国際連合食糧農業機関(FAO)の最新データによると、1970年から2023年までのペルーにおけるさくらんぼ生産量は大きな変動を見せてきました。1970年代には1,000トンを超える年もある一方、2023年における生産量はわずか3トンと、過去50年以上の間で最低水準にとどまっています。特に2000年代後半以降、さくらんぼの生産量が急激に減少し、近年はほぼ完全に停滞している状況が見受けられます。
ペルーのさくらんぼ生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 3 |
10.98% ↑
|
2022年 | 3 |
-14.56% ↓
|
2021年 | 3 |
5.82% ↑
|
2020年 | 3 |
-2.67% ↓
|
2019年 | 3 |
-25% ↓
|
2018年 | 4 |
33.33% ↑
|
2017年 | 3 |
-25% ↓
|
2016年 | 4 | - |
2015年 | 4 |
17.65% ↑
|
2014年 | 3 |
-34.24% ↓
|
2013年 | 5 |
-49.71% ↓
|
2012年 | 10 |
2.8% ↑
|
2011年 | 10 |
-41.18% ↓
|
2010年 | 17 |
-93.58% ↓
|
2009年 | 265 |
5.16% ↑
|
2008年 | 252 |
-29.21% ↓
|
2007年 | 356 |
-28.23% ↓
|
2006年 | 496 |
-1% ↓
|
2005年 | 501 |
2.24% ↑
|
2004年 | 490 |
5.38% ↑
|
2003年 | 465 |
12.32% ↑
|
2002年 | 414 |
6.98% ↑
|
2001年 | 387 |
7.8% ↑
|
2000年 | 359 |
8.79% ↑
|
1999年 | 330 |
61.76% ↑
|
1998年 | 204 |
-8.11% ↓
|
1997年 | 222 |
3.74% ↑
|
1996年 | 214 |
18.23% ↑
|
1995年 | 181 |
3.43% ↑
|
1994年 | 175 |
-85.64% ↓
|
1993年 | 1,219 |
8.16% ↑
|
1992年 | 1,127 |
12.25% ↑
|
1991年 | 1,004 |
6.02% ↑
|
1990年 | 947 |
-7.34% ↓
|
1989年 | 1,022 |
-5.19% ↓
|
1988年 | 1,078 |
9.44% ↑
|
1987年 | 985 |
8.12% ↑
|
1986年 | 911 |
-13.24% ↓
|
1985年 | 1,050 |
37.08% ↑
|
1984年 | 766 |
16.24% ↑
|
1983年 | 659 |
9.83% ↑
|
1982年 | 600 |
4.71% ↑
|
1981年 | 573 |
19.38% ↑
|
1980年 | 480 |
70.82% ↑
|
1979年 | 281 |
-3.1% ↓
|
1978年 | 290 |
-4.29% ↓
|
1977年 | 303 |
-57.32% ↓
|
1976年 | 710 |
-32.06% ↓
|
1975年 | 1,045 |
-3.06% ↓
|
1974年 | 1,078 |
1.99% ↑
|
1973年 | 1,057 |
-1.21% ↓
|
1972年 | 1,070 |
-10.68% ↓
|
1971年 | 1,198 |
5.09% ↑
|
1970年 | 1,140 | - |
ペルーのさくらんぼ生産量の推移を振り返ると、1970年代から1980年代後半にかけては比較的一定の生産規模を維持していました。この期間には約1,000トン前後の生産量を記録しており、農業生産物の一つとして着実な役割を果たしていたと言えます。しかし、1990年代の中頃から生産量は急激に減少を始め、2010年以降はほとんど消滅したかのような状況となっています。この減少には、地政学的背景や気候条件、経済環境の変化、さらにはより競争力のある作物への移行が影響していると考えられます。
さくらんぼの生産には一定の寒冷な気候や安定した水資源が必要とされますが、ペルーの広範な地域ではこの条件を満たし続けるのが難しいとされています。例えば、気候変動による降雨パターンの変化や、山岳部の水資源管理の問題は次第に深刻化してきました。また、ペルーの農業は世界市場での競争力を維持するため、アボカドやブルーベリーといった輸出向けの果物に注力する傾向が強まり、経済的な理由からさくらんぼ生産が縮小された可能性も示唆されます。
加えて、2010年以降の急激な生産量の低下は、国の経済政策や内部農業支援の限界も関与していると考えられます。例えば、より収益性が高い作物へと切り替えるための政策的なインセンティブがさくらんぼ生産の衰退を後押ししたとみられます。さらに、近年では新型コロナウイルスのパンデミックによる農業労働力の不足や物流の制約も影響を及ぼしている可能性があります。ただし、さくらんぼ生産は20年以上にわたり一桁台の生産量が続き、パンデミック以前からすでに衰退の兆候を示していました。
将来的な課題として、ペルーにおけるさくらんぼの生産を復活させるか、もしくは完全に別の作物に切り替えるかの選択が求められます。特に、政府が自然資源管理や気候適応政策を考慮し、農業の多様化を推進することが重要です。例えば、山岳部の冷涼な気候を活用した高品質のさくらんぼ栽培や、灌漑インフラの開発による安定した生産環境の整備が検討されるべきです。また、国際的な農業技術や投資を引き入れるための政策枠組みの整備も必要になります。
一方で、ペルーが現在注力している輸出用作物にリソースを集中させる戦略も合理的な選択です。世界的に需要が高まっているアボカドやブルーベリーのような作物に投資することで、国全体の経済成長に寄与する可能性が高いです。その場合、さくらんぼに関連する労働者の労働転換や教育支援も並行して行われるべきです。
結論として、ペルーのさくらんぼ生産は歴史的には成長と停滞を繰り返しましたが、近年ではほぼ消滅したと言える状況にあります。この現象は、気候や地政学的な要因だけでなく、経済政策や市場競争も影響を与えています。今後、さくらんぼ生産の復興に取り組む場合でも、特化する他の作物に集中する場合でも、持続可能な農業基盤の構築を軸とした政策が必要とされます。国際協力や環境的な適応策を積極的に取り入れることで、ペルー全体の農業セクターのさらなる発展が期待されます。