Skip to main content

ドイツの牛飼養数推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、ドイツの牛飼養数は、1960年代から1980年代中盤にかけて増加傾向を示し、1984年には過去最高となる21,319,520頭を記録しました。しかし、それ以降は徐々に減少に転じ、2022年時点では10,996,960頭と記録されています。この約60年間で半分近く減少しており、特に1990年代初頭には急激な減少が見られました。

年度 飼養数(頭) 増減率
2023年 10,836,200
-1.46% ↓
2022年 10,996,960
-0.39% ↓
2021年 11,039,660
-2.32% ↓
2020年 11,301,860
-2.9% ↓
2019年 11,639,530
-2.59% ↓
2018年 11,949,090
-2.7% ↓
2017年 12,281,195
-1.49% ↓
2016年 12,466,586
-1.34% ↓
2015年 12,635,456
-0.84% ↓
2014年 12,742,190
1.23% ↑
2013年 12,587,020
0.88% ↑
2012年 12,477,389
-0.68% ↓
2011年 12,562,600
-1.93% ↓
2010年 12,809,492
-1.05% ↓
2009年 12,944,903
-0.19% ↓
2008年 12,969,674
2.23% ↑
2007年 12,686,644
-0.48% ↓
2006年 12,747,900
-2.2% ↓
2005年 13,034,500
-1.22% ↓
2004年 13,195,800
-3.28% ↓
2003年 13,643,703
-4.1% ↓
2002年 14,226,600
-2.34% ↓
2001年 14,567,737
-0.62% ↓
2000年 14,657,901
-1.9% ↓
1999年 14,942,024
-1.87% ↓
1998年 15,227,152
-3.38% ↓
1997年 15,759,573
-0.82% ↓
1996年 15,889,915
-0.45% ↓
1995年 15,962,237
0.41% ↑
1994年 15,896,620
-1.92% ↓
1993年 16,207,340
-5.41% ↓
1992年 17,133,800
-12.08% ↓
1991年 19,488,000
-3.94% ↓
1990年 20,287,824
-0.4% ↓
1989年 20,369,056
-1.16% ↓
1988年 20,607,440
-2.38% ↓
1987年 21,108,928
-1.6% ↓
1986年 21,453,088
-0.38% ↓
1985年 21,535,968
1.02% ↑
1984年 21,319,520
2.55% ↑
1983年 20,788,576
0.23% ↑
1982年 20,741,296
-0.24% ↓
1981年 20,791,952
0.71% ↑
1980年 20,645,840
0.32% ↑
1979年 20,579,216
1.31% ↑
1978年 20,312,288
1.73% ↑
1977年 19,967,808
-0.29% ↓
1976年 20,024,928
0.05% ↑
1975年 20,014,880
0.85% ↑
1974年 19,845,504
2.98% ↑
1973年 19,271,360
1.8% ↑
1972年 18,930,864
-1.48% ↓
1971年 19,216,160
-1.24% ↓
1970年 19,457,408
1.5% ↑
1969年 19,170,192
0.9% ↑
1968年 18,999,696
0.57% ↑
1967年 18,891,600
2.44% ↑
1966年 18,442,496
3.99% ↑
1965年 17,735,488
0.61% ↑
1964年 17,627,696
-1.31% ↓
1963年 17,862,288
0.21% ↑
1962年 17,824,288
1.61% ↑
1961年 17,542,592 -

ドイツの牛飼養数の推移を振り返ると、1960年代から1980年代中盤にかけては一貫して増加していました。1984年に記録された21,319,520頭は、工業化と農業技術の発展により生産性の向上を目指していた背景を反映したものと考えられます。しかし、1984年を境に牛の飼養数は減少を始め、特に1990年代初頭からその傾向が顕著になりました。この急激な変化には、いくつかの重要な要因が関与しています。

まず、1990年代初頭の再統一が挙げられます。再統一により東ドイツ地域の農業構造が大幅に変化し、旧東ドイツの大規模な国営農場が縮小または解体されました。これに伴い、牛の飼養数が急激に減少する結果となりました。また、EUへの統合が進む中で共通農業政策が適用され、補助金や生産規制の影響も牛飼養に影響を与えました。

さらに、市場や消費者の需要変動も重要な要因です。近年では健康志向や環境意識の高まりが進み、肉類や乳製品の消費が減少傾向にあります。これに伴い、生産者は飼養する牛の頭数を調整し、生産効率を高める方向へ舵を切ることを余儀なくされています。

一方で、地政学的なリスクや疫病の影響も無視できません。例えば、1990年代の狂牛病(BSE)発生やその後の厳格な衛生規制、近年の新型コロナウイルスのパンデミックによる物流や市場の混乱も、牛飼養数に間接的ながら影響を及ぼしました。また、環境保護の観点から畜産業が温室効果ガスの排出源とされ、その規模縮小が求められていることも減少の要因と言えるでしょう。

ドイツ国内での牛飼養数の減少は、当然国内市場にとどまらず、国際的な流れとも連動しています。同じ欧州のフランスやイギリスでも、肉および乳製品産業の圧縮や効率化が進行しています。一方でドイツや他のEU諸国での生産減少により、輸入品の需要が増え、例えばアメリカやブラジルなどの輸出国へ恩恵がもたらされる一方、環境負荷がその地域にシフトするという課題も新たに浮上しています。

今後の展望として、ドイツではいかに効率的かつ持続可能な畜産業を展開していくかが課題となります。そのためには、牛一頭あたりの乳生産量や肉生産性をさらに向上させるための技術開発が必要です。また、畜産業に適応した環境規制をうまく取り込み、持続可能な農業を推進するリーダーシップが必要です。他国との差別化を図るため、環境負荷の少ない生産方法やサステナブルな認証制度を活用することも効果的です。

さらに、地域の衝突や自然災害が畜産供給網に影響を与える可能性を見据え、地域間の協力や多国間の貿易協定を通じて供給の安定を図ることも重要です。例えば、EU内での連携強化や、肉・乳製品以外の代替たんぱく質源の開発支援なども一考の価値があります。

結論として、ドイツの牛飼養数の減少は、国内外のさまざまな要因が複雑に絡み合った結果です。これは単なる生産量の減少という視点ではなく、消費者、環境、政策の全方面での変化を反映した現象と言えます。今後、政策や技術の両面で柔軟かつ包括的な対応が求められていくでしょう。