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アメリカ合衆国の羊肉生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、アメリカ合衆国の羊肉の生産量は、長期的に見て著しい減少傾向を示しています。1961年には約37万トンの生産量でしたが、2023年には約6万トンと大幅に縮小しました。この下降傾向は、特に1970年代以降顕著であり、一時的な回復の時期を挟みつつも、全体として規模が縮小していることがわかります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 61,280
-0.81% ↓
2022年 61,779
-4.62% ↓
2021年 64,773
-0.21% ↓
2020年 64,910
-6.59% ↓
2019年 69,490
-3.16% ↓
2018年 71,758
5.32% ↑
2017年 68,130
-3.35% ↓
2016年 70,489
-0.13% ↓
2015年 70,580
-3.17% ↓
2014年 72,892
-0.25% ↓
2013年 73,074
0.19% ↑
2012年 72,938
4.89% ↑
2011年 69,536
-8.91% ↓
2010年 76,340
-5.02% ↓
2009年 80,377
-1.61% ↓
2008年 81,693
-1.04% ↓
2007年 82,550
-1.62% ↓
2006年 83,910
-1.07% ↓
2005年 84,820
-4.1% ↓
2004年 88,450
-3.86% ↓
2003年 92,000
-8.91% ↓
2002年 101,000
-0.2% ↓
2001年 101,200
-4.62% ↓
2000年 106,100
-5.69% ↓
1999年 112,500
-1.23% ↓
1998年 113,900
-3.47% ↓
1997年 118,000
-2.93% ↓
1996年 121,560
-6.64% ↓
1995年 130,200
-6.8% ↓
1994年 139,700
-8.63% ↓
1993年 152,900
-3.14% ↓
1992年 157,850
-4.13% ↓
1991年 164,650 -
1990年 164,650
4.61% ↑
1989年 157,400
3.55% ↑
1988年 152,000
6.29% ↑
1987年 143,000
-6.72% ↓
1986年 153,300
-5.37% ↓
1985年 162,000
-6.01% ↓
1984年 172,360
1.06% ↑
1983年 170,550
3.01% ↑
1982年 165,560
7.99% ↑
1981年 153,310
6.29% ↑
1980年 144,240
8.53% ↑
1979年 132,902
-5.18% ↓
1978年 140,159
-11.97% ↓
1977年 159,210
-5.39% ↓
1976年 168,282
-9.51% ↓
1975年 185,972
-11.83% ↓
1974年 210,919
-9.53% ↓
1973年 233,145
-5.34% ↓
1972年 246,299
-2.16% ↓
1971年 251,742
0.73% ↑
1970年 249,928
0.18% ↑
1969年 249,475
-8.64% ↓
1968年 273,061
-6.81% ↓
1967年 293,019
-0.62% ↓
1966年 294,834
-0.06% ↓
1965年 295,000
-9.04% ↓
1964年 324,316
-7.14% ↓
1963年 349,264
-4.82% ↓
1962年 366,954
-2.76% ↓
1961年 377,386 -

1961年にアメリカ合衆国が記録した羊肉生産量は約377,386トンであり、この当時、羊肉は食用肉の選択肢の一つとして一定の地位を占めていました。しかし、以降の数十年間で生産量は顕著に減少しました。2023年の生産量は61,280トンにまで落ち込み、この数値はピーク時の1961年の約16%程度に過ぎません。この長期的な減少傾向は、食生活の変化、農業生産の多様化、そして羊毛や羊乳などの副産物需要の減退に由来すると考えられます。

1970年代から1980年代にかけては、アメリカ国内の農業政策および家畜生育の構造的な変化が加速しました。牛肉や豚肉といった他の肉類が主流の地位を占める中で、羊肉の市場での競争力が低下しました。また、値段の競争力が強い輸入羊肉が市場でのシェアを拡大し、それにより国内生産に逆風が吹いたとも考えられます。さらに、都市化の進展により牧羊業に適した土地が減少していったことも重要な要因です。

近年、羊肉需要が安定的に低い背景として、アメリカにおける食文化の偏重が指摘されています。他の国、たとえばイギリスやフランスでは、羊肉は依然として主要な食材の一つですが、アメリカの消費者にとっては依然としてそれほど優先順位が高くありません。また、牧羊業が需要の低さを考慮して小規模な生産にシフトしていることも、縮小傾向を助長しています。

さらに、COVID-19のパンデミックなど外的なショックも、農業生産に影響を及ぼした可能性があります。これにより、物流課題が発生し、輸入肉の供給が不安定となったことが、国内生産レベルのさらなる低迷に繋がった可能性も考えられます。

この減少が及ぼす現実的な影響には、農村部経済の衰退や雇用機会の減少が含まれます。羊の飼育は広大な土地を活用できる産業であり、地方経済の活性化に寄与していました。しかし、需要不足にともなう生産縮小は、こうした地域の持続的な発展に影を落としています。

政策の観点で見ると、羊肉産業の再活性化には具体的な対策が必要です。例えば、羊肉の栄養価や味覚的な魅力に関するキャンペーンを展開し、消費者意識の向上を図ることが一つの手段です。さらに、地元で生産された羊肉の消費を奨励するための補助政策や、中小規模の牧畜農家への直接的な支援も考えられます。一方で、環境の持続可能性についても慎重な配慮が必要です。放牧地の適切な管理を行い、温室効果ガスの排出を抑える技術の導入を進めることが求められます。

また、地政学的観点も検討する必要があります。輸入肉が国内の市場競争を激化させており、特にニュージーランドやオーストラリアからの輸入がアメリカ市場への重要な供給源となっています。これが地元生産者への圧力となる一方、輸入が止まった場合に動揺が発生する可能性もあります。こうしたリスクを軽減するためには、国内生産の多様化による安定的な供給網の構築が重要といえます。

結論として、アメリカの羊肉産業は長期的な衰退傾向にありますが、輸入肉に依存しすぎる状況や、消費者需要喚起の問題点を解決することで、一定の回復可能性があります。国としては、補助金制度や地元製品のプロモーションを通じて国内産業を支援しつつ、持続可能な生産構造の導入を推進すべきです。これは地域経済や農村の繁栄に寄与するだけではなく、産業多様性の確保という観点でも極めて重要な施策となるでしょう。