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ドイツのラズベリー生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、ドイツのラズベリー生産量の変遷は、1960年代には20,000トン台で安定していたものの、1980年代後半から1990年代にかけて生産量が増加しピークを迎えました。しかし、2000年代には急激な減少を記録し、2010年代以降は5,000~7,500トンの範囲内で推移しています。2023年の生産量は6,670トンとなり、過去のピーク時と比較すると大幅な減少を見せています。このデータは、農業政策の転換や市場競争、気候変動といった複数の要因が影響している可能性を示唆しています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 6,670
-1.48% ↓
2022年 6,770
-3.56% ↓
2021年 7,020
-1.68% ↓
2020年 7,140
-5.31% ↓
2019年 7,540
10.56% ↑
2018年 6,820
7.33% ↑
2017年 6,354
13.12% ↑
2016年 5,617
-0.25% ↓
2015年 5,631
1.22% ↑
2014年 5,563
9.38% ↑
2013年 5,086
9% ↑
2012年 4,666
-2.34% ↓
2011年 4,778
-8.33% ↓
2010年 5,212
2.84% ↑
2009年 5,068
-4.99% ↓
2008年 5,334
-13.84% ↓
2007年 6,191
-13.97% ↓
2006年 7,196
2.8% ↑
2005年 7,000
-65.06% ↓
2004年 20,034
0.17% ↑
2003年 20,000
-32.66% ↓
2002年 29,700
1.71% ↑
2001年 29,200
-13.35% ↓
2000年 33,700
-5.07% ↓
1999年 35,500
18.73% ↑
1998年 29,900
10.17% ↑
1997年 27,141
3.62% ↑
1996年 26,193
-2.99% ↓
1995年 27,000 -
1994年 27,000
-8.47% ↓
1993年 29,500
-6.35% ↓
1992年 31,500
37.53% ↑
1991年 22,904
-15.92% ↓
1990年 27,241
-9.2% ↓
1989年 30,000
7.14% ↑
1988年 28,000
12% ↑
1987年 25,000 -
1986年 25,000
-5.2% ↓
1985年 26,371
-0.81% ↓
1984年 26,586
7.85% ↑
1983年 24,651
3.34% ↑
1982年 23,855
25.85% ↑
1981年 18,955
-8% ↓
1980年 20,603
-8.26% ↓
1979年 22,457
1.19% ↑
1978年 22,194
21.31% ↑
1977年 18,295
-0.72% ↓
1976年 18,427
-21.18% ↓
1975年 23,378
14.6% ↑
1974年 20,400
-10.64% ↓
1973年 22,829
3.51% ↑
1972年 22,054
-0.26% ↓
1971年 22,111
-10.87% ↓
1970年 24,807
-0.36% ↓
1969年 24,896
2.53% ↑
1968年 24,282
8.39% ↑
1967年 22,403
-10.72% ↓
1966年 25,092
20.36% ↑
1965年 20,848
0.9% ↑
1964年 20,663
-7.85% ↓
1963年 22,423
7.98% ↑
1962年 20,765
2.74% ↑
1961年 20,212 -

ドイツにおけるラズベリー生産量の長期的な推移を確認すると、いくつかの顕著な変化がみられます。1960年代から1980年代までは年間20,000~25,000トンの範囲内で比較的安定した生産が続いていましたが、1988年から1999年にかけての間で生産量は急激に増加しました。この期間、特に1999年には35,500トンと最も高い生産量を記録しています。この増加の背景には、当時のヨーロッパ全体での果物需要の拡大や栽培技術の改良、EU農業政策の恩恵が関わっていると考えられます。

しかし、2000年代に入ると、ドイツのラズベリー生産量は驚くほど急激に減少し、2005年以降は10,000トンを下回るようになりました。特に2008年からの数年間は、5,000トン程度で推移しており、これは1990年代の水準に比べて約6分の1ほどの生産量にとどまっています。この劇的な減少の要因として挙げられるのは、第一に、気候変動の影響による高温や異常気象の発生です。ドイツは温暖化の影響を強く受けており、ラズベリーの栽培環境が最適ではなくなっています。また、EU域内での農業競争が激化し、生産コストが低い東ヨーロッパ諸国(例:ポーランド、ハンガリー)から安価なラズベリーが輸入されることで国内生産が圧迫されました。さらに、比較的規模の小さいラズベリー生産農家がコストを理由に他の作物へ転換したことも大きな影響を与えています。

2010年代以降、ドイツのラズベリー生産量は年間5,000~7,500トンの間で安定したものの、復活の兆しは見られていません。2023年の生産量は6,670トンで、2022年とほぼ同水準にとどまりました。この状況を踏まえると、ドイツのラズベリー生産は輸入品への依存度が高まり、消費市場において国内産との競争がますます厳しくなる可能性があります。

この課題を克服し、持続可能なラズベリー生産を確立するためには、いくつかの対策が求められます。一つは、気候変動へのレジリエンスを高めるための栽培技術の向上です。例えば、高温や乾燥に強いラズベリーの品種を開発し、精密農業技術を用いて最適な栽培環境を作ることが考えられます。また、政府や地域団体は農業補助金を充実させ、特に労働集約型であるラズベリー栽培を支援する取り組みが必要です。加えて、地元産ラズベリーのマーケティングを強化し、消費者に地域的魅力や環境への配慮を訴えるアプローチも有効です。

さらに、ドイツ国内だけでなくEU域内での協力体制も鍵となるでしょう。一部の東ヨーロッパ諸国は、ドイツと同様にラズベリー生産に課題を抱えており、技術や知識の共有を通じてEU全体の果物生産の安定化を目指すことができます。このような地域間協力は、輸入競争への過剰な依存を防ぐとともに、農業者の地位向上にも寄与します。

結論として、ドイツのラズベリー生産量推移は、気候変動や競争環境の変化による大きな影響を象徴的に示しています。この減少傾向を解消し、持続可能な生産を実現するためには、政府の助成や技術革新、地域間協力などの包括的な戦略が求められています。将来的には、輸入に依存しない形での国内果物市場の自立を目指しつつ、環境や経済の両面でバランスの取れた政策が不可欠となるでしょう。

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