国際連合食糧農業機関(FAO)のデータによれば、1961年から2022年までのドイツの小麦生産量は一貫して増加した時期もあれば、一時的な減少の波も見られる複雑な推移を示しています。1961年の約507万トンからスタートし、1990年代には約1,500万トンに達しました。その後も増加傾向は続き、2000年代には2,000万トンを超え、2004年に2,500万トンを突破しました。2014年には最高値となる約2,778万トンを記録しましたが、その後は減少と増加を繰り返し、2022年には約2,259万トンの生産量となっています。
ドイツの小麦生産量推移(1961-2022)
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2022年 | 22,587,300 |
2021年 | 21,459,200 |
2020年 | 22,172,100 |
2019年 | 23,062,600 |
2018年 | 20,263,500 |
2017年 | 24,481,600 |
2016年 | 24,463,800 |
2015年 | 26,549,500 |
2014年 | 27,784,700 |
2013年 | 25,019,100 |
2012年 | 22,409,300 |
2011年 | 22,782,700 |
2010年 | 23,782,955 |
2009年 | 25,192,350 |
2008年 | 25,988,564 |
2007年 | 20,828,077 |
2006年 | 22,427,900 |
2005年 | 23,692,700 |
2004年 | 25,427,210 |
2003年 | 19,259,811 |
2002年 | 20,817,740 |
2001年 | 22,837,837 |
2000年 | 21,621,548 |
1999年 | 19,615,366 |
1998年 | 20,187,491 |
1997年 | 19,826,755 |
1996年 | 18,921,683 |
1995年 | 17,763,312 |
1994年 | 16,480,510 |
1993年 | 15,766,533 |
1992年 | 15,541,661 |
1991年 | 16,611,967 |
1990年 | 15,241,870 |
1989年 | 14,509,067 |
1988年 | 15,620,731 |
1987年 | 13,971,181 |
1986年 | 14,601,295 |
1985年 | 13,801,524 |
1984年 | 14,125,965 |
1983年 | 12,548,219 |
1982年 | 11,370,906 |
1981年 | 11,254,906 |
1980年 | 11,253,864 |
1979年 | 11,177,128 |
1978年 | 11,265,143 |
1977年 | 10,149,096 |
1976年 | 9,416,595 |
1975年 | 9,749,836 |
1974年 | 10,914,574 |
1973年 | 9,995,657 |
1972年 | 9,351,589 |
1971年 | 9,631,772 |
1970年 | 7,794,037 |
1969年 | 7,987,161 |
1968年 | 8,575,084 |
1967年 | 7,830,615 |
1966年 | 6,053,960 |
1965年 | 6,149,342 |
1964年 | 6,551,198 |
1963年 | 6,135,981 |
1962年 | 5,906,465 |
1961年 | 5,076,707 |
ドイツの小麦生産量の推移は、農業技術の進歩や経済的要因、環境条件の変化など、様々な要因が絡み合った結果として表れています。1960年代から1970年代にかけての小麦生産量の増加は、農業生産性の向上や地力の確保、そして気候条件に大きく依存していました。この時期に、改良された品種や肥料の活用が普及したことも要因のひとつです。1970年代後半から1980年代にかけては持続的な増加が見られ、1980年代半ばからは年によって1,000万トン以上の変動を見せるようになりました。
1990年代には、ドイツ再統一に伴い、旧東ドイツ地域の農地の統合が、総生産量の急増に影響を与えました。この時期に、小麦の大規模生産が可能となる農地改革が進んだことが、ドイツ農業の大きな強みとして働きました。1996年以降のデータでは、年間2,000万トン以上の水準を維持するようになり、特に2000年から2014年にかけては、小麦の生産量はさらに上昇しました。この間、ヨーロッパ全体で農作物の市場価値が変動する中、ドイツは安定した供給国としての地位を固めることができました。
しかし、2018年以降は、気候変動が原因とされる異常気象の影響が顕著になり、これが生産量に影響を及ぼしました。酷暑や降雨量の不足といった条件は収穫に深刻な影響を与え、特に2018年には前年の水準から約4,000万トン近く減少し、約2,026万トンに落ち込みました。その後も生産量は回復基調にあるものの、持続的な増加を維持するには至っていません。この点では、日本やフランス、イギリスといった他の主要農業国と同様に、気候変動が農業生産に与えるリスクが顕在化していると言えるでしょう。
ドイツの小麦生産が抱える主な課題は、気候変動への適応、耕作地の維持、そして市場価格の安定化です。特に、豪雨や干ばつといった気象変動に対応するための品種改良や技術的支援の強化が不可欠です。同時に、ヨーロッパ全体で協力し、農業環境の安定や支援体制を強化する取り組みを進める必要があります。
具体策としては、気候耐性に優れた小麦品種の開発と普及、新しい農業技術のさらなる導入、そして持続可能な土壌管理の実践が挙げられます。また、災害リスクの高まりを受け、ヨーロッパ各国との協力枠組みを通じて食糧貯蓄体制を構築し、供給の安定を図ることも重要です。
欧州全体では、ウクライナ戦争やエネルギー問題が農業への影響を与えており、これが輸出入の動向や価格設定に複雑な影響を及ぼしています。ドイツにとっては、国内生産の安定化に加えて、欧州域内の協調的な食糧政策が、今後さらに重要な課題となるでしょう。