国連食糧農業機関(FAO)が発表した最新データによると、2023年のペルーにおける大麦生産量は211,200トンと記録されています。過去60年以上のデータを振り返ると、1960年代から1980年代にかけて生産量は減少傾向にありましたが、2000年ごろから徐々に回復しました。しかし、直近数年では200,000トン前後で推移し、安定しつつも停滞した印象を受けます。このデータは、ペルーの農業事情と地理的条件、さらに世界の農業動向にも影響されている可能性が高いと見られます。
ペルーの大麦生産量推移(1961年~2023年)
年度 | 生産量(トン) | 増減率 |
---|---|---|
2023年 | 211,200 |
-6.34% ↓
|
2022年 | 225,496 |
2.31% ↑
|
2021年 | 220,396 |
8.34% ↑
|
2020年 | 203,422 |
-3.27% ↓
|
2019年 | 210,298 |
0.63% ↑
|
2018年 | 208,972 |
2.95% ↑
|
2017年 | 202,974 |
-3.48% ↓
|
2016年 | 210,298 |
-7.43% ↓
|
2015年 | 227,168 |
0.38% ↑
|
2014年 | 226,310 |
0.79% ↑
|
2013年 | 224,533 |
4.68% ↑
|
2012年 | 214,489 |
6.6% ↑
|
2011年 | 201,218 |
-6.93% ↓
|
2010年 | 216,193 |
1.37% ↑
|
2009年 | 213,279 |
14.68% ↑
|
2008年 | 185,981 |
4.79% ↑
|
2007年 | 177,479 |
-7.38% ↓
|
2006年 | 191,627 |
-0.76% ↓
|
2005年 | 193,085 |
8.98% ↑
|
2004年 | 177,169 |
-8.54% ↓
|
2003年 | 193,717 |
-2.18% ↓
|
2002年 | 198,032 |
11.46% ↑
|
2001年 | 177,671 |
-4.26% ↓
|
2000年 | 185,577 |
9.31% ↑
|
1999年 | 169,768 |
2.39% ↑
|
1998年 | 165,813 |
20.32% ↑
|
1997年 | 137,812 |
-9.89% ↓
|
1996年 | 152,939 |
16.58% ↑
|
1995年 | 131,193 |
1.04% ↑
|
1994年 | 129,843 |
15.42% ↑
|
1993年 | 112,499 |
63.48% ↑
|
1992年 | 68,816 |
-41.22% ↓
|
1991年 | 117,074 |
63.42% ↑
|
1990年 | 71,638 |
-42.96% ↓
|
1989年 | 125,603 |
-2.32% ↓
|
1988年 | 128,584 |
16.65% ↑
|
1987年 | 110,226 |
-6.7% ↓
|
1986年 | 118,138 |
-4.81% ↓
|
1985年 | 124,110 |
20.73% ↑
|
1984年 | 102,803 |
17.08% ↑
|
1983年 | 87,809 |
-20.35% ↓
|
1982年 | 110,243 |
-3.72% ↓
|
1981年 | 114,504 |
17% ↑
|
1980年 | 97,870 |
-25.54% ↓
|
1979年 | 131,444 |
1.49% ↑
|
1978年 | 129,510 |
-11.42% ↓
|
1977年 | 146,199 |
-2.22% ↓
|
1976年 | 149,517 |
0.51% ↑
|
1975年 | 148,759 |
-1.42% ↓
|
1974年 | 150,897 |
-2.83% ↓
|
1973年 | 155,284 |
-4.75% ↓
|
1972年 | 163,020 |
2.65% ↑
|
1971年 | 158,818 |
-6.55% ↓
|
1970年 | 169,955 |
3.84% ↑
|
1969年 | 163,665 |
12.21% ↑
|
1968年 | 145,855 |
-15.42% ↓
|
1967年 | 172,447 |
11.81% ↑
|
1966年 | 154,238 |
-13.81% ↓
|
1965年 | 178,951 |
-2.16% ↓
|
1964年 | 182,894 |
-6.87% ↓
|
1963年 | 196,380 |
-1.58% ↓
|
1962年 | 199,526 |
-8% ↓
|
1961年 | 216,872 | - |
ペルーはアンデスの山岳地帯を有する国で、標高が高い地域特有の気候が農作物の栽培に影響を与えています。大麦は、標高が高く、気候条件が厳しい環境でも栽培が可能なため、ペルーにおいて重要な穀物の一つとして位置付けられています。しかし、生産量の長期的な推移を見ると、同作物が気候、政策、そして市場の影響を大きく受け続けていることが分かります。
大麦生産量は1961年の216,872トンをピークに、1960年代から1990年にかけて減少を続けました。特に1980年(97,870トン)と1990年(71,638トン)の低水準は目を引き、経済的、政治的混乱や気候変動により収穫量の安定が難しかったことが推測されます。その後、1990年代中盤より回復の兆しを見せ、2000年以降は毎年およそ200,000トン前後で推移しています。2021年(220,396トン)や2022年(225,496トン)のように若干の増加も見られましたが、2023年は再び若干の減少傾向となりました。
これらのデータは、アンデス地方における気候変動と土壌条件の悪化が、大麦栽培に影響を与えている可能性を示唆しています。また、農業の近代化が進んでおらず、効率的な収穫方法や灌漑(かんがい)設備の整備が不十分な点も一因となっているかもしれません。他国との比較では、同じような標高条件を持つエチオピアやネパールも大麦の生産量を安定させるのに苦労しており、一方で中国やアメリカといった産業農業が発達した国々では、高収量を実現しています。
一方、地政学的な観点からは、ペルーの主要作物が国内消費を優先する傾向にあり、それが国際市場との競争力を低下させています。特に、地域紛争や輸送インフラの未整備が、国内農業の発展を阻害している例が挙げられます。紛争や気候災害が発生した場合、穀物供給が深刻に影響を受けるため、大麦生産の持続可能性には不安が残ります。
今後、ペルーが大麦生産を安定化させるためには、いくつかの具体的な施策が必要です。農業技術の研修を受けた専門家を地方に派遣し、小規模農家でも利用可能な持続可能な農法を導入すべきです。また、灌漑設備の整備や気候に適した品種改良を進めることも求められます。他国と連携し、市場の拡大や技術協力を推進することも有効でしょう。長期的には、インフラ整備の強化とともに気候変動対策を進めることが、安定的な生産の鍵となります。
結論として、ペルーの大麦生産量は過去数十年間で大きな変化を経験しましたが、現在は比較的安定しています。ただし、気候変動や政策の問題など、依然として解決すべき課題が多く残されています。これらの課題に対応するためには、政府や国際機関、さらには地域住民が協力して、具体的な成果を生み出す取り組みを継続する必要があります。このような努力が、将来的なペルーの農業成長とその持続可能性に寄与すると期待されます。