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アメリカ合衆国のバナナ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2024年7月更新のデータによると、アメリカ合衆国のバナナ生産量は1960年代から長期的に比較的低水準で推移しています。1961年の4,007トンから始まり、1980年代後半に一時的な成長を見せましたが、2000年代後半以降は再び生産が減少傾向にあります。近年では2022年において3,517トンの生産量が記録されており、1990年代後半のピークと比較して大きく減少していることが分かります。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 3,537
0.55% ↑
2022年 3,517
-2.98% ↓
2021年 3,625
4.36% ↑
2020年 3,474
0.63% ↑
2019年 3,452
-12.6% ↓
2018年 3,950
30.79% ↑
2017年 3,020
-10.84% ↓
2016年 3,387
-37.77% ↓
2015年 5,443
-16.67% ↓
2014年 6,532
-1.36% ↓
2013年 6,622
-8.05% ↓
2012年 7,202
-8.76% ↓
2011年 7,893
-2.24% ↓
2010年 8,074
-3.77% ↓
2009年 8,390
6.34% ↑
2008年 7,890
-32.05% ↓
2007年 11,612
50.61% ↑
2006年 7,710
-18.67% ↓
2005年 9,480
25.9% ↑
2004年 7,530
-26.54% ↓
2003年 10,251
13.02% ↑
2002年 9,070
-28.59% ↓
2001年 12,701
-3.44% ↓
2000年 13,154
17.89% ↑
1999年 11,158
17.14% ↑
1998年 9,525
53.38% ↑
1997年 6,210
5.25% ↑
1996年 5,900 -
1995年 5,900
-5.75% ↓
1994年 6,260
17.01% ↑
1993年 5,350
-1.65% ↓
1992年 5,440
5.2% ↑
1991年 5,171
0.88% ↑
1990年 5,126
-5.77% ↓
1989年 5,440
-9.33% ↓
1988年 6,000
16.05% ↑
1987年 5,170
17.5% ↑
1986年 4,400
18.92% ↑
1985年 3,700
-8.42% ↓
1984年 4,040
98.04% ↑
1983年 2,040
-22.43% ↓
1982年 2,630
-3.31% ↓
1981年 2,720
30.14% ↑
1980年 2,090
-17.72% ↓
1979年 2,540
-1.93% ↓
1978年 2,590
-1.56% ↓
1977年 2,631
16.26% ↑
1976年 2,263
-19.52% ↓
1975年 2,812
-6.08% ↓
1974年 2,994
0.03% ↑
1973年 2,993
29.4% ↑
1972年 2,313
8.49% ↑
1971年 2,132
-15.93% ↓
1970年 2,536
-9.4% ↓
1969年 2,799
-4.86% ↓
1968年 2,942
-19.88% ↓
1967年 3,672
-7.95% ↓
1966年 3,989
22.81% ↑
1965年 3,248
-21.32% ↓
1964年 4,128
45.71% ↑
1963年 2,833
-18.99% ↓
1962年 3,497
-12.73% ↓
1961年 4,007 -

アメリカ合衆国のバナナ生産量の歴史的な推移を見ていくと、需要が国内外で比較的安定しているにもかかわらず、自国内での生産は全体として限定的であるといえます。最初のデータが記録された1960年代は、年間2,000~4,000トン程度の生産が続いていましたが、1980年代後半には一時的な成長が見られ、1998年には9,525トン、1999年には11,158トンと大幅な増加が記録されています。この増加は、気候条件や農業技術の改善、また特定の地域における栽培の拡大によるものと推測されています。

しかし、2000年代以降は気候変動による影響や農業人材の不足、国内競争力の低下などが影響し、生産量は減少傾向に転じました。特に2022年の3,517トンという生産量は、ピーク時であった2000年の13,154トンと比較して約73%の減少に相当します。この減少は、アメリカ合衆国のバナナ生産が持続可能性の観点でも重要な課題を抱えていることを示しています。

バナナ生産そのものに関しては、アメリカ国内では限定的ですが、これは地理的条件や経済的理由によるものと考えられます。バナナの栽培には熱帯または亜熱帯の気候が望まれますが、アメリカの主要農業地帯である中部や西部はこの条件に適していません。また、コスト面でも中南米諸国や東南アジア諸国からの輸入が遥かに効率的であり、国内生産の市場競争力が劣っている結果といえます。たとえば、隣国であるメキシコ、また輸出大国であるエクアドルやコスタリカは、アメリカ市場への主要な供給源となっています。

近年の生産量減少に関しては、気候変動も重要な要素となっています。乾燥化、洪水、熱波などの異常気象が栽培地域に悪影響を与え、病害虫の発生も増加しました。また、新型コロナウイルス感染症の流行は、労働力不足や物流の混乱を引き起こし、バナナ栽培にはさらなる悪影響を及ぼしました。これらの影響に加え、生産コストの上昇がさらに国内生産を抑制する要因となっています。

地政学的観点では、アメリカが主要輸入先とする中南米のバナナ輸出国においてバナナを巡る労働問題、病害、土地利用を巡る課題が依然として影響を及ぼしています。これらの輸出国における社会的・環境的リスクが、今後アメリカでのバナナ輸入の安定性に影響を与える可能性が指摘されています。

今後、アメリカが安定した供給を確保するためには、国内生産の増加への投資が一つの選択肢となります。効果的な温室栽培技術の導入や、ハリケーンが少ない地域における気候適応型農業の推進が考えられます。さらに、中南米諸国との協力を深め、バナナ生産の環境負荷を軽減しつつ輸出産業の安定化を図る政策も有望です。

結論として、アメリカ合衆国のバナナ生産量は長期間にわたり少量で推移していますが、将来的な課題として気候変動、競争力、地政学的リスクへの適応が求められます。国際協力や技術革新により、食料安全保障を保ちながら持続可能なバナナ生産・供給システムを構築することが重要です。これにより、バナナはアメリカ国内でも輸入依存から調和の取れた供給体系へと移行する可能性を秘めています。