コートジボワールのココナッツ生産量推移（1961年～2023年）

FAO（国際連合食糧農業機関）が発表したデータによると、コートジボワールのココナッツ生産量は1961年の12,000トンから1985年に390,000トンまで急激に増加しました。その後、1990年代以降は不安定な推移を示し、2000年代後半から一貫して減少しています。2023年には120,596トンとなり、ピーク時の1985年以降から大幅な下落が見られます。

コートジボワールはその豊かな土壌と熱帯気候から、伝統的に農業、特に輸出向け作物の生産に力を入れてきた国です。ココナッツは、同国の農業生産の中で重要な役割を担ってきた資源の一つです。その生産量推移を見ると、1961年から1985年にかけて生産量が急速に伸びています。1961年の12,000トンから1985年の390,000トンまで増加を記録しており、持続的な農業拡大に成功していたことが分かります。この時期の安定した成長には、土地拡張と農業技術の導入が背景にあったと考えられます。

しかし、1990年代以降は横ばいまたは減少傾向に転じています。この変動は、国内の政治的不安定や経済的な問題、環境要因が複雑に絡み合った結果だと考えられます。また、同時期に国際市場での競争が激化し、特にフィリピンやインドネシアのようなココナッツ生産上位国との価格競争も、コートジボワール生産者への負担を増やした可能性があります。

2005年以降、ココナッツ生産量は急激に減少し、2008年に記録した94,709トンという数値は、1970年前後の生産量にまで落ち込んでいます。この時期には、国内の農業基盤の衰退が進み、気候変動の影響も深刻化しました。たとえば乾燥やサイクロンの発生が収穫量に悪影響を及ぼしました。また、新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のパンデミックが広がった期間では、2020年以降、生産量が127,250トンから2023年には120,596トンまでさらに減少しており、ロジスティクスの混乱や経済活動の停滞が一因だったと考えられます。

さらに、地元農家の継続的な収益低下が、農業世代の断絶という問題を引き起こしています。特に若年層が農業から離れて都市部での職を求める傾向が強まり、持続可能な農業を維持する上での労働力不足が懸念されています。このような内部要因に加え、他国の主要生産国と比較すると競争力が低下しており、輸出機会の減少を招いています。

このまま放置すると、ココナッツ生産業の復興は厳しい状況が続く可能性があるため、以下の策が必要です。まず、金融支援や農業技術の普及により、生産基盤を強化する施策が不可欠です。具体的には、気候変動への適応力を高めるための耐性種の導入や、農業部門におけるデジタル化の活用を検討するべきです。さらに、地域間の連携を強化し、東南アジア諸国などの成功例を参考に効率的なモデルを取り入れることも有効です。

また、国内消費市場を拡大するための施策も必要です。現在のコートジボワールのココナッツ産業は海外市場への依存が高く、国内での消費が限られているため、加工品の開発を進めることで付加価値の向上を図れます。加えて、農民間の協同組合の形成を促進し、国際マーケットにおける交渉力を高めることも重要です。

さらに、地政学的な文脈では周辺地域の不安定性、例えば内陸国との紛争リスクが、輸出ルートや供給網の脆弱性を生む要因となっています。そのため、政府および国際支援機関との協力により、安定的な物流網を確保することも中長期的な課題といえます。

結論として、コートジボワールのココナッツ生産量の減少は単なる一時的な現象ではなく、構造的課題を含んでいます。この傾向を逆転させるためには、政府および国際社会が協力して具体的な対策を講じる必要があります。それにより、ココナッツ産業を持続可能で競争力のあるものに変えていくことが可能となります。