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ドイツのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ドイツのさくらんぼ生産量は1960年代において約20万トン台で安定していたものの、2000年代以降、比較的顕著な減少傾向を示しています。1968年の約26万8千トンをピークに、一時的な増減を繰り返しつつも、2005年以降は5万トンを下回る年が多く見られます。直近の2023年では約3万2千トンにとどまり、1960年代の約6分の1まで減少していることがわかります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 32,350
-15.91% ↓
2022年 38,470
40.71% ↑
2021年 27,340
-25.71% ↓
2020年 36,800
-17.4% ↓
2019年 44,550
0.75% ↑
2018年 44,220
167.42% ↑
2017年 16,536
-43.7% ↓
2016年 29,373
-6.59% ↓
2015年 31,446
-20.53% ↓
2014年 39,571
61.77% ↑
2013年 24,462
6.33% ↑
2012年 23,005
-37.88% ↓
2011年 37,035
20.12% ↑
2010年 30,831
-21.87% ↓
2009年 39,463
56.81% ↑
2008年 25,166
-26.95% ↓
2007年 34,452
8.9% ↑
2006年 31,637
13.35% ↑
2005年 27,911
-28.57% ↓
2004年 39,076
17.04% ↑
2003年 33,386
-52.31% ↓
2002年 70,000
-49.96% ↓
2001年 139,900
-17.56% ↓
2000年 169,700
8.43% ↑
1999年 156,500
28.22% ↑
1998年 122,053
89.82% ↑
1997年 64,300
-58.7% ↓
1996年 155,700
9.96% ↑
1995年 141,600
-2.61% ↓
1994年 145,400
-22% ↓
1993年 186,400
-15.27% ↓
1992年 220,000
293.26% ↑
1991年 55,943
-60.29% ↓
1990年 140,896
-4.52% ↓
1989年 147,561
-8.45% ↓
1988年 161,172
-6.66% ↓
1987年 172,680
-5% ↓
1986年 181,772
-6.42% ↓
1985年 194,250
-9.02% ↓
1984年 213,498
0.81% ↑
1983年 211,774
-0.7% ↓
1982年 213,257
292.93% ↑
1981年 54,273
-61.68% ↓
1980年 141,647
-26.85% ↓
1979年 193,641
16.43% ↑
1978年 166,319
42.08% ↑
1977年 117,063
-30.46% ↓
1976年 168,334
-0.49% ↓
1975年 169,155
28.52% ↑
1974年 131,622
-27.44% ↓
1973年 181,385
36.84% ↑
1972年 132,552
-41.05% ↓
1971年 224,855
-12.02% ↓
1970年 255,584
27.01% ↑
1969年 201,236
-24.99% ↓
1968年 268,262
58.21% ↑
1967年 169,556
-21.38% ↓
1966年 215,656
53.68% ↑
1965年 140,330
-36.67% ↓
1964年 221,590
0.66% ↑
1963年 220,141
19.22% ↑
1962年 184,657
0.22% ↑
1961年 184,246 -

ドイツのさくらんぼ生産量の推移を見れば、その長期的な減少傾向が明らかです。1960年代および1970年代までは、概ね15万~20万トン以上の生産量が維持されていましたが、1981年にはわずか5万4千トンと大幅な減少が見られます。この時期の主な背景としては、農業生産における機械化の進展に伴う作物選択の変化、農業政策の変更、さらには気候条件や霜害などの気象の影響が指摘されています。特に1980年以降、極端な低生産量が散発的に記録されるようになり、21世紀に入るとその状況がより顕著になりました。

2005年以降のデータでは、生産量が2万~3万トン程度にまで低下している年が多く、これまでのドイツ国内のさくらんぼ生産における構造的な変化を反映しています。この低迷の背景には、ヨーロッパ全体の経済統合の進展に伴い、安価な輸入果実が市場を占有するようになったことが挙げられます。特にトルコなど、競争力のある生産国からの輸入が増加し、ドイツ国内の農家に価格競争力の低下をもたらしました。また、ドイツ国内では大規模な農地で効率よく生産できる作物の方にシフトする傾向が強まり、高い手間を要する果樹栽培は減少していく結果となっています。

一方で、近年では気候変動の影響も軽視できない要因です。ドイツの気候は全般的に温暖化の傾向を見せつつも、極端な気象イベント(霜害や熱波など)が増加しており、特に2020年代に入ってからはこれらの影響が果樹全般に及んでいる可能性が指摘されています。例えば、2017年における生産量は約1万6千トンと特に低く、これは厳しい霜害や気象条件が発生した年であると考えられます。

将来的な課題としては、まずドイツ国内の農地や農業労働力の持続可能な利用に関する問題が挙げられます。特に、小規模農家が安価な輸入品との競争にさらされる中で、持続可能な生産手法への転換や品質向上への取り組みが必要とされます。また、気候変動への適応策として、霜害や高温への耐性を持つ新品種の開発や、農業技術による気候リスクの軽減策の導入が急務です。国際的な連携による新品種の研究開発や、災害時の補償制度の充実も、さくらんぼの生産につながる重要な要素と言えるでしょう。

加えて、消費者の多様化するニーズに応える形で、地域ブランド化や有機栽培への転換も考慮すべきです。特にヨーロッパ市場においては、環境への配慮や持続可能性を重視する消費者層が拡大しているため、それに対応した商品づくりが重要です。これにより、単なる生産量の回復だけでなく、付加価値を高める取り組みが可能となります。

結論として、ドイツのさくらんぼ生産はその歴史的な水準に戻る可能性は低いものの、政策的支援や技術の導入、消費者ニーズに合わせた市場戦略を駆使することで、安定的で付加価値の高いさくらんぼ生産を目指すことができます。また、こうした取り組みは農業全体の持続可能性の向上にも寄与する可能性が大いにあります。ドイツ政府と国際機関の連携、さらには地域共同体の協力が、これらの取り組みを成功に導く鍵となるでしょう。