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ドイツのナシ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ドイツのナシ生産量は1961年の398,000トンから1980年代初頭にはおおむね40万トン以上を維持していました。しかし1990年代以降急激に減少し、1993年には43,202トンまで減少しました。2000年代には一部回復がみられる年もありましたが、全体的な生産量は減少傾向にあります。直近の2023年には37,790トンと、1960年代後半〜1970年代のピークから約5%以下の水準にとどまっています。この数値は、気候変動、農業構造の変化、グローバル市場との相互作用などが影響していると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 37,790
4.05% ↑
2022年 36,320
-2.26% ↓
2021年 37,160
-5.37% ↓
2020年 39,270
-7.56% ↓
2019年 42,480
-10.83% ↓
2018年 47,640
103.71% ↑
2017年 23,386
-32.46% ↓
2016年 34,625
-19.61% ↓
2015年 43,071
-4.23% ↓
2014年 44,972
13.8% ↑
2013年 39,520
16.59% ↑
2012年 33,898
-27.65% ↓
2011年 46,854
20.46% ↑
2010年 38,895
-25.66% ↓
2009年 52,319
37.41% ↑
2008年 38,076
-23.72% ↓
2007年 49,918
2.74% ↑
2006年 48,586
26.99% ↑
2005年 38,259
-51.43% ↓
2004年 78,763
47.24% ↑
2003年 53,494
-29.74% ↓
2002年 76,139
62.61% ↑
2001年 46,823
-28.14% ↓
2000年 65,162
20.58% ↑
1999年 54,042
-2.44% ↓
1998年 55,392
48.35% ↑
1997年 37,338
1.01% ↑
1996年 36,963
-6.57% ↓
1995年 39,563
2.11% ↑
1994年 38,746
-10.31% ↓
1993年 43,202
-21.04% ↓
1992年 54,714
-68.79% ↓
1991年 175,300
-53.82% ↓
1990年 379,626
-11.87% ↓
1989年 430,752
-25.17% ↓
1988年 575,616
66.63% ↑
1987年 345,452
-42.33% ↓
1986年 598,999
31.85% ↑
1985年 454,294
-12.58% ↓
1984年 519,651
8.3% ↑
1983年 479,846
-20.95% ↓
1982年 607,023
84.01% ↑
1981年 329,882
-27.05% ↓
1980年 452,233
1.33% ↑
1979年 446,292
8.51% ↑
1978年 411,298
35.19% ↑
1977年 304,229
-34.74% ↓
1976年 466,175
6.63% ↑
1975年 437,199
16.57% ↑
1974年 375,045
-20.54% ↓
1973年 472,000
2.34% ↑
1972年 461,200
-3.51% ↓
1971年 478,000
-26.23% ↓
1970年 648,000
34.61% ↑
1969年 481,400
-35.03% ↓
1968年 741,000
44.16% ↑
1967年 514,000
6.2% ↑
1966年 484,000
32.24% ↑
1965年 366,000
-38.69% ↓
1964年 597,000
15.7% ↑
1963年 516,000
-16.5% ↓
1962年 618,000
55.28% ↑
1961年 398,000 -

ドイツのナシ生産量の動向を詳しく見ると、1960年代から1980年代までは比較的高い水準(40万トンから70万トン台)を維持していました。この時期の生産の安定性は、国内需要の高さ、気候条件の好適性、そして農業労働力の安定供給が要因となっています。しかし1990年代初頭から生産量に急激な減少が見られます。この背景として、東西ドイツ統一後の農業政策の変化とEU経済圏への統合に伴う競争環境が挙げられます。特に、ナシの生産は他の果樹(リンゴやブドウなど)よりも収益率が低いと考えられ、農家がナシ農作から転換した可能性が高いと言えます。

近年では、ドイツの生産量は3万トンから5万トンの間で推移しており、この値は中国(2,000万トン超)、アメリカ(50万~60万トン)、そして近隣のイタリアやフランスなどの主要生産国と比べて極めて低い水準です。中国に次ぎ世界第2位の生産国であるイタリアでは、一部地域で高度な栽培技術が進んでいることや、輸出市場での競争力が高いことが影響しています。また、気候温暖なヨーロッパ南部に比較して、ドイツの気候条件はナシ栽培には少々厳しい可能性があり、これは長期的な気候変動の影響とも密接に関連していると予測されます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の影響も無視できません。2020年代に生産量が低下した背景には、農業労働力の確保が難しくなったことや物流の停滞が関与していると考えられます。また、異常気象や干ばつが近年増加していることから、収穫量が安定しない可能性も指摘されます。例えば、2017年の極端な低下に見られるように、気候不安定性が収穫量の減少に大きく影響していると考えるべきです。

これらを踏まえると、ドイツがナシ生産において直面している主な課題は、気候変動への適応、農業収益の確保、生産技術の改善の3つに集約されます。具体的な提言として、第一に、気候適応型の新しいナシ品種の開発が重要です。第二に、政府や国際機関による農業補助金や技術指導により、ナシ農家が持続可能な形で生産を継続できる環境を築く必要があります。第三に、EU内の近隣諸国と協調し、高品質なナシの輸出を強化することで、経済的な付加価値を生む戦略も考えられます。

また、長期的には、気候変動に伴う農業環境の変化に対応するため、ドローンやAIを使用したスマート農業の導入も検討されるべきです。これにより、限られた農地でも効率的に生産を管理し、収穫量の安定化を図ることが可能になります。さらに、持続可能な農業実践を推進することで、気候変動や自然災害の影響を軽減することも重要になります。

結論として、ドイツのナシ生産の持続可能性を確保するには、技術革新と政策支援を組み合わせた包括的な取り組みが必要です。また、グローバルな競争から国内生産を維持するという視点で、EUレベルでの協力が果樹栽培業界の将来に重要な鍵となるでしょう。