国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した2020年度のラズベリー生産量データによると、ロシア連邦が182,000トンで世界1位となり、続いて2位がメキシコの146,350トン、3位がポーランドの123,200トンでした。上位の国々がラズベリー生産の大部分を占める一方、小規模生産国も含めて多様な地域で生産が行われていることがわかります。
| 順位 | 国名 | 地域 | 生産量(トン) |
|---|---|---|---|
| 1 |
|
ヨーロッパ | 182,000 |
| 2 |
|
南アメリカ | 146,350 |
| 3 |
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ヨーロッパ | 123,200 |
| 4 |
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ヨーロッパ | 118,674 |
| 5 |
|
北アメリカ | 100,700 |
| 6 |
|
ヨーロッパ | 49,640 |
| 7 |
|
ヨーロッパ | 35,310 |
| 8 |
|
アフリカ | 35,000 |
| 9 |
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ヨーロッパ | 25,276 |
| 10 |
|
ヨーロッパ | 18,794 |
| 11 |
|
南アメリカ | 16,004 |
| 12 |
|
ヨーロッパ | 14,980 |
| 13 |
|
アジア | 11,839 |
| 14 |
|
北アメリカ | 7,608 |
| 15 |
|
ヨーロッパ | 7,140 |
| 16 |
|
ヨーロッパ | 6,170 |
| 17 |
|
ヨーロッパ | 5,210 |
| 18 |
|
ヨーロッパ | 4,670 |
| 19 |
|
ヨーロッパ | 4,490 |
| 20 |
|
ヨーロッパ | 3,600 |
| 21 |
|
アジア | 2,601 |
| 22 |
|
ヨーロッパ | 2,430 |
| 23 |
|
ヨーロッパ | 2,100 |
| 24 |
|
ヨーロッパ | 2,062 |
| 25 |
|
ヨーロッパ | 1,300 |
| 26 |
|
ヨーロッパ | 1,280 |
| 27 |
|
アジア | 1,000 |
| 28 |
|
ヨーロッパ | 680 |
| 29 |
|
オセアニア | 643 |
| 30 |
|
ヨーロッパ | 500 |
| 31 |
|
アジア | 500 |
| 32 |
|
ヨーロッパ | 490 |
| 33 |
|
ヨーロッパ | 380 |
| 34 |
|
ヨーロッパ | 360 |
| 35 |
|
ヨーロッパ | 336 |
| 36 |
|
ヨーロッパ | 320 |
| 37 |
|
ヨーロッパ | 300 |
| 38 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 39 |
|
ヨーロッパ | 200 |
| 40 |
|
ヨーロッパ | 130 |
| 41 |
|
ヨーロッパ | 120 |
| 42 |
|
アフリカ | 98 |
| 43 |
|
ヨーロッパ | 50 |
| 44 |
|
オセアニア | 23 |
| 45 |
|
ヨーロッパ | 10 |
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2020年度のラズベリー生産量ランキングは、特定地域での集中した生産と、世界各地での比較的小規模な生産という二面性を示しています。ロシア連邦が182,000トンで首位を占めており、これは冷涼な気候と広大な農業用地という地理的条件が大きな要因となっています。一方で2位のメキシコは熱帯から亜熱帯に至る多様な気候条件を利用し、その生産量は146,350トンに達しました。この高位につけた背景には近年の集約的な農業技術の導入や、北米市場での高い需要が挙げられます。
ポーランド、セルビア、アメリカ合衆国の3位から5位の国々は、主にラズベリーの輸出市場を支えている生産国といえます。それぞれの生産量は、ポーランドが123,200トン、セルビアが118,674トン、そしてアメリカ合衆国が100,700トンとなっています。ポーランドとセルビアはヨーロッパのラズベリー育成の中心地として知られており、その多くが加工食品、生鮮果実として輸出されています。一方のアメリカは国内消費にも力を入れることで、収穫量をうまく活用しています。スペイン、ウクライナ、モロッコといった上位10カ国にランクインしている国々は、それぞれの地域の気候条件を生かして効率的な生産を行っています。
ラズベリーは、収穫後の鮮度管理が難しく、冷蔵輸送や加工技術が生産国の収益性に大きく影響を与える果物です。このため、特に上位生産国は、輸送コスト削減のための貯蔵技術や、需要が高い国々への輸出量のための物流インフラに注力しています。しかしながら、課題も多く残っています。たとえば、ウクライナやモロッコのような国々では、政治的不安定さやインフラの未整備がラズベリー生産の成長を妨げる要因になっています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響もラズベリー生産に影を落としました。2020年度には、多くの国で労働力不足が発生し、特に収穫に依存する農業分野では深刻な影響がありました。これに加えて国境封鎖やロジスティックの滞りが、一部の生産国における輸出能力の低下を引き起こしたことも報告されています。このようなリスクへの対応策として、デジタル技術を活用した効率的な労働配置や、地域的な生産協力体制の構築が求められています。
未来に向けた具体的な取り組みとして考えられるのは、持続可能な農業技術の開発と導入です。これには、気候変動の影響を緩和するアグロフォレストリー(農業と林業を組み合わせた手法)の普及や、水資源管理の改善などが含まれます。また、生産国間での技術共有や市場情報の交換を促進することにより、経済効率をさらに向上させることが可能です。日本においても、近年のラズベリー人気の高まりを受けて国内生産が注目されており、高度な栽培技術や温室利用を活かすことで収益性を向上させられる余地が存在します。
結論として、ラズベリー生産には地理的、経済的、政治的な要因が絡み合い、多様な状況が反映されています。生産国や国際機関に求められる役割は、生産の公平性を確保するための支援や、持続可能な方法での需要拡大に伴う技術支援です。特に新興生産国に対する農業インフラ支援や輸送網の整備が、世界全体のラズベリー供給を安定させる鍵となるでしょう。