FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、コートジボワールのパイナップル生産量は、1961年の32,000トンから1970年代半ばまで急増し、1978年には312,156トンのピークを迎えました。しかし、その後は生産量が不安定となり、2000年代後半から急激に減少傾向が確認されています。最新の2023年には34,806トンと、かつてのピーク時に比べて大幅に減少しています。この推移は、国内外におけるさまざまな要因の影響を反映しています。
コートジボワールのパイナップル生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
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2023年 | 34,806 |
-14.15% ↓
|
2022年 | 40,545 |
-4.14% ↓
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2021年 | 42,297 |
40.99% ↑
|
2020年 | 30,000 |
-38.9% ↓
|
2019年 | 49,100 |
51.08% ↑
|
2018年 | 32,500 |
-33.54% ↓
|
2017年 | 48,900 |
25.71% ↑
|
2016年 | 38,900 |
-21.89% ↓
|
2015年 | 49,800 |
-18.81% ↓
|
2014年 | 61,336 |
-14.81% ↓
|
2013年 | 72,000 |
1.02% ↑
|
2012年 | 71,276 |
2.22% ↑
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2011年 | 69,727 |
2.22% ↑
|
2010年 | 68,212 |
2.22% ↑
|
2009年 | 66,730 |
-22.54% ↓
|
2008年 | 86,147 |
-46.05% ↓
|
2007年 | 159,668 |
-9.64% ↓
|
2006年 | 176,698 |
-9.52% ↓
|
2005年 | 195,294 |
-9.58% ↓
|
2004年 | 215,989 |
-11.2% ↓
|
2003年 | 243,242 |
6.92% ↑
|
2002年 | 227,501 |
-8.59% ↓
|
2001年 | 248,890 |
4.58% ↑
|
2000年 | 238,000 |
-5.56% ↓
|
1999年 | 252,000 |
17.77% ↑
|
1998年 | 213,974 |
-14.6% ↓
|
1997年 | 250,556 |
-0.05% ↓
|
1996年 | 250,688 |
19.59% ↑
|
1995年 | 209,628 |
-0.97% ↓
|
1994年 | 211,686 |
4.31% ↑
|
1993年 | 202,949 |
5.14% ↑
|
1992年 | 193,033 |
-4.24% ↓
|
1991年 | 201,571 |
-13.32% ↓
|
1990年 | 232,543 |
29.56% ↑
|
1989年 | 179,480 |
-8.39% ↓
|
1988年 | 195,918 |
-13.76% ↓
|
1987年 | 227,178 |
-16.92% ↓
|
1986年 | 273,453 |
-6.99% ↓
|
1985年 | 293,997 |
31.66% ↑
|
1984年 | 223,293 |
22.12% ↑
|
1983年 | 182,853 |
-18.32% ↓
|
1982年 | 223,861 |
-25.15% ↓
|
1981年 | 299,065 |
1.81% ↑
|
1980年 | 293,744 |
0.63% ↑
|
1979年 | 291,900 |
-6.49% ↓
|
1978年 | 312,156 |
29.15% ↑
|
1977年 | 241,702 |
-9.64% ↓
|
1976年 | 267,491 |
11.59% ↑
|
1975年 | 239,705 |
5.07% ↑
|
1974年 | 228,131 |
3.7% ↑
|
1973年 | 220,000 |
19.57% ↑
|
1972年 | 184,000 |
19.48% ↑
|
1971年 | 154,000 |
24.19% ↑
|
1970年 | 124,000 |
20.39% ↑
|
1969年 | 103,000 |
-3.29% ↓
|
1968年 | 106,500 |
2.4% ↑
|
1967年 | 104,000 |
26.37% ↑
|
1966年 | 82,300 |
32.74% ↑
|
1965年 | 62,000 |
12.73% ↑
|
1964年 | 55,000 |
19.57% ↑
|
1963年 | 46,000 |
27.78% ↑
|
1962年 | 36,000 |
12.5% ↑
|
1961年 | 32,000 | - |
コートジボワールは、アフリカでも重要な農業生産国として知られていますが、とくにパイナップルの生産は国の農業経済において重要な役割を果たしてきました。1960年代から1970年代にかけて、政府の積極的な農業政策や輸出市場の拡大に支えられて、生産量は一貫して増加しました。特に1978年の312,156トンという生産量は、国内農業の活力を示す象徴的な記録です。この時期、コートジボワールは西アフリカにおける主要なパイナップル輸出国としての地位を確立し、ヨーロッパ市場でもその影響力を拡大しました。
しかし、1980年代に入ると生産量は不安定さを見せ始め、1990年代以降は減少傾向が顕著となりました。この背景には、いくつかの要因が挙げられます。第一に、国内の政治的不安定さと内戦の影響が生産活動に直接的な支障をもたらしました。農地の荒廃、農業インフラの損壊、および農業従事者の離散などは、生産基盤を弱体化させました。第二に、国際市場における競争の激化も影響しています。同じくパイナップル生産を推進するフィリピンやコスタリカなどの国々は、効率的な生産手法や輸送コストの削減で競争力を高め、輸出市場のシェアを広げました。こうした状況の中で、コートジボワールの輸出競争力は相対的に低下しました。
さらに、2000年代後半の急激な生産量の崩落は、一時的ではありますが国際的な金融危機、気候変動、土地利用の変化といった外部要因の影響を受けています。特に、北部地域での干ばつや洪水などの自然災害が、パイナップルの栽培に影響を及ぼしました。また、2014年以降の生産量の深刻な減少は、農業労働者の高齢化と若い世代の都市部への移住が要因となり、労働力の不足が浮き彫りとなっています。
現在の課題として挙げられるのは、生産量の低迷に伴う国内外市場での存在感の低下だけでなく、農業の持続可能性への取り組みが十分でないことです。具体的には、気候変動に対応した耐性種の開発、農業従事者への技術支援や資金援助、さらには輸出市場におけるブランド力の再構築が急務と考えられます。他国の成功例を見ても、持続可能な農業管理とデジタル技術の導入が競争力の向上に大きく寄与していることがわかります。たとえば、コスタリカが環境配慮型の生産体制を積極的に導入し、欧州市場で高い評価を得たように、コートジボワールもそうしたアプローチを推進する必要があります。
地政学的背景も無視できません。国際市場での競争激化だけでなく、国内の安定性確保が重要な鍵を握っています。特に、内戦や地域紛争の余波が再び広がる可能性がある状況では、農業セクターにおけるリスク管理は不可欠となります。
結論として、コートジボワールのパイナップル生産の歴史を振り返ると、1960年代から1970年代にかけての急成長を再現するためには、生産技術の近代化と国際的な競争力の向上が必要です。具体的な対策としては、農業インフラの復旧と強化、耐性種の普及、国際機関との連携による資金確保、そして教育プログラムを通じての次世代農業人材の育成が挙げられます。今後、持続可能な生産モデルを確立することで、コートジボワールは再び世界の市場での地位を高める可能性を秘めています。