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ドイツの羊肉生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が公表したデータによると、ドイツの羊肉生産量は1961年以降、大きな変動を見せながら推移してきました。1961年の37,000トンから始まり、1980年代後半から1990年代前半にかけて一時期50,000トン前後と高水準を記録しましたが、2000年代後半からは減少傾向に入り、2023年には30,360トンと、過去60年以上で最低水準に達しています。このデータは、ドイツ国内における畜産業の動向や、羊肉に対する需要と供給のバランスを反映しているだけでなく、環境や政策、地政学的リスクへの影響も含め考察できるものとなっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 30,360
-4.38% ↓
2022年 31,750
-4.83% ↓
2021年 33,360
-16.6% ↓
2020年 40,000
14.29% ↑
2019年 35,000
2.94% ↑
2018年 34,000
9.14% ↑
2017年 31,152
-1.38% ↓
2016年 31,587
-1.72% ↓
2015年 32,140
5.35% ↑
2014年 30,507
-7.95% ↓
2013年 33,142
-9.31% ↓
2012年 36,544
-8.39% ↓
2011年 39,892
4.05% ↑
2010年 38,340
-0.42% ↓
2009年 38,500
-0.1% ↓
2008年 38,537
-12.23% ↓
2007年 43,908
1.12% ↑
2006年 43,423
-11.75% ↓
2005年 49,202
1.64% ↑
2004年 48,406
6.05% ↑
2003年 45,644
4.26% ↑
2002年 43,781
-4.94% ↓
2001年 46,056
-3.65% ↓
2000年 47,800
9.13% ↑
1999年 43,800
-0.9% ↓
1998年 44,200
0.68% ↑
1997年 43,900
2.58% ↑
1996年 42,796
3.15% ↑
1995年 41,489
4.28% ↑
1994年 39,785
-1.99% ↓
1993年 40,593
-7.11% ↓
1992年 43,699
-12.02% ↓
1991年 49,669
-0.84% ↓
1990年 50,088
17.98% ↑
1989年 42,456
4.13% ↑
1988年 40,773
-14.51% ↓
1987年 47,695
13.58% ↑
1986年 41,991
-3.15% ↓
1985年 43,357
-2.23% ↓
1984年 44,344
6.41% ↑
1983年 41,671
0.23% ↑
1982年 41,575
-1.74% ↓
1981年 42,310
-6.83% ↓
1980年 45,410
4.01% ↑
1979年 43,661
5.56% ↑
1978年 41,361
4.05% ↑
1977年 39,750
-5.04% ↓
1976年 41,859
9.63% ↑
1975年 38,183
23.57% ↑
1974年 30,900
19.77% ↑
1973年 25,800
8.57% ↑
1972年 23,763
6.55% ↑
1971年 22,302
8.38% ↑
1970年 20,578
0.64% ↑
1969年 20,448
3.12% ↑
1968年 19,830
-1.34% ↓
1967年 20,100
-17.28% ↓
1966年 24,300
-4.71% ↓
1965年 25,500
-10.53% ↓
1964年 28,500
-8.06% ↓
1963年 31,000
-6.06% ↓
1962年 33,000
-10.81% ↓
1961年 37,000 -

1961年から2023年にかけてのドイツにおける羊肉生産量の推移には、時代ごとの経済、政策、社会的な背景が色濃く反映されています。この期間中、1961年の37,000トンから始まった生産量は、1970年代後半から1980年代にかけて急速に増加し、1990年には50,088トンとピークを迎えました。しかし、それ以降は大きな変動を伴いながら全体として減少の傾向を見せ、2023年には30,360トンと過去最低水準にまで落ち込んでいます。

この推移はさまざまな理由によって説明できます。1970年代の生産量拡大は、ヨーロッパの農業政策により畜産業が支援されたことが背景にあります。それにより、羊肉を含む畜産部門に投資が行われ、生産量が増加しました。しかし、その後の減少は、環境保護や持続可能性に焦点を当てた政策変化が影響しています。特にEUにおける共通農業政策(CAP)の改革や、消費者の食の嗜好の変化が、大きな要因となったと考えられます。近年では、健康志向や気候変動への関心が高まる中で、植物ベースの食品への移行が促されており、羊肉の需要が減少している可能性もあります。

また、地政学的な背景も無視できません。ドイツは食料輸入も盛んな一方で、地元生産の競争力を確保するための課題に直面しています。近隣諸国の羊肉生産コストが比較的低いため、ドイツ国内の畜産業者は国際市場での競争が難しく、生産規模の縮小を余儀なくされる場合があります。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大によるロジスティクスの混乱や人手不足も、2020年以降の生産低迷に影響を与えた可能性があります。

これらの要因に加えて、地域的な課題として、牧畜に伴う環境負荷の問題があります。羊肉生産は土地や水資源を多く消費するうえ、温室効果ガスの排出も伴います。このため、持続可能な農業への移行が重要視されており、従来型の大規模生産に依存する産業構造の再考が求められています。

未来への示唆としては、いくつかの具体的な対策が挙げられます。まず、技術革新を通じた効率的かつ環境負荷の少ない生産手法の採用が急務です。サプライチェーンの見直しにより地元の生産者を支援し、輸入品との差別化を図ることも必要です。さらに、消費者教育を通じて、羊肉を含む動物性食品の適切な消費を促進するキャンペーンが求められます。

結論として、ドイツにおける羊肉生産量の推移は、単に農業生産の変動だけでなく、政策や地政学的なリスク、消費者行動、さらには気候変動への対応といった広範な社会的課題を映しています。国やEUレベルでの政策設定が、今後の畜産業とその持続可能性にとって重要な鍵を握ることは間違いありません。