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ドイツのサワーチェリー生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ドイツのサワーチェリー生産量は、1960年代のピークである161,442トン(1968年)から、2023年には7,810トンにまで大幅に減少しています。このデータから、ドイツはサワーチェリー生産において長期的な下降トレンドにあることが確認できます。一方で、この下降傾向の背景には地政学的リスクや気候変動、農業政策の変化が複雑に絡んでいると推測されます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 7,810
-23.36% ↓
2022年 10,190
-7.62% ↓
2021年 11,030
-16.38% ↓
2020年 13,190
-16.09% ↓
2019年 15,720
-1.13% ↓
2018年 15,900
92.33% ↑
2017年 8,267
-48.23% ↓
2016年 15,969
-6.72% ↓
2015年 17,119
-1.34% ↓
2014年 17,351
32.86% ↑
2013年 13,060
0.92% ↑
2012年 12,941
-41.95% ↓
2011年 22,294
22.06% ↑
2010年 18,265
-39.59% ↓
2009年 30,236
102.78% ↑
2008年 14,911
-48.15% ↓
2007年 28,756
-22.58% ↓
2006年 37,143
51.17% ↑
2005年 24,571
-30.69% ↓
2004年 35,450
5.21% ↑
2003年 33,694
-48.16% ↓
2002年 65,000
-34.14% ↓
2001年 98,700
-7.67% ↓
2000年 106,900
9.64% ↑
1999年 97,500
41.1% ↑
1998年 69,100
45.47% ↑
1997年 47,500
-57.74% ↓
1996年 112,400
2.18% ↑
1995年 110,000
-8.18% ↓
1994年 119,800
-16.57% ↓
1993年 143,600
-4.65% ↓
1992年 150,600
43.43% ↑
1991年 105,000
-11.3% ↓
1990年 118,380
-8.45% ↓
1989年 129,304
-15.42% ↓
1988年 152,882
0.82% ↑
1987年 151,636
6.24% ↑
1986年 142,736
-10.11% ↓
1985年 158,793
2.47% ↑
1984年 154,971
7.61% ↑
1983年 144,009
-9.9% ↓
1982年 159,832
98.92% ↑
1981年 80,350
-43.51% ↓
1980年 142,237
0.31% ↑
1979年 141,800
17.72% ↑
1978年 120,451
18.46% ↑
1977年 101,677
-17.42% ↓
1976年 123,127
4.33% ↑
1975年 118,020
-0.84% ↓
1974年 119,014
-1.4% ↓
1973年 120,707
-0.78% ↓
1972年 121,650
-16.05% ↓
1971年 144,900
-3.77% ↓
1970年 150,580
18.6% ↑
1969年 126,965
-21.36% ↓
1968年 161,442
25.74% ↑
1967年 128,395
-1.27% ↓
1966年 130,041
52.6% ↑
1965年 85,215
-32.56% ↓
1964年 126,349
3.75% ↑
1963年 121,786
-7.39% ↓
1962年 131,500
10.37% ↑
1961年 119,140 -

ドイツのサワーチェリー生産量は、1960年代から1970年代にかけて10万トンから15万トン規模を維持していましたが、それ以降は一貫して減少傾向にあります。特に、1990年代以降、生産量の波が大きくなり、2000年代中盤以降ではさらに顕著な減少(2005年には24,571トン、2023年には7,810トン)が見られます。背景には、多様な要因が存在していると考えられます。

まず、気候変動の影響が挙げられます。ヨーロッパ全体で観測されている気温上昇や降水量の変動により、サワーチェリー栽培の条件がこれまでと大きく変化しています。この果実は寒冷な気候を好む性質を持つため、冬季の温暖化や夏の高温・乾燥が花芽形成や果実の成長に悪影響を及ぼしている可能性があります。また、近年の極端な気象現象(例えば、猛暑や霜害)が頻発することにより、生産の安定性が脅かされています。

次に、経済的な要因も見逃せません。グローバルな農産物市場の変化に伴い、ドイツのサワーチェリー生産者は、他の農産物や果実に比べて収益性が低いと感じることが多くなっています。特に、ヨーロッパやトルコ、中国などの競争相手国が安価なチェリーを大量に供給している現状では、ドイツ国内での生産維持が困難になっています。

さらに、労働力不足や農業用地の競争が課題となっており、これによって農業機械化や生産現場の効率化を推進する余地も限られています。この問題は、特に従来の家族経営農家が減少しているドイツ農業全体に見られる傾向です。

地政学的な背景を考慮すると、一部のヨーロッパ諸国や他国からの輸入品への依存度が高まるのは、長期的にリスクを伴います。2020年代以降の新型コロナウイルスの流行は、国際的な物流や供給チェーンに影響を及ぼし、国内自給率の重要性への関心を高めました。この視点から考えると、サワーチェリーの生産が著しく減少していることは、安全保障や地域経済の観点からも悪影響を生む可能性があります。

このような状況を踏まえると、まずは気候変動に適応するための研究と政策が必要不可欠です。例えば、気候に対してより耐性のあるサワーチェリー品種の開発や、農業用地の適切な管理のための助成金制度を設けることが考えられます。また、少量多品種の農業形態を促進することで、収益性の向上と安定化を図る取り組みも有効です。

ドイツ国内の農業を復興させるためには、EU全体との連携も重要です。輸入依存を減らしながら、生産技術や市場競争力を強化するために、ドイツと近隣諸国が協力して共通のフードセキュリティ政策を策定することが求められます。さらに、国内外の需要構造を深く理解し、有機農法や地域ブランドの展開を通じて、ドイツ産サワーチェリーの新たな価値を創出することも有望です。

最後に、現代の食卓での果実の多様性を考慮して、さらなる消費喚起策も重要です。たとえば、学校や地域コミュニティでサワーチェリーの栄養価や地元経済への貢献をアピールし、若い世代からの支持を集める工夫が有効です。これにより、生産量の需要側のプッシュアップを狙うことが可能です。

結論として、ドイツのサワーチェリー生産量の減少は、気候変動や市場環境、政策面での課題を反映した現象といえます。この問題は国内のみならず、地域協力と国際的な行動も求められる複雑な課題です。持続可能な農業を実現するためには、これらの要素を包括して政策を展開する必要があります。

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