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アメリカ合衆国のヤギ飼養頭数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関(FAO)が最新のデータを基にしたアメリカ合衆国のヤギ飼養頭数の推移を見ると、1960年代初頭には約350万頭から始まり、1970年代には急激な減少を記録しました。その後、1980年代以降は漸増に転じ、2000年代半ばにはおよそ300万頭の規模に達しましたが、それ以降は安定成長からやや横ばい傾向となっています。2022年の時点では約255万頭で、近年は小幅な減少が見られます。

年度 飼養頭数(頭)
2022年 2,550,000
2021年 2,586,000
2020年 2,655,000
2019年 2,622,000
2018年 2,639,000
2017年 2,627,000
2016年 2,615,000
2015年 2,650,000
2014年 2,611,000
2013年 2,632,000
2012年 2,703,000
2011年 2,996,000
2010年 3,038,000
2009年 3,069,000
2008年 3,118,000
2007年 3,048,000
2006年 2,837,000
2005年 2,715,000
2004年 2,525,000
2003年 2,530,000
2002年 2,530,466
2001年 2,400,000
2000年 2,300,000
1999年 2,250,000
1998年 1,400,000
1997年 1,650,000
1996年 1,900,000
1995年 1,850,000
1994年 1,960,000
1993年 1,960,000
1992年 2,000,000
1991年 1,830,000
1990年 1,900,000
1989年 1,850,000
1988年 1,800,000
1987年 1,780,000
1986年 1,770,000
1985年 1,550,000
1984年 1,420,000
1983年 1,420,000
1982年 1,410,000
1981年 1,380,000
1980年 1,400,000
1979年 1,360,000
1978年 1,355,000
1977年 1,400,000
1976年 1,270,000
1975年 1,350,000
1974年 1,560,000
1973年 1,775,000
1972年 1,650,000
1971年 2,133,000
1970年 2,572,000
1969年 3,215,000
1968年 3,572,000
1967年 3,969,000
1966年 4,222,000
1965年 4,060,000
1964年 3,904,000
1963年 3,683,000
1962年 3,647,000
1961年 3,473,000

アメリカ合衆国におけるヤギ飼養頭数は、多くの政策的、経済的要因、さらには消費需要の変化に影響を受けながら時代ごとに特徴的な変動を示してきました。1960年代には約350万頭から始まり、1966年には約420万頭のピークを迎えましたが、その後は急激な減少が起こり、1970年代半ばには135万頭前後まで下がっています。この減少は、当時の農業構造の変化や機械化の進展、牛や豚など他の家畜に対する需要の高まりが背景にあると考えられます。また、国際競争力や輸入品の増加も、ヤギ飼養が一時縮小する一因となりました。

一方、1980年代以降には、消費者の食習慣の多様化やヤギ乳製品やヤギ肉への需要拡大を主因として、飼養頭数は緩やかに回復しました。特に2000年代に入ると移民増加に伴う民族性の高い食文化の普及が加速したことがヤギ需要に寄与しました。2007年、飼養頭数は300万頭を超え、この時期はアメリカ全土において持続可能な農業としてのヤギ飼育が注目され始めた転換期と見ることができます。しかし、2010年代に入ると、成長は鈍化し、2012年以降は頭数の減少傾向が見られています。その背景には飼育コストの上昇、干ばつや気候変動による餌生産環境の悪化、また市場の飽和が挙げられるでしょう。

さらに2020年以降の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響も無視できません。パンデミックは輸送や市場の流通網に混乱をもたらし、ヤギ飼育業者にも影響を及ぼしました。労働力不足や価格低下により、負担を強いられた結果、一部の小規模農家が撤退を余儀なくされたケースも報告されています。

アメリカのヤギ産業は、地域における農業資源の維持や農業多面的機能の確保において重要な役割を果たしています。一方で、近年の停滞と減少傾向を克服するためにいくつかの課題に直面しています。その一つは、より効率的で環境に適した飼育方法の導入です。具体的には、持続可能な牧草地管理やストレスを軽減する飼育技術の構築が求められます。また、地域間の流通システムの効率化や、新しい市場の開拓が将来的な成長につながる可能性があります。

また、地政学的背景として、アジアやアフリカ諸国におけるヤギ肉やヤギ乳製品に対する旺盛な需要もあります。アメリカがこの需要に応え、輸出拡大を目指すことで、国内市場の低迷を補う方向性も視野に入れるべきでしょう。しかし、輸出に際しては貿易摩擦や規制の壁が障害となり得るため、国際的な協力体制やルール整備も必要です。

結論として、アメリカのヤギ飼育はその規模と役割において多くの可能性を秘めながらも、供給側のローコスト化と需要側の市場開拓の双方において戦略的な方向性が必要です。これからの政策や農業界の努力が、アメリカのヤギ産業が持続可能な成長を遂げるかどうかの鍵を握っていると言えるでしょう。