国際連合食糧農業機関(FAO)が発表した最新のデータによると、中国の牛飼養数は1961年から大きな変動を示してきました。1961年の約4,940万頭から、1995年には1億405万頭というピークに到達しましたが、2000年代以降は顕著な減少がみられます。2022年には約6,123万頭となり、過去数十年間の減少傾向が続いています。この長期的な変動には、中国国内の農業政策、産業構造の変化、地政学的リスク、そして食肉需要の影響が大きく関与しています。
中国の牛飼養数推移(1961-2022)
年度 | 飼養数(頭) |
---|---|
2022年 | 61,230,315 |
2021年 | 61,580,239 |
2020年 | 61,939,371 |
2019年 | 63,517,986 |
2018年 | 63,271,250 |
2017年 | 61,841,430 |
2016年 | 63,390,530 |
2015年 | 63,050,960 |
2014年 | 62,900,320 |
2013年 | 62,900,320 |
2012年 | 63,960,750 |
2011年 | 65,688,000 |
2010年 | 68,739,790 |
2009年 | 70,251,020 |
2008年 | 82,680,000 |
2007年 | 81,934,000 |
2006年 | 87,413,000 |
2005年 | 89,993,000 |
2004年 | 92,062,000 |
2003年 | 92,954,000 |
2002年 | 95,408,000 |
2001年 | 100,774,000 |
2000年 | 104,396,000 |
1999年 | 101,754,000 |
1998年 | 99,277,000 |
1997年 | 90,682,000 |
1996年 | 108,760,000 |
1995年 | 100,405,000 |
1994年 | 90,757,000 |
1993年 | 85,640,000 |
1992年 | 82,587,000 |
1991年 | 81,194,000 |
1990年 | 77,769,856 |
1989年 | 76,114,200 |
1988年 | 73,088,800 |
1987年 | 70,847,008 |
1986年 | 66,886,000 |
1985年 | 62,622,000 |
1984年 | 58,935,008 |
1983年 | 56,926,000 |
1982年 | 53,833,008 |
1981年 | 52,515,008 |
1980年 | 52,411,008 |
1979年 | 52,528,000 |
1978年 | 52,723,008 |
1977年 | 53,825,008 |
1976年 | 55,547,008 |
1975年 | 56,554,000 |
1974年 | 56,676,000 |
1973年 | 57,000,000 |
1972年 | 57,486,000 |
1971年 | 57,500,000 |
1970年 | 57,500,000 |
1969年 | 57,720,000 |
1968年 | 56,860,000 |
1967年 | 55,950,000 |
1966年 | 53,573,008 |
1965年 | 52,420,000 |
1964年 | 48,940,000 |
1963年 | 47,360,000 |
1962年 | 46,760,000 |
1961年 | 49,400,000 |
データを詳しく見ると、中国における牛飼養数は、1960年代から1990年代半ばまで一貫して増加し、1995年に1億頭を超える歴史的な最高値を記録しました。この成長は、農村地域における家畜飼育の増加や、中国政府が農業生産を促進する政策を進めた影響によるものです。しかし、1996年以降、飼養数は2000年代初頭までに一時的な上下動を示しながら、特に2002年以降著しく減少しました。この減少傾向は、今日まで続いています。
この動向の背景にはいくつかの要因が考えられます。まず、経済改革と都市化の進展が挙げられます。中国は急速な工業化と都市化の過程で農地の利用動向が大きく変わり、伝統的な農村地帯の縮小や土地利用競争が牛の飼養環境に影響を与えました。また、大規模畜産業の発展に伴い、効率化を目指した家畜飼育方式が進展したことで、中小規模農家が撤退する状況も見られました。
さらに、2003年以降の減少は、外的リスクと食の安全性に対する懸念が影響している可能性があります。たとえば、高病原性鳥インフルエンザや牛伝染性疫病などの発生が畜産業全体に不安をもたらしたことが挙げられます。また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、2020年以降、物流が一時的に混乱し、農畜産業全体への間接的な影響があったと推察されます。
中国国内の需要面も重要な影響要因です。牛肉の消費は中産階級の拡大により近年増加傾向が見られていますが、それ以上に豚肉や鶏肉への需要が高まっています。価格や調理のしやすさなどが影響し、牛飼養数減少の一因となっています。この傾向は他国でも類似しており、日本や韓国でも豚や鶏の方が供給の面で重視されています。一方で、アメリカやインドでは牛飼養数が依然として安定的に推移しており、地域ごとの消費文化や政策の重要性が示唆されます。
このような背景から、中国が牛飼養数の安定化や増加を目指すには、いくつかの課題と取り組みが必要です。たとえば、中小規模農家を支援することで持続可能な飼育モデルを推進し、農村経済の確保を図ることが考えられます。また、国際的な協力や技術革新を活用して、病気管理や飼育技術の改善を行うことも重要です。これには、デジタル農業技術の導入や環境負荷を抑える飼育方法への移行などが含まれます。
さらに、食品安全の強化も不可欠です。食品業界の信頼を向上させるため、監視・規制制度を充実させることが急務でしょう。また、生物多様性と気候変動の影響を考慮した農業政策の策定が求められます。家畜生産は温室効果ガスの主な要因の一つであり、世界的な視野で持続可能性を確保する必要があります。
結論として、中国の牛飼養数推移は、経済改革、産業構造の変化、食品安全の課題と密接に関連していることが分かります。この課題を克服するためには、政府の政策措置だけでなく、国際的な技術協力、地域間の調整を進めることが鍵となるでしょう。中国が将来の牛飼養産業をどのように再編成していくかは、国内の食料供給や環境保護、地政学的安定性における重要な要素となるでしょう。