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アメリカ合衆国の大麦生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月の最新データによると、アメリカ合衆国の大麦生産量は1960年代から現代にかけて長期的な減少傾向にあります。ピーク時の1986年には13,249,000トンを記録しましたが、2023年には4,028,680トンと大幅に減少しています。また、特に2000年代以降の減少傾向が顕著で、生産量は一時3,000,000トンを下回る年もありました。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 4,028,680
6.14% ↑
2022年 3,795,650
45.17% ↑
2021年 2,614,650
-29.69% ↓
2020年 3,719,010
-0.98% ↓
2019年 3,755,720
12.36% ↑
2018年 3,342,660
7.17% ↑
2017年 3,119,070
-28.34% ↓
2016年 4,352,610
-6.71% ↓
2015年 4,665,770
18.04% ↑
2014年 3,952,610
-16.24% ↓
2013年 4,719,070
-1.02% ↓
2012年 4,767,940
41.48% ↑
2011年 3,370,110
-14.12% ↓
2010年 3,924,280
-20.46% ↓
2009年 4,933,700
-5.22% ↓
2008年 5,205,180
13.78% ↑
2007年 4,574,610
16.62% ↑
2006年 3,922,630
-14.97% ↓
2005年 4,613,490
-24.25% ↓
2004年 6,090,680
0.52% ↑
2003年 6,058,900
22.64% ↑
2002年 4,940,300
-8.63% ↓
2001年 5,406,730
-21.86% ↓
2000年 6,919,370
16.84% ↑
1999年 5,922,010
-22.63% ↓
1998年 7,654,510
-2.31% ↓
1997年 7,835,420
-8.3% ↓
1996年 8,544,220
9.2% ↑
1995年 7,824,490
-4.13% ↓
1994年 8,161,660
-5.82% ↓
1993年 8,666,320
-12.54% ↓
1992年 9,908,420
-1.99% ↓
1991年 10,109,510
9.98% ↑
1990年 9,192,000
4.45% ↑
1989年 8,800,000
39.37% ↑
1988年 6,314,000
-44.39% ↓
1987年 11,354,300
-14.3% ↓
1986年 13,249,000
3.11% ↑
1985年 12,850,000
-1.31% ↓
1984年 13,020,000
17.66% ↑
1983年 11,066,000
-1.49% ↓
1982年 11,232,900
8.96% ↑
1981年 10,309,300
31.12% ↑
1980年 7,862,600
-5.76% ↓
1979年 8,343,000
-15.74% ↓
1978年 9,901,210
6.31% ↑
1977年 9,313,713
11.69% ↑
1976年 8,338,828
1.01% ↑
1975年 8,255,115
26.95% ↑
1974年 6,502,621
-28.45% ↓
1973年 9,088,373
-1.02% ↓
1972年 9,181,666
-8.81% ↓
1971年 10,068,853
11.13% ↑
1970年 9,060,146
-2.56% ↓
1969年 9,298,494
0.21% ↑
1968年 9,279,401
14.01% ↑
1967年 8,138,822
-4.68% ↓
1966年 8,538,543
-0.24% ↓
1965年 8,559,056
1.81% ↑
1964年 8,406,892
-1.72% ↓
1963年 8,554,000
-8.16% ↓
1962年 9,314,000
8.99% ↑
1961年 8,546,000 -

大麦は、ビールやウィスキーの原料として用いられるほか、家畜飼料や健康食品としても広く利用されています。アメリカ合衆国はかつて、大麦生産の主要国の一つとして、国内供給のみならず国際市場においても重要な役割を果たしていました。しかし、最新データからは長期的な減少の傾向が明確であり、特に近年のトレンドには深刻な課題が浮かび上がっています。

アメリカの大麦生産量について、1960年代には8,000,000トン台の安定した生産量を維持していましたが、1970年代以降やや増減を繰り返しながら、1980年代の中盤には13,000,000トンを超える過去最高を記録しました。この時期、大麦は国内の穀物農業を支える主要作物の一つでした。しかし、それ以降は減少傾向が徐々に加速し、2000年代には年間生産量が5,000,000トンを下回る状況が恒常化し、さらに2010年代には3,000,000トン台に落ち込むまでになりました。この低迷は、2022年および2023年の若干の回復を除き、継続的な課題となっています。

このような動向には、いくつかの背景要因があります。まず、大麦よりも高収益が期待できるトウモロコシや大豆への農業用地の転換が大きな要因として挙げられます。また、アメリカ国内でのビール生産量や家畜飼料としての需要が減少していることも影響を与えています。さらに、気候変動による干ばつや極端な気象条件が作物生産全般に悪影響を与えており、大麦の栽培も例外ではありません。このような地政学的および気候的リスクは、アメリカ合衆国だけでなく、大麦の主要生産国である欧州諸国やオーストラリアにも類似の影響を及ぼしています。

生産増加が見られる2023年のデータは、大麦栽培に適した気象条件や新しい栽培技術の導入、品種改良の成果によるものとも考えられます。しかし、これを持続可能な成長につなげるためには、更なる政策的な支援が必要です。

まず、気候変動に対する適応策として、耐暑性や耐乾性に優れた品種の開発が急務となります。さらに、農業インフラの強化や水資源の効率的な管理を進めることで、気候リスクに対応する必要があります。また、農家への補助金制度や技術支援を充実させることで、生産意欲の維持と向上を図ることが求められます。一方で、日本や中国をはじめとしたアジアのビール市場では需要が依然として増加しているため、この輸出市場を狙った生産体制の強化も重要です。

他国との比較では、アメリカの大麦生産量は近年減少している一方で、欧州連合(特にドイツやフランス)やオーストラリアでは安定的な生産が続いています。この差は、各国の政策および生産技術の違いに起因すると考えられるため、他国の成功事例を積極的に採り入れることも有効です。

以上のように、大麦生産量の推移からは、国内外の需要の変化や自然条件の変動という課題が浮き彫りになります。今後、アメリカは国内の農業政策を強化し、特に気候変動に対応した持続可能で競争力のある生産システムを構築することが必要です。加えて、大麦の国際的な需要動向を踏まえ、新興市場を睨んだ輸出戦略も進めていくべきです。このような多角的な取り組みにより、アメリカの大麦産業が再び活気を取り戻すことを期待したいです。