年 15,449,029
1997年 15,018,248
1996年 16,071,178
1995年 14,309,981
1994年 13,314,154
1993年 12,890,070
1992年 14,093,267
1991年 14,362,419
1990年 14,033,000
1989年 14,033,000
1988年 11,720,000
1987年 11,940,000
1986年 13,911,000
1985年 12,046,000
1984年 14,970,000
1983年 10,800,000
1982年 10,320,000
1981年 8,710,000
1980年 8,470,000
1979年 7,168,000
1978年 6,610,000
1977年 5,274,163
1976年 4,740,000
1975年 4,488,000
1974年 6,131,587
1973年 5,004,535
1972年 4,781,540
1971年 4,816,560
1970年 4,237,460
1969年 3,364,750
1968年 3,470,000
1967年 3,903,807
1966年 3,475,645
1965年 4,171,000
1964年 3,793,000
1963年 3,046,000
1962年 3,974,000
1961年 2,614,000

イギリスの小麦生産量は、1960年代の低迷期から始まり、1980年代に入ると大幅な拡大を遂げました。この時期の増産の理由には、農業技術の進歩、品種改良、そしてEUの農業政策に基づく支援措置などが挙げられます。特に1984年には、これまでの最高記録となる14,970,000トンを達成し、それ以降も安定した高水準を維持しています。しかし、高生産量を記録した年がある一方で、生産量が一時失速する年も少なくありませんでした。2001年や2020年といった年の減少には、耕作地の減少や気候異常などが影響しています。

イギリスの農業は、特に気象条件に強く影響されます。たとえば、2020年には、急激な天候不順が収穫量の低下を招きました。この年の生産量は9,658,000トンと、1980年代以降で最も低い水準となりました。また、この時期には新型コロナウイルスのパンデミックにより、労働力不足や輸送の混乱が重なったことも生産量減少に拍車をかけたと考えられます。対照的に、2022年には15,540,000トンと回復を見せるなど、近年の生産量は気象条件や経済変動により大きく左右されています。

これらの動向を踏まえると、イギリスの小麦生産にはいくつかの課題が浮かび上がります。一つは気候変動への対応です。異常気象や洪水、干ばつなどの影響が小麦栽培に深刻な打撃を与えているため、耐干ばつ性や耐寒性に優れた品種の開発が必要です。また、地政学的リスクが高まる中での安定的な生産も重要な課題です。ロシアやウクライナといった主要な小麦輸出国の供給不安が影響する中、イギリス内での自給体制の強化は食糧安全保障の観点からも必要とされています。

地政学的背景としては、近年の国際的な輸送網の混乱や、ロシア・ウクライナ間の緊張がイギリスの農業関連貿易に影響を及ぼしています。これにより、輸出入に依存した供給チェーンが脆弱さを露呈し、小麦生産の国内自給への依存がより強くなっています。また、EU離脱後の政策の方向性にも注目が集まります。農業支援政策が緩和される一方で、国際市場との競争が激化し、国内生産者の負担が増大しているという指摘もあります。

未来を見据えた具体策として、農業技術のさらなる進展が不可欠です。例えば、精密農業技術を活用した生産効率の向上や気象データを活用した収穫予測が挙げられます。また、移民政策の見直しも必要です。農業労働力の確保がパンデミックの影響で大きく損なわれており、労働者の流入促進や労働環境改善が安定的な生産体制の維持に寄与するでしょう。そのほか、再生可能エネルギーの導入などでコスト削減を図ることも、生産者支援の重要な一環です。

結論として、イギリスの小麦生産量は、過去数十年で技術革新や政策の恩恵を受けて成長を遂げた一方、気候変動や国際情勢の影響により不安定さが増しています。将来的には、品種改良や技術革新、政策的支援を通じて、持続可能で安定的な生産体制を構築することが求められます。気候変動の影響を踏まえた農業改革が今後の重要な鍵となるでしょう。