国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、ドイツでは羊の飼養数が長期的に大幅な減少傾向を示しています。特に1961年には約305万匹であった飼養数が、2022年には約152万匹まで半減しています。近年のデータでは減少幅が鈍化しているものの、依然として過去の水準には遠く及びません。この統計は、ドイツの羊産業を取り巻く変化や課題を反映したものと見られています。
ドイツの羊飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(匹) |
---|---|
2022年 | 1,516,900 |
2021年 | 1,508,100 |
2020年 | 1,483,700 |
2019年 | 1,556,500 |
2018年 | 1,569,900 |
2017年 | 1,579,800 |
2016年 | 1,574,300 |
2015年 | 1,579,789 |
2014年 | 1,600,776 |
2013年 | 1,893,300 |
2012年 | 1,657,800 |
2011年 | 2,088,500 |
2010年 | 2,088,541 |
2009年 | 2,350,400 |
2008年 | 2,437,000 |
2007年 | 2,537,791 |
2006年 | 2,560,300 |
2005年 | 2,642,400 |
2004年 | 2,696,980 |
2003年 | 2,722,000 |
2002年 | 2,771,000 |
2001年 | 2,700,000 |
2000年 | 2,743,000 |
1999年 | 2,724,000 |
1998年 | 2,870,000 |
1997年 | 2,884,000 |
1996年 | 2,954,000 |
1995年 | 2,990,000 |
1994年 | 2,882,000 |
1993年 | 3,001,000 |
1992年 | 3,003,000 |
1991年 | 3,252,000 |
1990年 | 4,135,247 |
1989年 | 4,098,679 |
1988年 | 4,069,621 |
1987年 | 4,029,976 |
1986年 | 3,883,174 |
1985年 | 3,827,111 |
1984年 | 3,576,943 |
1983年 | 3,370,328 |
1982年 | 3,277,033 |
1981年 | 3,216,941 |
1980年 | 3,124,726 |
1979年 | 3,100,888 |
1978年 | 3,062,551 |
1977年 | 2,961,332 |
1976年 | 2,969,531 |
1975年 | 2,887,144 |
1974年 | 2,757,264 |
1973年 | 2,564,320 |
1972年 | 2,457,400 |
1971年 | 2,440,000 |
1970年 | 2,536,800 |
1969年 | 2,623,300 |
1968年 | 2,628,300 |
1967年 | 2,740,200 |
1966年 | 2,759,800 |
1965年 | 2,812,900 |
1964年 | 2,797,700 |
1963年 | 2,772,800 |
1962年 | 2,939,700 |
1961年 | 3,052,100 |
ドイツの羊飼養数の推移データを詳細に分析すると、いくつかの特徴的な時期と背景要因が浮かび上がります。まず、1961年から1989年までは不規則な増減を見せながらも、全体としては増加傾向が観察され、1990年にはピークの約413万匹を記録しました。この増加は、第二次世界大戦後の経済再建期において、農業が国の基盤産業として重視され、羊毛や食肉としての羊の需要が拡大したことに起因しています。しかし、1990年以降の劇的な減少は、東西ドイツ統一、農業の構造変化、そして国際競争力の喪失が大きく影響しています。
特に1991年から1995年の間では、約100万匹以上の減少が見られます。これは、旧東ドイツ地域での羊産業が衰退したこと、EU圏内での市場統合が進む中で安価な輸入羊肉との競争が激化したことが主な要因です。また、2000年代に入ると、さらなる減少が進み、2010年代には非常に顕著になります。2010年以降の急減(例えば、2010年の約208万匹から2014年の約160万匹への低下)は、気候変動に起因する飼料生産の難航や農家の高齢化、さらに都市化による農地の減少など、複合的な要因の影響とされています。
一方で、近年のデータでは減少幅がやや安定している兆しが見られます。2020年の約148万匹から2022年の約152万匹への小幅な増加は、政策的な支援や地産地消の推進、また羊毛や食品としての羊肉の価値の見直しが進んだことを示唆しています。しかし、この回復傾向が持続可能かどうかは未知数であり、新たな課題が見込まれています。
重要な課題として、ドイツ全体での農業労働人口の高齢化が挙げられます。羊飼育に従事する人々は特に専門性が求められますが、若年層の農業への関与意欲は低迷しています。また、地政学的には、ウクライナ危機によるエネルギー価格の高騰が畜産全般に影響を及ぼし、羊飼育業者のコスト負担が重くなっているとの指摘があります。
これらの課題に対処するためには、農業の競争力向上と社会的価値の認知が必要です。具体的な対策としては、羊飼育を支援するための補助金制度の拡充や、オーガニック製品市場をターゲットにした高品質羊肉・羊毛のブランディング戦略が挙げられます。また、農業分野における若者の雇用促進という観点から、研修制度の整備や移住者受け入れ政策の強化も効果が期待されます。
結論として、ドイツ国内での羊飼養数の減少は複雑な背景を持つ現象であり、単純に市場の縮小だけで説明できない側面があります。環境的、経済的、社会的な多方面からのアプローチを統合的に進めることで、羊飼育業の持続可能性を高めることが重要です。また、この問題に国際機関や地域間協力の枠組みを活用することも、長期的な解決策の鍵となるでしょう。