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アメリカ合衆国のパイナップル生産量推移(1961年~2023年)

FAO(国際連合食糧農業機関)が発表した最新データによると、アメリカ合衆国のパイナップル生産量は1960年代に80万トンを超える高い水準を記録しましたが、その後総じて減少傾向にあり、2023年には約16.8万トンにまで落ち込んでいます。特に1970年代後半から2000年代前半にかけては著しい減少が観察されます。この長期的な減少は、地政学的要因、経済的課題、競争相手国の台頭など複数の要因によるものと考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 168,208
-0.07% ↓
2022年 168,322
0.18% ↑
2021年 168,018
-0.16% ↓
2020年 168,284
-0.23% ↓
2019年 168,665
0.93% ↑
2018年 167,106
-1.17% ↓
2017年 169,080
-0.43% ↓
2016年 169,810
4.54% ↑
2015年 162,429
-7.18% ↓
2014年 175,000
1.74% ↑
2013年 172,000
-4.44% ↓
2012年 180,000
2.27% ↑
2011年 176,000
-4.58% ↓
2010年 184,444
-7.78% ↓
2009年 200,000
11.11% ↑
2008年 180,000
4.65% ↑
2007年 172,000
0.85% ↑
2006年 170,551
-11.32% ↓
2005年 192,323
-3.64% ↓
2004年 199,581
-26.67% ↓
2003年 272,156
-6.25% ↓
2002年 290,301
-0.93% ↓
2001年 293,022
-8.76% ↓
2000年 321,145
0.57% ↑
1999年 319,331
6.03% ↑
1998年 301,180
2.81% ↑
1997年 292,960
-7% ↓
1996年 315,000
0.64% ↑
1995年 313,000
-5.47% ↓
1994年 331,122
-1.35% ↓
1993年 335,660
-32.73% ↓
1992年 498,950
-0.9% ↓
1991年 503,500
-3.48% ↓
1990年 521,630
-0.87% ↓
1989年 526,200
-11.98% ↓
1988年 597,830
-4.77% ↓
1987年 627,800
7.13% ↑
1986年 586,040
14.34% ↑
1985年 512,560
-5.83% ↓
1984年 544,310
-16.9% ↓
1983年 655,000
7.76% ↑
1982年 607,810
5.35% ↑
1981年 576,970
-3.2% ↓
1980年 596,020
-3.52% ↓
1979年 617,790
0.89% ↑
1978年 612,350
-2.17% ↓
1977年 625,954
1.47% ↑
1976年 616,882
-5.56% ↓
1975年 653,170
2.86% ↑
1974年 635,026
-13.58% ↓
1973年 734,819
-14.47% ↓
1972年 859,099
0.53% ↑
1971年 854,567
-1.26% ↓
1970年 865,453
4.26% ↑
1969年 830,073
-0.65% ↓
1968年 835,516
-8.81% ↓
1967年 916,256
0.4% ↑
1966年 912,627
7.14% ↑
1965年 851,842
9.82% ↑
1964年 775,639
-7.47% ↓
1963年 838,234
3.82% ↑
1962年 807,390
3.73% ↑
1961年 778,360 -

アメリカ合衆国におけるパイナップル生産の推移を見ると、1960年代は依然として旺盛な生産規模を維持していました。しかし1970年代後半から2000年代にかけて生産量が急激に減少し、以降は低い生産水準で安定しています。この背景には、いくつかの地政学的および経済的な要因が影響していると推察されます。

まず、ハワイ州がアメリカ最大のパイナップル生産地であることに注目する必要があります。しかし、1970年代以降はハワイでの生産コストの増加が深刻な課題となりました。土地価格や労働コストの上昇、またアジアやラテンアメリカからの輸入パイナップルが低コストで流入したことで、国内市場の競争は厳しくなりました。また、ハワイの農業政策の変遷により、パイナップル産業以外の作物や開発事業への注力が高まり、結果的に生産量減少に寄与しました。

2000年代以降のデータに注目すると、生産量は概ね16万から18万トンの範囲で停滞しており、回復の兆しは乏しいようです。この範囲内での安定は、国内の需要減少よりも市場ニーズに合わせて縮小した生産規模によるものと考えられます。アメリカの消費者の需要が、新鮮なパイナップルよりも加工食品や輸入品に移行していることも影響しています。

このような状況下で、アメリカのパイナップル産業が直面している課題は多岐にわたります。例えば、地元産業を保護しつつ、どのように国際競争力を取り戻すか、また農業従事者に収益性の高い農業モデルを提供できるかが挙げられます。これらの課題を解決するためには、いくつかの具体的な対策が可能です。

まず、精密農業技術やデジタルアグリカルチャーの導入により、生産効率を劇的に改善することが有効です。これにより、労働コストや資源使用を削減し、国際市場での価格競争に対応できる可能性があります。また、現地産の高品質パイナップルを特化型商品としてプロモートし、例えば地元の観光業やプレミアム市場におけるブランド化を進めることが考えられます。さらに、政府や地方自治体の助成金を活用し、生産者への経済的支援を行うことも重要です。

一方で、地政学的リスクや気候変動も無視できません。特にトロピカルフルーツであるパイナップルは気象条件に強く影響を受けます。近年観測されている異常気象の頻発により、作物収量が不安定化するリスクが増大しています。災害リスク軽減策として、例えば灌漑技術の強化や耐性品種の導入などが重要です。

結論として、アメリカ合衆国のパイナップル生産量は、経済要因や国際競争、気候変動の影響を受け、50年以上にわたり減少傾向にあります。しかし、ここから学び得ることは、地域産業を強化するための戦略的投資の重要性です。農業政策の改善、新技術の導入、そして市場ニーズに適応したプロモーション活動を組み合わせることで、アメリカ国内のパイナップル生産の持続可能な発展が可能になるかもしれません。国際連携の枠組みを活用しながら、より長期的な視点での改善策に取り組む必要があります。