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中国の馬飼養数推移(1961-2022)

国際連合食糧農業機関が提供するデータによると、中国における馬の飼養数は、1960年代から1970年代にかけて緩やかに増加し、1976年に11,299,000頭に達して以降は減少傾向が続きました。2000年代後半以降には急減が見られ、2017年には3,436,422頭と最低水準に達しましたが、2020年以降はやや回復傾向を示しています。2021年には3,724,900頭まで増加し、2022年時点では3,666,800頭となっています。

年度 飼養数(頭)
2022年 3,666,800
2021年 3,724,900
2020年 3,671,600
2019年 3,670,999
2018年 3,473,096
2017年 3,436,422
2016年 3,975,000
2015年 4,157,500
2014年 4,316,800
2013年 4,316,800
2012年 4,652,400
2011年 5,153,900
2010年 5,299,500
2009年 5,622,800
2008年 7,028,000
2007年 7,195,000
2006年 7,399,600
2005年 7,639,000
2004年 7,900,000
2003年 8,088,000
2002年 8,260,000
2001年 8,766,000
2000年 8,914,000
1999年 8,981,000
1998年 8,912,000
1997年 8,715,000
1996年 10,072,000
1995年 10,037,300
1994年 9,959,000
1993年 10,017,000
1992年 10,094,000
1991年 10,174,000
1990年 10,294,000
1989年 10,540,000
1988年 10,691,000
1987年 10,988,000
1986年 11,081,000
1985年 10,978,000
1984年 10,806,000
1983年 10,981,000
1982年 10,972,000
1981年 11,042,000
1980年 11,145,000
1979年 11,245,000
1978年 11,447,000
1977年 11,438,000
1976年 11,299,000
1975年 11,103,000
1974年 10,730,000
1973年 10,341,000
1972年 9,926,000
1971年 9,648,000
1970年 9,200,000
1969年 8,800,000
1968年 8,500,000
1967年 8,200,000
1966年 7,921,000
1965年 7,394,000
1964年 6,865,000
1963年 6,320,000
1962年 6,211,000
1961年 6,585,000

中国の馬飼養数の推移データを見ると、初期の増加からその後の減少、そして直近の安定した回復の兆しが見られる独特のパターンが確認できます。1960年代から1970年代にかけて中国の馬の飼養数は年々増加し、1976年には11,299,000頭とピークに達しました。この増加は、当時の中国が主要な農業国であり、馬が耕作や運搬など農作業の多目的な力として不可欠だったことと一致しています。

しかし、1980年代に入ると急激な経済成長と近代化に伴い、農村部での機械化が進み、トラクターや自動車などが馬に代わって利用されるようになりました。この技術革新により農業機械が普及するにつれ、馬の必要性が減少し、飼養数が徐々に減少しました。また、1990年代以降は中国都市化の進行や農村人口の減少も、馬飼養数減少の要因となったと考えられます。

2009年以降には減少傾向がさらに顕著となり、2017年には3,436,422頭と、ピーク時の1976年と比較して約3分の1にまで落ち込みました。この急激な減少には、経済の構造的転換だけでなく、農地利用の変化や馬産業の衰退が関与しています。また、馬肉や馬由来製品の需要減少も一因でしょう。一方で、2020年以降は微増がみられるようになり、これは馬術や観光業の発展といった新たな需要の出現が影響していると考えられます。

地域ごとの背景を見ると、中国北部や西部の農村部では従来から馬が重要視されてきたものの、沿海部の都市部への人々の移動により伝統的な馬利用文化の継続が難しくなっています。このことは、馬利用の地理的偏在を引き起こし、一部地域では伝統が途絶えるリスクを生じています。

現在の課題として、中国の馬産業と馬文化の維持・活性化があります。現代の農業や物流における馬の需要が限定的である中で、観光業やスポーツ産業の一環として、新たな需要を生み出すことが必要です。また、地方自治体や地域ごとの協力を通じて、馬に関連する文化財や馬を用いた伝統行事を保存し、観光資源として活用することも可能です。加えて、馬由来製品(例えば馬乳や皮革)の需要を国内外で再構築するには、品質向上とマーケティング戦略の強化が必要です。

さらに、国家や国際的な協力が重要です。例えば、国際連合食糧農業機関(FAO)などの国際機関と連携し、知識交流や技術移転を行う枠組みを構築することで、この産業の持続可能な発展と馬の飼養数維持を支えることができるでしょう。同時に、環境保護に配慮した馬飼養方法の導入や、地元の馬に特化した品種改良を進めることも将来の重要施策となると予測されます。

また、自然災害や疫病は馬の健康とその生産に顕著な影響を与える可能性があるため、これに備えるための獣医療体制の構築や感染症予防の強化も欠かせません。特に、新型コロナウイルスの影響下では観光・レジャー産業が停滞し、それに伴い馬関連産業も縮小した事例があるため、感染症流行時にも耐性のある産業構造を目指すべきです。

終わりに、中国における馬飼養の意義は単なる経済的な側面にとどまらず、文化や観光業、また一部の農村地域の伝統的な生活と密接に結びついています。今後の課題解決にあたり、持続可能性を軸にした政策的支援や産業振興策の強化が求められます。その先には、歴史的・文化的価値を保ちながら、馬関連産業が現代経済においても新たな役割を果たす可能性が広がっているといえるでしょう。