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中国のさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)

Food and Agriculture Organization(国際連合食糧農業機関)が発表した最新のデータによると、中国のさくらんぼ生産量は過去数十年で大きな増加を見せてきました。1996年には3,800トンだった生産量が、2023年には35,789トンにまで拡大しました。しかし、2010年以降のデータを振り返ると、生産量の伸び率は鈍化し、最近10年間はほぼ横ばい状態となっています。

年度 生産量(トン) 増減率
2023年 35,789
0.16% ↑
2022年 35,731
-0.04% ↓
2021年 35,746
-0.4% ↓
2020年 35,891
0.95% ↑
2019年 35,555
-0.67% ↓
2018年 35,793
-1.46% ↓
2017年 36,325
5.15% ↑
2016年 34,547
-5.37% ↓
2015年 36,509
6.15% ↑
2014年 34,393
5.05% ↑
2013年 32,738
4.94% ↑
2012年 31,199
2.16% ↑
2011年 30,540
5.98% ↑
2010年 28,816
6.73% ↑
2009年 27,000
8% ↑
2008年 25,000
13.64% ↑
2007年 22,000
15.79% ↑
2006年 19,000
-24% ↓
2005年 25,000
25% ↑
2004年 20,000
42.86% ↑
2003年 14,000
12% ↑
2002年 12,500
4.17% ↑
2001年 12,000
41.18% ↑
2000年 8,500
-15% ↓
1999年 10,000
25% ↑
1998年 8,000
33.33% ↑
1997年 6,000
57.89% ↑
1996年 3,800 -

中国におけるさくらんぼの生産量推移を見ると、1990年代から2000年代初頭にかけては急激な伸びを見せています。これは、さくらんぼの市場価値の上昇や、中国国内での農業技術の進展、栽培面積の拡大が背景にあると考えられます。2004年から2008年にかけての増加傾向、および2010年前後の30,000トン突破は、国際市場でのさくらんぼ需要の高まりと、中国政府による果物栽培の政策的支援が寄与している可能性があります。

一方で、2010年以降の生産量は28,816トンを達成した後も、右肩上がりの成長から横ばい傾向へ移行しています。この現象は、産地の地理的要因や気候変動、特定地域での水資源の不足など、さくらんぼ栽培における地政学的なリスクと関連があるかもしれません。特に、新型コロナウイルスによる物流の混乱は、収穫の効率や輸送スケジュールに負の影響を与えた可能性があります。

また、中国国内のさくらんぼ栽培には、気候的な掣肘も見られます。さくらんぼは温帯気候を好むため、特定の地域に適した作物と言えますが、それが長期的な生産量の伸びを阻む要因ともなっています。さらに、さくらんぼの木には栽培開始から果実が完全に収穫できるようになるまで数年を要するという特性があります。そのため、生産量増加には長期的な計画が必要です。

課題としては、国内市場と国際市場の需要をどのように効率よく満たすかが挙げられます。さくらんぼの生産量増加を目指す中で、栽培地の環境保全とのバランスが求められるのはもちろんのこと、現段階で横ばいの傾向にある物流および輸送インフラの改善が必要不可欠です。また、高齢化や農村部からの若年層の人口流出という課題が深刻化する中国の農業セクター全般において、人材確保も重要な要素となるでしょう。

具体的な対策としては、以下のような方策を提案できます。まず、地域ごとに気候条件と適切な栽培技術をマッチングさせるため、精密農業(スマート農業)のさらなる導入を進めることが挙げられます。また、政府主導で地域ごとの生産調整や、水資源の効率的利用を進める必要性があります。たとえば、乾燥地域では節水技術の導入が重要です。さらに、国際市場での競争力を強化するため、品質基準や貯蔵・輸送技術を一層改善することも不可欠です。

結論として、中国のさくらんぼ生産量は現在安定した水準にありますが、さらに競争力を高めるためには、環境変化への適応や輸送網の整備といった技術的・政策的な対応が求められます。また、国際市場でのシェアを拡大するためには、気候変動リスクを見据えた栽培戦略や、国内外での需要予測を反映した取り組みが重要です。これらの課題に戦略的に対応すれば、中国はさくらんぼ生産において世界市場でリーダーシップを発揮し続けることができるでしょう。