アメリカ合衆国の牛飼養数推移（1961年～2023年）

出典： Food and Agriculture Organization「国際連合食糧農業機関」

国際連合食糧農業機関（FAO）が発表した最新データによると、アメリカ合衆国の牛飼養数は1960年代から安定した上昇傾向を見せましたが、1975年の132,028,000頭をピークとして、以降は全体的に減少に転じています。2022年の飼養数は92,076,600頭となっており、ピーク時の約7割に当たる数字にまで減少しています。一方で、この減少傾向には経済的変化や食文化の多様化、気候変動の影響が関係していると考えられます。

年度	飼養数(頭)	増減率
2023年	88,841,000	-3.51% ↓
2022年	92,076,600	-1.83% ↓
2021年	93,789,500	-
2020年	93,793,300	-1.07% ↓
2019年	94,804,701	0.54% ↑
2018年	94,298,000	0.72% ↑
2017年	93,624,600	1.89% ↑
2016年	91,888,000	3.08% ↑
2015年	89,143,000	0.7% ↑
2014年	88,526,000	-1.74% ↓
2013年	90,095,200	-1.17% ↓
2012年	91,160,200	-1.86% ↓
2011年	92,887,400	-1.27% ↓
2010年	94,081,200	-0.68% ↓
2009年	94,721,000	-1.37% ↓
2008年	96,034,500	-0.56% ↓
2007年	96,573,000	-0.13% ↓
2006年	96,701,504	1.77% ↑
2005年	95,018,000	0.14% ↑
2004年	94,888,000	-1.26% ↓
2003年	96,100,000	-0.64% ↓
2002年	96,723,000	-0.59% ↓
2001年	97,297,500	-0.92% ↓
2000年	98,199,000	-0.92% ↓
1999年	99,115,000	-0.63% ↓
1998年	99,744,000	-1.88% ↓
1997年	101,655,700	-1.83% ↓
1996年	103,548,200	0.74% ↑
1995年	102,785,200	1.79% ↑
1994年	100,973,600	1.81% ↑
1993年	99,175,900	1.66% ↑
1992年	97,556,000	1.21% ↑
1991年	96,393,000	0.6% ↑
1990年	95,816,000	-0.96% ↓
1989年	96,740,000	-2.89% ↓
1988年	99,622,000	-2.44% ↓
1987年	102,118,000	-3.09% ↓
1986年	105,378,000	-3.84% ↓
1985年	109,582,000	-3.33% ↓
1984年	113,360,000	-1.43% ↓
1983年	115,001,008	-0.38% ↓
1982年	115,444,000	0.96% ↑
1981年	114,351,008	2.79% ↑
1980年	111,242,000	0.34% ↑
1979年	110,864,000	-4.74% ↓
1978年	116,375,008	-5.24% ↓
1977年	122,810,000	-4.04% ↓
1976年	127,980,000	-3.07% ↓
1975年	132,028,000	3.32% ↑
1974年	127,788,000	5.14% ↑
1973年	121,539,008	3.12% ↑
1972年	117,862,000	2.87% ↑
1971年	114,578,000	1.97% ↑
1970年	112,369,008	2.14% ↑
1969年	110,015,008	0.59% ↑
1968年	109,371,008	0.54% ↑
1967年	108,783,008	-0.07% ↓
1966年	108,862,000	-0.13% ↓
1965年	109,000,000	1.02% ↑
1964年	107,903,008	3.27% ↑
1963年	104,488,000	4.1% ↑
1962年	100,369,008	2.73% ↑
1961年	97,700,000	-

アメリカ合衆国の牛飼養数は、1961年から1975年まで安定して増加し、1975年には132,028,000頭に達しました。しかし、その後は市場動向や環境要因によって減少を始め、2022年には約92,076,600頭となっています。この傾向の背景にはいくつかの要素が影響を及ぼしています。

まず、1975年以降の減少を説明するためには、農業経済と食生活の変化を考慮する必要があります。牛肉需要の変化に伴う価格変動や、消費者の健康志向の高まりによる鶏肉や植物由来のタンパク質への人気シフトが、飼養数に影響を与えていることが推察されます。特にアメリカでは、ファストフード文化や加工食品が普及する一方で、ヘルスコンシャスな消費者層の間では赤身肉の消費が見直される動きがありました。このような市場の変化が、飼養数減少の一因となっています。

また、持続可能性への意識の高まりも重要な要素です。地球温暖化を背景に温室効果ガスの排出削減へのプレッシャーが強まる中、畜産業はその影響を受けています。牛はメタンガスを排出することで知られており、飼養数を減らすことが環境政策面でも有益とされることがあります。このような観点から、牧場経営者も効率的で環境に優しい生産体制を模索せざるを得なくなっているのです。

さらに、地政学的な背景として、気候変動や地域での自然災害が飼養数に影響を及ぼしてきました。干ばつの頻発や飼料作物の生産減少は経済的な損失を生み出し、牧場経営を困難にしています。これにより、小規模牧場の廃業や経営縮小が進みました。また、地域的な水資源の不足や土地利用制限の強化も飼養数の減少を加速させた要因と考えられます。

将来を見据えると、いくつかの具体的な課題が浮き彫りになっています。まず、国としては気候変動が生産に与える影響に対応するための農業政策を、さらに強化する必要があります。水資源の管理や、干ばつに強い牧草作物の研究開発への投資は、畜産業の持続可能性を高めるために不可欠です。さらに、環境に配慮した飼育方法の普及を進めるとともに、メタンガス排出を抑える技術革新を促すことが重要です。

国際的な観点からは、アメリカ以外の主要生産国であるブラジルやアルゼンチン、中国、インドなどとの協力体制も認識すべきです。これらの国々では生産規模が増加している一方で、環境負荷の削減が課題とされています。国際条約や協定での連携を通じて、持続可能な食糧生産体系の構築を図るべきです。

結論として、アメリカの牛飼養数推移は、経済・環境・社会的要因が相互に関連して生じた結果であると言えます。現在の状況を踏まえると、短期的には干ばつや価格の変動への対策、長期的には気候変動に対応した農業技術と政策の強化が重要です。国内外での協力体制を強化することで、畜産業の持続可能性を向上し、世界的な食料安全保障にも貢献する道を探るべきでしょう。