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アメリカ合衆国のイチゴ生産量推移(1961年~2023年)

国際連合食糧農業機関(FAO)が発表したデータによると、アメリカ合衆国におけるイチゴの生産量は、過去数十年にわたり着実な増加傾向を示してきました。特に1961年の230,110トンから2022年の1,261,890トンへと、大きな成長が見られます。一方で、2017年以降には一定の減少傾向が観察され、その後は回復を見せつつも、依然として過去のピーク時である2015年(1,390,410トン)には達していません。これらの動向は、気候変動や市場需要の変化など、複数の要因が絡んでいると考えられます。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 1,250,100
-0.93% ↓
2022年 1,261,890
4.19% ↑
2021年 1,211,090
0.11% ↑
2020年 1,209,730
16.87% ↑
2019年 1,035,100
-12.57% ↓
2018年 1,183,870
-4.07% ↓
2017年 1,234,130
-8.1% ↓
2016年 1,342,947
-3.41% ↓
2015年 1,390,410
1.38% ↑
2014年 1,371,530
-0.76% ↓
2013年 1,382,096
-0.16% ↓
2012年 1,384,360
5.18% ↑
2011年 1,316,150
1.74% ↑
2010年 1,293,650
1.81% ↑
2009年 1,270,640
10.65% ↑
2008年 1,148,350
3.53% ↑
2007年 1,109,215
1.72% ↑
2006年 1,090,436
3.53% ↑
2005年 1,053,242
4.89% ↑
2004年 1,004,163
2.68% ↑
2003年 977,945
14.4% ↑
2002年 854,845
14.15% ↑
2001年 748,885
-13.21% ↓
2000年 862,828
3.8% ↑
1999年 831,258
11.77% ↑
1998年 743,750
0.73% ↑
1997年 738,354
0.12% ↑
1996年 737,492
1.42% ↑
1995年 727,200
-2.82% ↓
1994年 748,330
13.97% ↑
1993年 656,620
8.35% ↑
1992年 606,000
-2.19% ↓
1991年 619,600
8.9% ↑
1990年 568,940
9.83% ↑
1989年 518,000
-3.14% ↓
1988年 534,800
5.52% ↑
1987年 506,800
9.62% ↑
1986年 462,340
0.05% ↑
1985年 462,100
2.81% ↑
1984年 449,462
10.9% ↑
1983年 405,283
1.2% ↑
1982年 400,470
19.31% ↑
1981年 335,657
5.41% ↑
1980年 318,420
10.03% ↑
1979年 289,390
-3.33% ↓
1978年 299,369
-0.3% ↓
1977年 300,277
14.14% ↑
1976年 263,082
5.45% ↑
1975年 249,475
2.23% ↑
1974年 244,031
12.08% ↑
1973年 217,723
4.35% ↑
1972年 208,651
-11.54% ↓
1971年 235,867
4.84% ↑
1970年 224,982
2.06% ↑
1969年 220,445
-7.6% ↓
1968年 238,589
10.97% ↑
1967年 215,003
2.16% ↑
1966年 210,467
7.41% ↑
1965年 195,952
-21.45% ↓
1964年 249,476
7.84% ↑
1963年 231,332
-1.99% ↓
1962年 236,031
2.57% ↑
1961年 230,110 -

アメリカ合衆国におけるイチゴ生産量は、1960年代から1990年代にかけて緩やかながらも確かな上昇を記録しており、1990年代後半には急激な伸びが見られました。その後も2000年代以降一貫して増加し、1,000,000トンの大台を2004年に初めて突破しました。この上昇の背景には、栽培技術の進歩、化学肥料や灌漑技術の導入、農業政策の支援、および国内外での需要拡大が挙げられます。

しかし、2017年以降、アメリカのイチゴ生産量には減少傾向が見られました。2017年の1,234,130トンから、2019年には1,035,100トンまで減少し、横ばいまたは緩やかな回復を見せた2022年の1,261,890トンでも、2015年のピーク時である1,390,410トンには未だ及びません。この動向にはいくつかの要因が考えられます。第一に、気候変動の影響が深刻です。アメリカの主要なイチゴ産地である西部カリフォルニア州では、近年の干ばつや異常気象が作物の成長を阻害しています。また、農地の肥沃度の低下や水資源の限界も長期的な課題として指摘されています。

第二の課題として、労働力不足が挙げられます。イチゴの生産は手作業の割合が高く、熟練した労働者を必要とする産業です。しかし、アメリカでは移民政策の変化により、農業労働力の確保が難しくなり、各地での収穫作業に支障をきたすケースが増えています。

さらに近年の新型コロナウイルス(COVID-19)の影響も無視できません。労働力の減少や物流の停滞はイチゴ供給チェーン全体に混乱を生じさせ、一時的な生産量の減少を招いた可能性があります。

このような課題を解決するための具体的な対策として、まず挙げられるのは気候変動への対応です。温室効果ガス排出の削減や、旱魃耐性を備えた新品種の開発、より効率的な節水技術の採用が必要です。また、一部地域での垂直農法や完全人工環境内でのイチゴ生産といった代替策も検討すべきでしょう。労働力不足に関しては、労働移民政策の見直し、および農業分野におけるロボット技術の導入・普及が有効な選択肢といえます。

さらに、アメリカ国内だけでなく、主要輸出先であるカナダやアジア諸国、欧州への需要も考慮した政策立案が重要です。このような国際マーケットとの調整の一環として、輸出入に関わる関税の最適化や品質基準の遵守を強化し、アメリカ産イチゴのプレゼンスを向上させる必要があります。

最後に、イチゴ生産が地政学的リスクと無縁ではないことも見逃せません。例えば、主要輸出市場との関係性が悪化した場合、輸出の減少につながり、生産および価格に影響を及ぼす可能性があります。このため、世界規模での市場開拓、特にアフリカや中東といった新興市場を視野に入れた対策が求められるでしょう。

総じて、アメリカ合衆国のイチゴ生産量はこれまでの成長を維持することが困難な局面にありますが、技術革新、労働力問題の克服、気候変動への適応策を積極的に推進することで、さらなる発展が期待できます。国や国際機関、さらには産業界が一丸となってこれらの課題に取り組むことで、アメリカのイチゴ産業を未来へ繋げる基盤が築かれることでしょう。