国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新の統計データによれば、ドイツの馬の飼養数は1961年に1,158,500頭を記録しましたが、それ以降20年近くにわたって大幅な減少を続けました。その後、1980年代には一時的な安定期を、1990年代には増加傾向を迎えましたが、2000年以降は再び全体的な減少傾向を示しています。2017年時点では、飼養数は442,000頭に留まり、ピーク時の約4割にまで減少しています。
ドイツの馬飼養数推移(1961年~2023年)
年度 | 飼養数(頭) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 486,500 |
10.07% ↑
|
2017年 | 442,000 |
0.01% ↑
|
2016年 | 441,954 |
4.57% ↑
|
2015年 | 422,657 |
13.62% ↑
|
2014年 | 372,000 |
-19.36% ↓
|
2013年 | 461,300 |
-7.74% ↓
|
2012年 | 500,000 |
-8.26% ↓
|
2011年 | 545,000 |
17.97% ↑
|
2010年 | 462,000 |
-15.23% ↓
|
2009年 | 545,000 |
0.37% ↑
|
2008年 | 543,000 |
0.2% ↑
|
2007年 | 541,890 |
6.25% ↑
|
2006年 | 510,000 |
1.92% ↑
|
2005年 | 500,400 |
-4.69% ↓
|
2004年 | 525,000 |
0.04% ↑
|
2003年 | 524,800 |
3.67% ↑
|
2002年 | 506,200 |
3.07% ↑
|
2001年 | 491,100 |
3.17% ↑
|
2000年 | 476,000 |
-9.16% ↓
|
1999年 | 524,000 |
-12.67% ↓
|
1998年 | 600,000 |
-10.45% ↓
|
1997年 | 670,000 |
2.76% ↑
|
1996年 | 652,000 |
-0.06% ↓
|
1995年 | 652,400 |
8.95% ↑
|
1994年 | 598,800 |
12.78% ↑
|
1993年 | 530,957 |
8.01% ↑
|
1992年 | 491,600 |
0.13% ↑
|
1991年 | 490,954 |
1.46% ↑
|
1990年 | 483,900 |
1.48% ↑
|
1989年 | 476,851 |
1.67% ↑
|
1988年 | 469,000 |
-0.73% ↓
|
1987年 | 472,457 |
-0.48% ↓
|
1986年 | 474,759 |
0.7% ↑
|
1985年 | 471,462 |
6.76% ↑
|
1984年 | 441,609 |
-1.98% ↓
|
1983年 | 450,537 |
2.52% ↑
|
1982年 | 439,483 |
-2.72% ↓
|
1981年 | 451,794 |
1.39% ↑
|
1980年 | 445,601 |
0.45% ↑
|
1979年 | 443,624 |
1.55% ↑
|
1978年 | 436,855 |
3.39% ↑
|
1977年 | 422,547 |
2.78% ↑
|
1976年 | 411,118 |
2.48% ↑
|
1975年 | 401,170 |
-0.05% ↓
|
1974年 | 401,363 |
6.35% ↑
|
1973年 | 377,403 |
1.77% ↑
|
1972年 | 370,838 |
-2.03% ↓
|
1971年 | 378,533 |
-5.76% ↓
|
1970年 | 401,666 |
-11.08% ↓
|
1969年 | 451,700 |
-9.88% ↓
|
1968年 | 501,200 |
-10.88% ↓
|
1967年 | 562,400 |
-10.93% ↓
|
1966年 | 631,400 |
-12.66% ↓
|
1965年 | 722,900 |
-13.27% ↓
|
1964年 | 833,500 |
-10.33% ↓
|
1963年 | 929,500 |
-10.39% ↓
|
1962年 | 1,037,300 |
-10.46% ↓
|
1961年 | 1,158,500 | - |
ドイツの馬飼養数推移を振り返ると、複数の大きな変動要因を読み取ることができます。1960年代から1970年代前半にかけての急激な減少は、主に農業や輸送手段の効率化、自動車や機械化の普及といった技術革新によるものです。農場や個人の移動手段として活躍していた馬は、トラクターや自動車の普及に伴いその役割を失い、これが大規模な飼養数の減少に直結しました。
1970年代後半から1980年代は、飼養数が概ね安定する時期に入りました。この期間は、馬術スポーツやレクリエーションとしての乗馬需要が徐々に増加したことが要因とされています。それに加え、冷戦下における東西ドイツ分断の影響で、地域間競争や経済の分断がいくばくか馬の文化を維持する役割を担った側面も考えられます。しかしながら、とりわけ1980年代末以降の冷戦終結とドイツ再統一は、新たな局面を迎える契機となりました。
1990年代の飼養数の回復は特筆すべき動向と言えます。この時期には、乗馬が健康志向の高まりやレクリエーション活動としてますます人気を博したほか、東ドイツ地域の農地や資源の統合が馬産業に利益をもたらしたとみられます。この成長は1997年の670,000頭という数値にて頂点に達しました。しかしその後、再び下降線をたどることとなります。
2000年代に入ると、全体として再び減少傾向が顕著になります。この背景には、飼養コストの上昇や都市化に伴う飼養スペースの減少、そして馬の維持には多大な資源が必要であることが個人や家庭への経済的負担となったことが挙げられます。また、2008年の世界金融危機や2010年代の欧州経済停滞が産業全体に大きな影響を与えました。
直近の動向では、新型コロナウイルスの影響を受けた2020年代初頭においても、一時的な外出やレクリエーションの制限が馬関連の市場やサービスに打撃を与えたことが懸念されます。多くの個人や施設が馬の飼養を困難とし、これが減少のさらなる一因となった可能性もあります。
ドイツが今後直面する課題としては、馬産業における持続可能性の確保が挙げられます。都市化や地価上昇による飼養スペースの確保が難しくなる中、馬術競技や観光業での需要拡大は重要な方向性となります。さらに、再生可能エネルギーや農業と関連付けたエコシステムを形成し、馬をこうした新たな産業やライフスタイルに再統合することが求められます。例えば、馬を使ったエコトレイルツーリズムや地元特化型の小規模馬育成事業への補助政策が有効な具体策と言えるでしょう。
国際的な視点では、ドイツはイギリスやフランスなど他の欧州諸国と同様、馬術スポーツにおいて高い評価を受けています。そのため、競技馬への投資の活性化や関連施設の整備がドイツの馬文化と経済両方の復興につながる可能性があります。一方で、近年の気候変動による飼料価格の高騰や地政学的リスクが馬飼養の安定性にさらなるプレッシャーを与えており、これに対する国際的な協力も必要です。
結論として、ドイツは馬に対する役割や価値を再定義する段階にあると言えます。馬術スポーツの推進、持続可能な農業との連携、そして新たな観光や文化的活用といった多角的なアプローチが飼養数の持続的改善に寄与すると考えられます。ドイツ国内だけでなく、国際的なフレームワークを活用した戦略的支援が推進されることで、馬産業の将来には再び明るい展望が開けるでしょう。