国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したドイツのヤギ飼養頭数の最新データによると、1960年代には約80万頭近くあった飼養頭数は、1970年代を通じて急激に減少しました。その後、1980年代から2000年代初頭まで比較的安定または緩やかな増加を見せ、2002年には16万頭に達しました。しかし、2010年代には再び減少基調を見せ、2013年には約13万頭台まで下がるなど変動を示しています。直近の2022年のデータでは約15万9千頭と報告されており、過去10年間での安定的な推移が見られます。
ドイツのヤギ飼養頭数推移(1961-2022)
年度 | 飼養頭数(頭) |
---|---|
2022年 | 159,000 |
2021年 | 164,000 |
2020年 | 161,000 |
2019年 | 141,000 |
2018年 | 146,000 |
2017年 | 140,000 |
2016年 | 138,810 |
2015年 | 110,000 |
2014年 | 117,000 |
2013年 | 130,200 |
2012年 | 162,000 |
2011年 | 160,000 |
2010年 | 150,000 |
2009年 | 190,000 |
2008年 | 190,000 |
2007年 | 180,000 |
2006年 | 170,000 |
2005年 | 170,000 |
2004年 | 165,000 |
2003年 | 160,000 |
2002年 | 160,000 |
2001年 | 140,000 |
2000年 | 135,000 |
1999年 | 125,000 |
1998年 | 115,000 |
1997年 | 105,000 |
1996年 | 100,000 |
1995年 | 95,000 |
1994年 | 92,000 |
1993年 | 90,000 |
1992年 | 86,000 |
1991年 | 90,000 |
1990年 | 90,000 |
1989年 | 71,200 |
1988年 | 67,300 |
1987年 | 66,003 |
1986年 | 66,574 |
1985年 | 67,503 |
1984年 | 67,905 |
1983年 | 57,728 |
1982年 | 58,843 |
1981年 | 59,538 |
1980年 | 61,066 |
1979年 | 64,968 |
1978年 | 70,075 |
1977年 | 80,268 |
1976年 | 90,732 |
1975年 | 102,731 |
1974年 | 115,636 |
1973年 | 136,329 |
1972年 | 156,437 |
1971年 | 185,186 |
1970年 | 218,186 |
1969年 | 279,000 |
1968年 | 324,800 |
1967年 | 382,800 |
1966年 | 423,800 |
1965年 | 503,500 |
1964年 | 585,600 |
1963年 | 623,100 |
1962年 | 738,000 |
1961年 | 791,300 |
ドイツにおけるヤギ飼養頭数の長期的な推移を見ると、大きな減少とその後の回復を特徴とした動態が明らかに見て取れます。1961年には約79万1千頭に達していたヤギの飼養頭数は、農業の機械化の進展や都市化の影響により、1970年代には約22万頭と圧倒的な減少傾向を示しました。ヤギの飼育は畜産業の小規模単位で行われることが多く、大規模な経済効率を求める近代農業の潮流に適応しにくかったことが、この減少の一因と考えられます。その後、1980年代に入ると減少は止まり、安定化が進みました。
1990年代以降は、再び飼養頭数の増加が見られるようになります。この増加には複数の背景が考えられます。一つは、エコロジカルな農業手法の推進や持続可能性の観点からヤギ畜産が再注目されたことで、趣味的な小規模農家や有機農業における役割が再評価されたことです。また、ヤギの飼育が提供する製品、例えばチーズやその他の乳製品が、健康志向や高品質の商品を求める消費者に支持されたことも影響しています。この動きは、同様の傾向を欧州の他国でも見ることができます。たとえば、フランスでは高価値のヤギ乳製品の生産が少数派ながらも一定のポジションを占めています。
2020年代に入ると、環境変化や新型コロナウイルス感染症による影響が、飼育環境に新たな課題を与え始めました。2020年から2022年の期間では、全体として飼養頭数は15万9千頭前後に維持されていますが、農畜産業全体での経済的プレッシャーや労働力不足、新規参入者の減少が長期的な課題として挙げられます。
地域的な課題としては、ドイツ国内の都市部と農村部の間でのヤギ関連製品需要の不均衡、国内外での市場競争、また気候変動による牧草地の品質低下のリスクも無視できません。これらの問題点は、さらなる官民連携の取り組みを通じて克服が求められます。
今後の具体的な施策として、まずヤギ畜産を持続可能かつ経済的に魅力的なものにするための政策が必要です。たとえば、小規模農家に対する補助金やマーケティング支援を拡充することで、若年層が新規参入しやすい環境を整えるべきです。また、付加価値の高いヤギ製品のブランド化や輸出促進に注力することで、国内外での競争力を高めることができます。同時に、牧草地の環境改善のための予算配分や、気候変動に対応した耐候性の高い飼育プロセスを広めることも重要です。
ドイツのヤギ産業は、ここ数十年でその規模を縮小させつつも新たな復興の兆しを見せています。その鍵は、農業と消費者、市場全体をつなぐバランスの取れた政策形成にあると考えられます。この取り組みが進むことで、ヤギ飼養頭数のさらなる安定化や、小規模農家の所得向上が期待されます。